2011/11/15号「肥満と癌研究」特別号◆適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために | 海外がん医療情報リファレンス

2011/11/15号「肥満と癌研究」特別号◆適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために

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2011/11/15号「肥満と癌研究」特別号◆適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年11月15日号(Volume 8 / Number 22)

 日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために ◇◆◇

米国では長期の癌サバイバーの数が増えるにつれ、太りすぎ、肥満の人も増えており、余分な体重が多くの癌サバイバーの生活の質や寿命に悪影響を及ぼすことが懸念されている。

乳癌、大腸癌、前立腺癌など一般的な癌を含むいくつかの癌で、肥満は再発や死亡リスクと関連づけられてきた。例えば4000人の乳癌サバイバーが登録した、最近のCalifornia Teachers試験の知見では、エストロゲン受容体陽性乳癌で治療を受けたサバイバーなどいくつかの部分集団において、試験登録時点で肥満であることが、乳癌による死亡リスクの著しい上昇に関連していた。

このデータが、肥満が癌サバイバーに有害な影響を与える可能性を強く示唆したため、サバイバーの体重管理を支援するための臨床試験が開始された。NCIの癌サバイバーオフィスのDr. Catherine Alfano氏によれば、同試験の目的は癌の再発や死亡リスクを減らすためだけではない。「癌サバイバーは、治療により日常的な活動に十分に参加する能力が制限されたり、生活の質を下げたりするような、数多くの慢性的な後遺症に直面することをわれわれは理解しています」とAlfano氏。癌サバイバーが適正体重を維持できるよう介入することは、糖尿病や心臓疾患のような肥満に関係する健康問題のリスクを下げる可能性もあると同氏は続けた。

危険な状態のサバイバー集団をターゲットに

これまでの試験で、ある種の癌サバイバーは、他の癌サバイバーより太りすぎ、肥満になる傾向が高いことがわかっている。小児急性リンパ性白血病のサバイバーも、その一つである。NCIが支援した、小児癌サバイバー試験(CCSS)の参加者を含めた大規模試験で、小児急性リンパ性白血病の成人サバイバーは、自らの兄弟、姉妹よりも、肥満になる傾向が著しく高かった。4歳未満で急性リンパ性白血病の診断を受けた女児は、兄弟、姉妹よりも肥満になる率が、4倍近く高かった。

急性リンパ性白血病の治療に使われるステロイド剤は、大幅な体重増加をもたらす。しかしながら、他の要因も体重増加や長期的な健康に影響を及ぼすと、この試験の主任研究員であるニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターのDr. Kevin Oeffinger氏は話した。CCSS試験における急性リンパ性白血病サバイバーの肥満率は、とりわけ脳に高線量放射線治療を受けたサバイバーで高かったと説明した。

放射線治療は「患者の筋力や筋肉の発達に影響する多くの経路に作用する」と、Oeffinger氏は語った。急性リンパ性白血病の診断を受けた小児のおおよそ80%は治癒するものの、治療によるこうした長期的影響は、サバイバーの活動能力を大きく制限することがあると、同氏は話した。
急性リンパ性白血病の治療は、心筋症(心臓の筋肉の疾患)など、長期にわたり心臓に影響を与える場合もあり、また「肥満が心臓疾患リスクを高めることもわかっています」と、Oeffinger氏は続けた。肥満が治療関連の心疾患リスクを高めるのかどうか、またどの程度の影響を与えるのかについては、今後の研究で詳しく調べる必要があると同氏は話した。

肥満率は子宮内膜癌サバイバーにおいて特に高く、研究者らが予想した通り過剰な体重は健康に実害を与えていた。太りすぎおよび肥満の子宮内膜癌サバイバーを対象とした小規模試験では、43%が高血圧症、33%がメタボリックシンドローム、21%が2型糖尿病であった。試験参加者で多少なりとも運動をしていると答えたのは半数以下であった。

減量を目指した臨床試験

現在、太りすぎ、肥満の癌サバイバーの減量支援に向けた多数の臨床試験が実施されている。ほとんどの臨床試験は乳癌と白血病サバイバーが対象になっているが、NCIが支援する小規模試験では子宮内膜癌サバイバーも登録している。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のムーアズがんセンターの研究者らは、NCIが資金提供する小規模臨床試験に、太りすぎと肥満の小児急性リンパ性白血病サバイバーを登録している。この試験は参加者の体格指数(BMI)を減らすことを目指していると、共同試験責任医師のDr. Jeannie Huang氏は説明した。この試験での減量介入は、インターネットやテキスト・メッセージ・ツールを中心としたもので、若年癌サバイバーのニーズに合わせて作られており、その過程には家族も参加する。

急性リンパ性白血病サバイバーの体重増加問題および効果的な介入に関する啓蒙活動の必要性は明らかだと、Huang氏は思っている。「命にかかわる疾患を持った子供や十代の若者を相手にし、恐怖を生き抜いたところから、体重増加といったより『マイナー』に思える健康問題に移るのです」と、同氏は話す。「家族は息子や娘が生きて、元気にしているだけで幸せに思い、体重増加が他の健康問題や二次癌のリスクを高めるとは認識しません」。

ムーアズ試験に参加するAna Otanezさんと家族は、適正体重を維持する必要性を十分に認識している。10年前、6歳の時に急性リンパ性白血病の診断を受けたOtanezさんは、「思い出せる限り昔から」栄養士の指導を受けているという。診療所で受診した際にこの臨床試験のことを知り、家族とともにやってみる価値があると判断した。

Otanezさんの電話には、毎朝、運動と減量に関する助言がテキスト・メッセージで送られてくる。「たとえば『早食いしない』とか、『ジャンクフードは避ける』といったことですね」とOtanezさん。また臨床試験参加者用のウェブサイトで、健康的な食事の調理法を入手することができる。そうしたメニューが、家族の食卓に加わることも多い。

「本当に家族を巻き込んで行うものです」と、Otanezさんは言う。「私の家族は本当に私に協力し、支援してくれています」。目標は4カ月の介入臨床試験期間中に、少なくとも10ポンド(4.5 kg)減量することだとOtanezさんは話した。

的を絞った介入

NCIが資金提供した同種の臨床試験はジョージタウンLombardi 総合がんセンターでも実施されており、太りすぎおよび肥満で、乳癌サバイバーの黒人女性を登録している(この試験に関する詳細は、本ページのビデオ参照)。乳癌の黒人女性は白人女性と比べて、乳癌で死亡する確率が高く、より侵襲性の高いタイプの乳癌であることが多い。

「さらに黒人女性は、白人女性よりも肥満でより多くの並存疾患を有する率も高い」と、Dr. Vanessa Sheppard氏は話す。同氏は、Dr. Lucile Adams-Campbell氏とともに、この臨床試験の責任者を務めている。

3カ月にわたり、この試験の女性参加者は栄養カウンセリングを受け、トレーナーを定期訪問し、サポートグループに参加する。また毎週、コーチ(乳癌サバイバー仲間)から、進捗確認や励まし、助言などを電話で受ける。急性リンパ性白血病サバイバーの臨床試験と同様に、ジョージタウン試験も、BMIを下げ、食事や運動習慣を変えて、生活の質を向上させることを目指している。

体重管理支援が、こうした女性達の満たされていないニーズであることは明らかだと、Sheppard氏は強調した。この臨床試験に登録する前に、「栄養士に紹介されたことがある、あるいは癌専門医から運動に関する紹介を受けた」という人はたった一人であったと、同氏は続けた。「ですからこうした介入で、サバイバーは本当に恩恵を受けるのです」。

— Carmen Phillips

【右中段囲み記事】

一次診療における肥満患者の減量支援米国国立衛生研究所(NIH)が資金提供した2つの臨床試験結果によれば、かかりつけ医が管理するサポートおよびカウンセリング・プログラムで、肥満患者は2年間で平均10~11ポンド(4.5~5 kg)減量したことがわかった。今週、New England Journal of Medicine誌の電子版で発表された。この試験は2つとも、国立心肺血液研究所が資金提供する診療所での減量促進機会(Practice-Based Opportunity for Promotion of Weight Reduction)臨床試験の一部。コンソーシアム・メンバーは肥満患者の減量に焦点をあて、一次診療の環境で介入する臨床試験を実施した。

ジョンズホプキンス大学の提携診療所および、ペンシルベニア大学の提携診療所で実施されたそれぞれの臨床試験において、少なくとも一つの心血管系リスク因子を持つ約400人の肥満患者を、さまざまなレベルの減量サポート群と通常のケア群に無作為に割り付けた。両方の試験で、24カ月にわたりカウンセリング支援(個人面談、電話、または両方)を受けた参加者は顕著な減量を達成し、最低限のサポートあるいは通常ケアを受けた患者よりも、当初体重の少なくとも5%を減らす確率が高かった。

【下囲み記事】

減量に向けて大きなエネルギーを注ぐカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者は、癌サバイバーの減量に関して、過去最大規模の臨床試験を実施している。ENERGYと呼ばれるこの試験は、NCIからの交付金540万ドルを財源に、4年にわたり複数の場所で実施される。最終的には太りすぎ、肥満の乳癌サバイバー800人を登録する予定。同様の登録対象者の小規模試験とは違い、ENERGY試験では介入期間が2年に及ぶ。参加者は無作為で集中ケア群か通常ケア群に割り付けられる。この試験では、介入法として、参加者は少なくとも1日1時間は中程度から活発な運動を行えるようにすべく、減量に向けて積極的な長期の取り組みを実施する。参加者は登録後、最初の4カ月間は、毎週、グループ・カウンセリングに参加する。グループ会合は、認識行動療法の重要な部分だと試験の責任医師Dr. Cheryl Rock氏は話した。多くの女性は、減量を試みては失敗しているが、この療法は体重を落とし、適正体重を維持するために必要な行動と考え方のパターンに関するさまざまな側面について参加者に教えるのに役立つと、Rock氏は説明した。「減量を試みている人や、癌サバイバーにとって、社会的支援は非常に重要です」と、Rock氏は続けた。「サバイバー同士は、再発に対する恐れを含め、闘病を通して多くの経験を共有しているので、そうしたサポートが重要なのです」。

通常ケア群の参加者は、個人カウンセリングと教育サポート、減量に関する助言を受ける。

この試験の初期の目的は、参加者が減量を達成、維持し、生活の質を向上させることである。しかしながら、最終的には約2500人の女性を登録する規模にまで拡大し、長期間追跡して、こうした介入が乳癌再発に影響を与えるかどうかを測定したいとRock氏は強調した。「しかし、もし癌サバイバーの生活の質向上だけを示唆する結果だったとしても、それも非常に重要なことなのです」。

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片瀬 ケイ  訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科) 監修
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