乳房再建手術では将来の心臓手術のために内胸動脈を温存できる/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

乳房再建手術では将来の心臓手術のために内胸動脈を温存できる/ジョンズホプキンス大学

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乳房再建手術では将来の心臓手術のために内胸動脈を温存できる/ジョンズホプキンス大学

2011年10月11日

ジョンズホプキンス大学の医師らは、急速に普及しつつある乳房再建手術手法を実施する際に、将来の心臓手術のために内胸動脈を安全に温存することができるということを示した。

「乳房再建手術患者の一部には将来心臓バイパス手術が必要となることもあり、その可能性のために内胸動脈を温存できるようにする新技術を実施、研究してきた」とジョンズホプキンス大学医学部形成外科准教授でこの最新研究の主任研究員であるGedge D. Rosson医師は述べる。この研究報告はPlastic and Reconstructive Surgery誌10月号に発表された。

女性が一生涯で心臓バイパス手術が必要になる可能性は低い。しかし、乳房切除術後に放射線治療がしばしば必要であるし、心臓の血管が放射線による損傷を受けることによって心臓病のリスクが上がることは知られている。心臓に近い方の左胸の乳癌の放射線治療を受けた女性は、致命的な心疾患に罹患する可能性が2倍も高くなると研究は示唆している。「他の条件がすべて同じであれば、万が一のために備えて内胸動脈は温存しておくことが望ましい」とRosson医師は述べる。

乳房再建手術では、医師は「タミータック」(腹壁形成)手術により腹部から摘除した皮膚と脂肪を乳腺切除で失った乳房の再建に用いる。摘除した腹部組織の血液供給を内胸動脈と接合させることによって胸壁に付着させる。通常、このような手術では「端々吻合術」が用いられ、大部分の内胸動脈は切除して、新しい組織と内胸動脈基部を接合する。

しかし、心臓に栄養を供給する動脈に病変または損傷がありバイパス手術が必要となった場合、心臓外科医はバイパス血管として内胸動脈を第一選択とするのが通常であり、それが不可能な場合は患者の選択肢が限られてしまうことになる。

「端側吻合術」と呼ばれる乳房再建技術を用いれば、外科医は移植する腹部組織にある腹部動脈の断端を内胸動脈の側面に接合するため、この内胸動脈を摘出する必要がなくなる。

この技術の安全性を確立するため、Rosson医師、ジョンズホプキンス大学の元研修医John J. Apostolides医師および元研究員Michael Magarakis医師は、2009年2月中旬から10月中旬にRosson医師が実施した端々吻合15件および端側吻合15件の手術記録を検討した。その結果、この両吻合術間の唯一の顕著な違いとして端側吻合術の方が手術時間が20分長くなることであることがわかった。端側吻合術は標準的な端々吻合術よりも移植組織に血流がない状態が長くなってしまうが、全体の手術時間は外科医が許容できる範囲内であるし、どの端側吻合手術も成功している。

「手術時間の大幅な延長もなく手術難度もそれほど高くならずに端側吻合が実施できるかを見たかったが、そうであることが裏付けられた」とRosson医師は述べる。

米国形成外科学会によれば、米国の形成外科医は2010年、約93,000件の乳房再建手術を実施した。そのうちほとんどが人工移植物を用いたものであったが、20%では外科医は患者の上背部または腹部から切除した組織を用いた。

このような自家組織を用いた手術で最も多いのは、ドナー部位から皮膚および脂肪と共に筋肉を摘除する方法である。ところが、多くの患者は腹部や上背部の筋肉を傷つけずにすませたいと思う。DIEP(deep inferior epigastric perforator: 深下腹壁動脈穿通枝)皮弁という名で知られる新技術では、腹部の皮膚と脂肪のみを摘除して筋肉は温存できる。2010年米国では形成外科医が約5,000件のDIEP皮弁を用いた再建手術を実施した。この新技術は、「タミータック」手術を実施して、摘除した組織を乳房再建に用いるというものである。「新しい乳房は形がよくて、柔らかで柔軟性があり、自然な感じがする。DIEP皮弁による乳房再建手術はその優位性から実施する形成外科医が増えている」とRosson医師は述べる。

DIEP皮弁による乳房再建手術は、端側吻合によって将来バイパス手術が必要になる場合に備えて内胸動脈を温存できるということで、さらに有効性が高くなる。通常、内胸動脈はバイパス手術の最も重要なバイパス血管として用いられる。「内胸動脈は、心臓外科医にとっては通常第2選択となる(脚から切除される)伏在静脈よりも長く機能する」とRosson医師は述べる。

本研究はいかなる資金援助も受けず、ジョンズホプキンス大学の研究者らの時間の提供により実施された。

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多和郁恵 訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター) 監修
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原文

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