慢性リンパ性白血病(CLL)に関連するマイクロRNA-TP53回路/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

慢性リンパ性白血病(CLL)に関連するマイクロRNA-TP53回路/M.D.アンダーソンがんセンター

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慢性リンパ性白血病(CLL)に関連するマイクロRNA-TP53回路/M.D.アンダーソンがんセンター

慢性リンパ性白血病(CLL)における染色体欠失の効果に関する分子的枠組みに関する論文がJAMA誌に掲載された
M.D.アンダーソンがんセンター
2011年1月7日

1つの主要な腫瘍抑制遺伝子と欠失染色体と2組のマイクロRNAの相互関係により、悪性度の低いタイプの慢性リンパ性白血病の分子的基盤が説明できることを、ある国際研究者チームがJournal of the American Medical Association(JAMA)誌1月4日号に発表した。
「われわれの知見から白血病患者で起こる化学療法への抵抗性の新たなメカニズムを明らかにできるかもしれません。また、このフィードバック・メカニズムにより予後が良好な患者と不良な患者との鑑別が可能となるかもしれません」と同論文の共統括筆者であるGeorge Adrian Calin医学博士は述べた。同氏はテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター実験治療部門准教授でありRNA干渉・非コードRNAセンターの共同センター長である。

B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)は成人白血病で最も頻度の高いものであり、2010年の米国における新規症例数は推定14,990人である。B細胞性CLLは感染と戦う白血球の1つであるB細胞リンパ球の異常により発症する。

13番染色体長腕(13q)の欠失は悪性度の低い(緩徐進行性)CLLに関連している。Calin氏を長とするM.D.アンダーソンがんセンターとオハイオ州立大学の研究者は、一連の実験からこの関係性の詳細を明らかにした。

「この研究は、いかなるヒトの疾患を含めても、マイクロRNAが関与する発病機序を最も詳細に示すものです。」と同氏は述べた。マイクロRNA(miRNA)はメッセンジャーRNAを制御する短い一本鎖のRNAである。遺伝子は細胞のタンパク質生成装置にどのタンパク質を生成するかを伝えるためにメッセンジャーRNAを発現する。
13番染色体長腕の欠失により、悪性細胞の形成と増殖に抗する最前線での防御であるプログラム細胞死(アポトーシス)を妨害することが知られている2つのタンパク質が放出されることを研究者らは発見した。しかし、これは腫瘍抑制因子であるTP53遺伝子の発現亢進ももたらす。TP53遺伝子は間接的にCLL患者の予後不良に関連するその他のタンパク質の発現レベルを抑える。同氏は、初めの段階ではCLLを発症させるが、さまざまな影響の組み合わせでCLLを緩徐進行性とするようであると述べた。

研究チームはCLLによく認められる3つの染色体欠失を扱った:

・2つのマイクロRNA(miRNA)の発現を消失もしくは低下させる13番染色体長腕の欠失(miR-15aおよびmiR-16-1)。これはCLL症例の約55%に認められる最も頻度の高い欠失パターンである。
・その他の2つのmiRNAに影響を与える11番染色体長腕の欠失(miR-34bおよびmiR-34c)。この欠失はCLL症例の約18%に認められる。
・17番染色体短腕(17p)は腫瘍抑制遺伝子である腫瘍タンパクp53(TP53)の存在する場所である。この欠失はCLL患者の約7%に認められる。
11番染色体長腕および17番染色体短腕に欠失を有する患者は疾患の悪性度が最も高い。

研究者らは208人のCLL患者から採取した血液サンプルの解析を行い、患者の欠失のタイプに応じてmiRNAとTP53の相対的な発現と活性を比較した。

正常状態

染色体欠失が認められない場合、miR-15aとmiR-16-1のマイクロRNAは腫瘍抑制因子であるTP53の発現を阻害する。しかし、つぎにTP53がこの2つのmiRNAを活性化させるため、プログラム細胞死(アポトーシス)を阻害する他の2つの遺伝子の発現が制御されることになる。正常状態ではアポトーシスが起こり、白血病の発症が阻まれる。

またTP53はmiR34bとmiR-34cのマイクロRNAを活性化させることにより、CLL患者の生存期間の短縮に関わるZAP70遺伝子を阻害する。

13番染色体長腕欠失から緩徐進行性CLLが発症する理由

13番染色体長腕欠失ではmiR-15aとmiR16-1の発現が低レベルもしくは消失しているため、TP53の発現が亢進する。このため、さらにmiR-34bとmiR-34aが活性化されて、Zap70遺伝子の抑制がより強まる。これが予後改善につながっている。
miR-15aと16-1がなくなると、プログラム細胞死を抑制する2つの遺伝子(BCL2遺伝子とMCL1遺伝子)の発現が亢進するため、異常細胞の生成と増殖が助長される。この影響で緩徐進行性CLLとなるが、ZAP70 遺伝子が抑制されていることから増悪が抑えられているとCalin氏は述べた。

事実上TP53が2組の異なるマイクロRNAを結びつけていると研究者らは指摘した。

急性骨髄性白血病、肺癌、子宮頸癌の細胞株を用いた実験から、同一の機序が他の癌種においても作用している可能性が示されているが、この立証のためにはさらなる研究が必要であると同氏は述べた。

この研究は患者の予後を不良とするCLL治療抵抗性に関与するマイクロRNAの同定を行う橋渡し研究への道筋を明らかにするものであるとともに、治療反応性を予測する血漿miRNAを同定する道を拓くものでもある。Calin氏と共著者であるMichael Keating医師はこれらのテーマについて研究を続けている。Michael Keating氏はM.D.アンダーソンがんセンター白血病部門教授である。

同論文の共同責任著者は、オハイオ州立大学総合がんセンター所長であり分子ウイルス学免疫学遺伝医学学科教授のCarlo Croce医学博士である。

同研究は米国国立癌研究所(NCI)、米国国防総省、NCIのM.D.アンダーソンがんセンター白血病優秀研究選択プログラム(MD Anderson Select Programs of Research Excellence in Leukemia )、CLLグローバル研究財団の助成金を受けている。また、Muller Fabbri医師は2009年度Kimmel Scholar Awardを、Amelia Cimmino医学博士はFederazione Italiana Ricera sul Cancroのフェローシップを、Calin氏はM.D.アンダーソン研究トラストおよびテキサス大学のSystem Regents Research Scholar Programのフェローシップを受けている。

共著者は以下の各位である。Co-authors with Calin and Keating are Masayoshi Shimizu, Riccardo Spizzo, M.D., Ph.D., Milena Nicoloso, M.D., Simona Rossi, Ph.D., Elisa Barbarotto, Ph.D., and Deepa Sampath, Ph.D., all of MD Anderson’s Department of Experimental Therapeutics and Center for RNA Interference and Noncoding RNAs; first author Muller Fabbri, M.D., Arianna Bottoni, Ph.D., Nicola Valeri, M.D., Federica Calore, Ph.D., Hansjuerg Alder, Ph.D.. Tatsuya Nakamura, Ph.D., Brett Adair, and Sylwia Wojcik, all of the Department of Molecular Virology, Immunology and Medical Genetics, Comprehensive Cancer Center,  Ohio State University; Massimo Negrini, Ph.D., Department of Experimental and Diagnostic Medicine, University of Ferrara, Ferrara, Italy; Amelia Cimmino, M.D., Ph.D., Institute of Genetics and Physics, National Research Council, Naples, Italy; Francesca Fanini, Ph.D., Ivan Vannini, Ph.D., Gerardo Musuraca, M.D., and Dina Amadori, M.D., of the Istituto Scientifico Romagnolo per lo Studio e la Cura del Tumori, Meldola, Italy;  Marie Dell’Aquila, Ph.D.,  Laura Rassenti, Ph.D., and Thomas Kipps, M.D., Ph.D., of the Department of Medicine, University of California San Diego; Ramana Davuluri, Ph.D., of the Center for Systems and Computational Biology, Wistar Institute, Philadelphia; Neil Kay, M.D., Department of Internal Medicine,  Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, Minn; and Kanti Rai, M.D., Long Island Jewish Medical Center, New Hyde Park, N.Y.

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窪田美穂 訳
吉原 哲 (血液内科/造血幹細胞移植) 監修
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原文


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