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がん治療薬開発への新しいアプローチと臨床試験Q&A

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がん治療薬開発への新しいアプローチと臨床試験Q&A

がん治療薬開発への新しいアプローチと臨床試験Q&A

原文日時:2007年6月4日

キーポイント

●NCI Experimental Therapeuticsプログラム(NExT)は、新薬開発のスケジュールを安全に短縮化するように設計されたプログラムです。(質問3)

●早期試験評価となる第0相臨床試験では、人体の薬物反応に関する試験である薬力学試験や、人体における薬物の挙動に関する試験である薬物動態試験を利用し、新薬に必須の情報を収集します。(質問9)

●第0相臨床試験は、患者に対する毒性の曝露を低くし、短期間に試験を行い、また従来の被験者数よりも少ない数で実施することが可能です。第0相臨床試験によって、期待される効果が速やかに見られない薬剤を排除することで、以降の試験相に移行することを回避するものです。(質問10)

 

概要

質問1.臨床試験とは何ですか

臨床試験とは、人を対象として新しい治療法がどのぐらい有効に作用するかを調べる試験です。それぞれの試験により科学的な問題点に対する回答を得て、また疾患の予防、スクリーニング、診断、または治療について改良方法を見出すことを目的としています。癌関連の臨床試験への参加者には、癌に対する知識や研究の進化という形で貢献いただく機会となります。また、参加者は専門家による最新の医療を受けることになります。

 

質問2.臨床試験を実施する標準的プロセスはどのようなものですか?
通常、臨床試験は相(フェーズ)という一連のステップを経て実施されます。治療を行う臨床試験に対して、常にそれぞれ試験相を設定します。新たな治療方法を一般医療で使用する前に、通常すべてのフェーズの臨床試験を実施します。このプロセスは何年もかかることがあります。それぞれのフェーズの終了ごとに、データを解析します。研究者はその解析に基づいて、その治療薬で次のフェーズで試験を継続するのに妥当な有用性が得られたかを判断します。
・ 第1相臨床試験は、人を対象として新たな治療法を試験する最初のステップです。第1相試験では、研究者は新薬の安全性、投与経路(経口、静注または筋注)や投与回数を評価します。また研究者は有害な副作用について綿密に観察を行います。第1相臨床試験では、通常少人数の患者を組み入れ(大抵12名以下)、非常に少数の施設で実施します。新薬の投与量は、1回につき少量ずつ漸増します。許容範囲内の副作用が認められる最高用量について、次の試験相への移行の妥当性を確認します。
・ 第2相臨床試験は、治療薬や治療法の安全性や有効性を試験し、人体への影響を評価します。第2相試験では通常、特定の癌種に焦点を絞り患者100名以下で実施します。
・ 第3相臨床試験は、新薬や新治療法(または既存の標準薬/治療法の新たな用法)について、既存の標準治療と比較します。試験参加者は、通常コンピューターによって、標準薬/治療群または新薬/新治療群のいずれかに割り付けられます。この方法を無作為化といい、バイアスを排除し、試験参加者やその他の要因が試験結果に影響を及さないように役立ちます。大抵、第1相や第2相臨床試験で有用性が認められた場合にのみ第3相臨床試験に移行します。ここでは頻繁に全国規模で大規模な試験参加者数を組み入れます。

 

試験参加者は臨床試験チームに協力いただくことになります。このチームには医師、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士およびその他の医療関係者などを含みます。医療介護チームは介護、参加者の健康状態の観察、また通常は試験について具体的な指示を行います。またこのチームは試験終了後にも試験参加者と連絡を取ることがあります。

質問3NExTとは何ですか?

 

NExTとはNCI
Experimental Therapeuticsプログラムであり、癌治療・診断部門(DCTD)と癌研究センター(CCR)の米国国立癌研究所内の2部門による共同プログラムです。このプログラムはDCTDの抗癌剤開発における幅広い専門知識、CCRの活動的な部内研究や国立衛生研究所臨床センター(NIH
Clinical Research Center)のMaryland州Bethesdaにある最新設備へのアクセスという、それぞれの強みを組み合わせ、NCIの抗癌剤開発を活性化することを目的としています。またこの共同プログラムでは米国食品医薬品庁(FDA)の治験薬の探索的試験に関する最新のガイドラインに準拠しています。

この新たなプログラムにより、治験薬によっては通常よりも迅速に審査が行われるため、順調に行けば抗癌剤開発のスケジュールを短縮することになります。

質問4.なぜNExTが重要なのでしょうか?
FDAに新薬申請として提出される抗癌剤の申請のうち、実際に承認されるのは5%のみです。承認される割合が低い理由には、新薬の有効性や毒性を予測する前臨床試験の体制が不十分なこと、医薬品開発に膨大な時間がかかること、費用が高いこと、分子標的薬や先端技術を用いる臨床試験が複雑化していることなどが挙げられます。第2相臨床試験を開始した抗癌剤のうち、多くの場合で有効性に欠けているため、約7割が第3相臨床試験への移行に至りません。NExTはこれらの問題への取り組みを支援することを目的としています。

 

質問5NCIの異なる部門がどのように協同してNExTを推進しているのでしょうか?

DCTDとCCRによりNExTを創設し、以下のように前臨床や臨床試験の強化に努めています。

 

・ 新薬の供給は現在DCTDとCCRにより共同で管理されています。

・ 新設された共同開発委員会により新薬の開発が決定されます。

・ 共同新薬開発チームは新設したDCTD
Project Management Officeによる指導のもとで、新規化合物の発見から臨床試験の初期段階までの進捗を追跡する事業に焦点を絞った方法を導入します。
同時にDCTDとCCRの研究者は、新薬開発初期の段階で、標的とする治療を患者に対して、試験できるよう円滑化し、これにより費用がかかるバルク製剤の生産に着手する前に、新薬開発の継続または中止の決定を行うことができるようになります。こうした試験はまた、新たな分子画像技術を利用し、新薬の標的への到達や期待される効果の発現を検出するのに役立ちます。

質問6NExTに関連して新設された施設はありますか?
DCTDは、プログラムの目的の達成を支援する施設を設定しました。主な施設にはSAIC
Laboratory of Human Toxicology and PharmacologyのPharmacodynamic
Assay Development and Implementation Section、並びにNational
Clinical Target Validation Laboratory(NCTVL)の研究所2ヶ所がDCTDによって新設されました。人を対象とした試験を開始する前に充分な各種試験の開発や確認を行うことで、初期段階の臨床試験で各種試験の実施が可能となり、試験中の新薬の安全性および有効性情報を得ることが可能となります。

DCTDでは、分子毒性学研究所を新たに設立して、ヒト正常細胞を用いて副作用の予測を行う新しい方法の開発を目指しています。これはDCTDおよびCCRの役割と平行して行われ、リソースを統合し予測的に前臨床段階の分子レベルの試験の開発に焦点を絞ることを目的とします。これらの試験によりNCIが新薬申請を行う新薬の臨床開発を支援します。

こうした開発プロセスは、腫瘍や正常細胞の分子レベルのイベントの追跡を可能にする新たな画像診断器具や診断薬の開発により促進されます。

 

質問7.上記以外にNExTに参加する施設はありますか?

NCI内部協力の一環として、優先度の高い分子標的に対する新薬の場合、教育機関やNCI以外の施設からでも、NCI内部のリソースの活用を許可する対象となります。

 

質問8NExTではプログラムに第0相の概念を取り入れていますか?

第0相は、NExTプログラムの一環として実施されています。NExTプログラムでは、抗癌剤開発に携わる施設の大半では容易に調達できない研究資材を必要としているため、第0相試験の実施にはNCIのリソースが必要なのです。NExTは、人を対象とした試験の実施まで漕ぎ着ける抗癌剤の数が減少の途を辿っているという厳しい実情から創出されました。NExTでは、人を対象にした第0相臨床試験の実施を可能にするだけではなく、また候補となる抗癌剤の生物学的効果を評価する試験法の開発および実施に必要な研究者チームを統合するプログラムです。

0相試験について

 

質問9.第0相試験とはどのようなものですか?

A 第0相試験はNExTの重要な要素です。この試験によって、実験室から臨床に至るまでの抗癌剤の開発期間を6~12カ月まで短縮できる見込みがあります。具体的には、第0相(フェーズ0)臨床試験は薬剤の薬力学的特性および薬物動態特性を検討することを目的にデザインされています。
薬力学(PD)は、薬剤の吸収、体内の移動し、個々の構造体との結合、標的組織における特定の分子との相互作用がどのように行われるかという、薬剤が人体に及ぼす生化学的および生理学的作用を示すものです。また薬物動態(PK)は長時間にわたる体内での薬物活性を示します。薬剤が吸収され、体内に分布し、組織に局在し、排泄されるプロセスなどを含みます。
両者を合わせて検討することで、薬力学および薬物動態試験のデータは、研究者らが臨床試験での評価のための合理的な投薬計画を決定するのに役立ちます。

第1相試験とは違い、第0相試験では投与回数はわずかで投与量もごく低用量であるため、参加者へのリスクは少なくなります。また必要とされる参加者も少数です(第0相試験では平均約10~12人の患者であるのに対し、第1相試験では約20~25人)。PDおよびPKについて検討することで、研究者らは求められる効果を発揮しない薬剤をずっと早く排除し、それらの薬剤が第1、2、3相試験へと移行するのを避けることができます。

 

質問10NCIが第0相試験の実施を先導しているのはなぜですか?

新薬への投資が増加しているにも関わらず、癌治療のための米国食品医薬品局(FDA)による新薬承認の割合は低いままで、有効性の欠如や関連する有害事象によって失敗し続けています。また、新薬が有効性および毒性の有無を正確に予測できるスクリーニングツールが得られていません。さらに、新薬の開発および試験期間も過度に長いままです。第2相試験へ移行した抗腫瘍薬の70%が第3相試験へ移行できておらず、第3相試験へ移行したものについては、59%が最終的に失敗に終わっています。第1相試験から第3相試験への移行は10年以上かかることもあります。

質問11.第0相試験を実施することの利点は何ですか?

第0相試験は第1相試験よりも短期間で少数の患者を対象に実施されるよう計画されています。ある薬剤について第0相試験を実施することで、その薬剤についての第1相、第2相試験のプロセスは加速されます。さらに第0相試験は、人体が薬剤にどのように反応するのかということや薬剤が体内でどのように作用するのかを検討するものであるため、薬剤の反応が乏しい場合や重篤な副作用を引き起こす場合には、その薬剤についての試験はすぐに中止され、さらなる試験のための追加コストは発生しません。第0相試験では低用量をわずかな回数のみ投与するので、参加者へのリスクがあるとしても最小限にとどまります。
第0相試験には以下の利点もあります。

 

  • 薬剤を低用量で使用することで第0相臨床試験の開始に先立って必要な毒性評価が削減され、一般的な第1相試験よりも試験を大幅に早く開始することができます。
  • 第0相試験によって、薬剤の合理的な選択、治療に効果のないことの早期発見、抗癌剤開発のタイムラインの短縮が容易になります。
  • 第0相試験によって、(ある動物種の組織を異なる動物種へ移植した異種移植片ではなく)ヒトでの研究に基づいた薬剤のさらなる開発の設計および指針がもたらされます。
  • わずかな患者数において薬剤がどのように作用するか、また意図された標的に達するかどうか(分子イメージング研究を含む)を明らかにすることに特に重点を置いている第0相試験の結果から最適な情報が得られ、その後の分子標的薬の開発が加速される可能性があります。
  • 第0相試験の結果によってその後の試験の効率および成功率が改善されます。
  • 第0相試験によって、分子レベルでの薬剤効果の評価、化合物群からのリード薬剤の選択、その後の試験のための開始用量の最適な選択が容易になるでしょう。また、患者に許容可能な副作用をもたらす最大用量を決定するため、時間をかけてゆっくりと薬剤用量を増やしていくという合理的な用量漸増スケジュールを計画する手助けにもなります。
  • 第0相試験は、2006年1月初旬に発行されたFDAガイドラインに概説されている「探索的新薬臨床(xIND)制度」の管理下で実施することが可能です。FDAのCritical
    Pathway initiativeの一部として、xINDは、試験依頼者が患者においてより迅速に有望な候補薬剤を特定し評価する際の手助けとなることを目的としています。

質問12.第0相試験はどのようなタイプの薬剤に適しているのですか?

第0相試験は、今後の研究に役立つ可能性のあるバイオマーカーの開発が必要な薬剤だけでなく、治療指数が広い(ある程度の用量で、重要な有害事象を引き起こすことなく、標的に対して、望ましい効果を発揮する)標的治療薬の試験に有益です。現在市場に出回っている従来の化学療法薬の多くは、治療可能域すなわち治療指数が狭い(効果を示す用量と副作用を引き起こす用量が近い)です。
第0相試験は非常に狭い治療指数を有する薬剤には適していません。

質問13.どのようなタイプの第0相試験があるのですか?

新薬について評価するものから新たなイメージング薬剤を検証するものまでさまざまなタイプの第0相試験があります。
例として以下のようなものがあります。

 

  • 実験室で開発された新薬が、ヒトにおいて標的と結合し阻害することができるか検討するもの
  • より多人数での正式な試験の前にPDおよびPKデータを提供するもの
  • 腫瘍組織を用いて、最も効率的なバイオマーカーを絞り込むもの
  • 2つの薬剤のどちらがより有望であるかを決定するもの
  • 様々な新しいイメージング技術を用いて、体内における薬剤分布の程度や、標的で効果的に作用しているかどうかを判定するもの

質問14.第0相試験の規定はどのようなものですか?

基本的な規定は以下のものがあります。

  • 臨床試験開始に先立ち、前臨床モデル、そしてヒト組織において、標的またはバイオマーカーの正当性が検証されていること
  • 薬剤の標的に対する効果測定をする検査方法が、検査室、検査技師間で再現性があること
  • 臨床試験開始に先立ち、組織および生物検体の取り扱いについて標準操作手順が定義されていること
  • 前臨床モデルでの薬剤の標的効果またはバイオマーカー効果が論証されていること
  • 薬力学と薬物動態の関係が解明されていること

質問15.第0相臨床試験について特に考慮すべき点はありますか?

 

参加者は研究中の新薬を非常に低用量で投与されるためリスクはほとんどありませんが、通常は治療効果もありません。第0相試験の参加者は、医療の発展や新薬が一般の人々に対し利用可能となるまでのスピードの改善を手助けすることになりますが、試験へ関与した結果として「病状が改善する」ことはないでしょう。また、第0相試験に参加することによって、他の試験や治療の参加に遅れや障害が発生する可能性もあります。しかしこれは患者の治療に関与する研究者および医師側が適切な計画を行うことで避けることが可能です。また患者は、治療前後の組織生検試料を提供しなければなりません。

 

このような問題点ゆえに、これらのタイプの臨床試験は従来の臨床試験に比べると患者を組み入れることが難しいでしょう。インフォームド・コンセントのプロセスでは、研究者らは試験の根拠について明確に説明を行い、限られた治療効果や必要なフォローアップ期間をはっきりと定義し、患者への臨床効果はまったく期待できない点を率直に告げるべきです。

 

これらのことの証明として、最初に実施された第0相試験のひとつであるABT-888という薬剤を用いた試験では、約6カ月(通常の第1相試験では約12~18ヶ月必要)で、スクリーニングを受けた17人の患者のうち6人を組み入れるのに成功しました。

 

試験実施のためのIND申請書は2006年5月12日にFDAに提出され、試験開始の承認はその1カ月後、2006年6月15日に受理されました。これら最初の6人の患者データは6カ月足らずで分析可能となり、この理念が実証されました。

 

質問16NCIの最初の第0相試験はどのようなものでしたか?

NCIの最初の第0相試験の結果は、2007年6月3日日曜日にイリノイ州シカゴで開催された第43回米国癌治療学(ASCO)年次総会で発表されました。抄録演題#3518、タイトルは「進行悪性腫瘍患者におけるABT-888によるポリ(ADPリボース)合成酵素(PARP)阻害作用:第0相試験の結果」でした。

 

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癌についての詳細はhttp://www.cancer.govをご覧いただくか、NCI癌情報サービス1-800-4 CANCERまでお問い合わせください。

NExTについての詳細はhttp://dctd.cancer.gov/About/major_initiatives_NExT.htmをご覧ください。

NCI癌治療・診断部門についての詳細はhttp://dctd.cancer.gov/をご覧ください。

NCI癌研究センターについての詳細はhttp://ccr.cancer.govをご覧ください。

NCI原文ページへ

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Q1~Q8 菅原宣志、Q9~Q16 北川 瑠璃子 訳

勝俣 範(腫瘍内科、乳癌、婦人科癌) 監修

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