手術前のストレスマネジメントにより前立腺癌患者の免疫機能を強化し気分障害を緩和/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

手術前のストレスマネジメントにより前立腺癌患者の免疫機能を強化し気分障害を緩和/M.D.アンダーソンがんセンター

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手術前のストレスマネジメントにより前立腺癌患者の免疫機能を強化し気分障害を緩和/M.D.アンダーソンがんセンター

テキサス大MDアンダーソンの研究で、わずかな介入で身体的・精神的回復を早める可能性が示される
M.D.アンダーソンがんセンター
2011年1月28日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新研究によれば、前立腺癌手術の前にストレスマネジメントのテクニックを実践すると、身体の免疫反応が高まって早期回復につながり、気分障害を緩和する可能性もあるという。
本研究はPsychosomatic Medicine誌の2月・3月号に掲載された。前立腺全摘除術(前立腺を外科的に切除)を受ける前立腺癌患者において、手術前のストレスマネジメント指導が免疫応答に与える効果をみた初の研究である。研究者らは以前、手術前にストレスマネジメント指導を受けた患者において気分障害が有意に減少し1年後のQOLが改善したとの報告を行っている。

手術にともなう2つのストレス

「前立腺癌の治療のため前立腺摘除術を受ける患者は、手術そのものによる強いストレスと、今後のQOLに悪影響をもたらす可能性による強いストレスを受けることが多いです」。MDアンダーソンの腫瘍学・行動科学部門教授で本研究の主著者であるLorenzo Cohen博士はこのように述べた。「手術による身体的・精神的なストレスはともに免疫機構に害を与えます。術前にほんの少しストレスマネジメントの研修を行うことで、精神的および免疫学的な転帰の意味で回復プロセスに好影響を与えます」とCohen氏は述べた。

外科的なストレスによりサイトカインという細胞シグナル伝達を行うタンパク質の濃度が上昇し、炎症を亢進させて免疫応答を抑制するため、手術部位近縁および全身に強力な炎症反応を引き起こす。精神的ストレスを受けるとサイトカイン機能の調節が失われ、ナチュラルキラー細胞の機能が低下し創傷治癒が遅くなる。

炎症性サイトカイン濃度の上昇が持続すると有害である一方、手術前後における短期的な上昇は創傷治癒や回復を助ける免疫応答のシグナルとなる可能性がある。

患者への介入レベルを分ける

本研究では、前立腺全摘除術を受ける予定の早期前立腺癌患者159人をランダム化して3群に割り付けた。

・ストレスマネジメント(SM)群患者
・手術の1〜2週前に臨床心理士と2回面談し、不安について話すとともに認知療法の技術の一部を学習
・手術の結果おこりうる悪影響に立ち向かえるよう、深呼吸および誘導イメージ療法の技術について学習
・手術および入院に備えられるよう、心的イメージを通じ誘導
・ストレスマネジメントの手引きについて研修や技術を自習できる音声テープで学習
・手術当日の朝に臨床心理士と追加で短時間の研修
・手術の48時間後に短時間の研修を行いリラクセーションおよび対処戦略の効果を増強

・支持的配慮(SA)群患者
・手術の1〜2週間前に臨床心理士と2回面談。研修内容は支援に徹し、インタビュー形式による心理社会的および医学的な既往歴に関する半構造化面接などを実施
・共感を示し、不安を話しやすくする雰囲気を醸成
・手術当日の朝に追加で短時間の研修
・手術の48時間後に短時間の研修を行い、手術に至るまでや入院生活の経験について会話

・標準ケア(SC)群では通常医療を行い臨床心理士との面談はなし

各患者の血液サンプルを手術1カ月前および手術後48時間に採取した。また、手術1カ月前と手術1週間前(介入後)、ならびに手術当日に心的状態の測定を行った。

介入に効果ありとの結果

手術2日後、SM群患者では
・ナチュラルキラー細胞の機能および血中炎症誘発性サイトカイン濃度がSA群患者に比べ有意に上昇
・ナチュラルキラー細胞の機能およびサイトカインIL-1bの濃度がSC群に比べ上昇
・免疫機構のパラメータが上昇(他の2群では低下もしくは変化なし)

SM群では手術前の気分障害も少なかったが、免疫学的な結果との関連性は示されなかった。

「本研究や他の研究のエビデンスにより、急激なストレス要因の前における心理学的介入は患者に有益である可能性が示されています」。統合医学プログラムの代表者でもあるCohen氏はこのように述べた。「ストレスマネジメントにより、生物学的にも心理学的にも利益が得られ、病気の状態に好影響をもたらす可能性があることを意味しています」。

さらにCohen氏は、ストレスのかかる時期、特に手術前には何らかのストレスマネジメントに取り組むことが重要だと示唆されると話している。

次のステップ

今回の研究に参加した患者の大半がヒスパニック以外の白人で既婚、かつ教育水準の高い人であったことから、研究者らはより多様な集団や癌が進行した患者における追加研究が必要だと話している。

「将来の研究は、もっとも利益が得られる人、特に金銭的にもっとも困窮し最低レベルの社会的支援しか受けられない人に対象を絞ることを考えています」とCohen氏は述べた。「これにより最大の利益をもたらし、医療制度の限られた資金を効果的に使うことに役立つでしょう」。

本研究は米国国立精神衛生研究所および国立癌研究所の資金援助を受けた。本研究で免疫学的な試験を行ったMDアンダーソンの免疫モニタリングコアラボラトリーは、MDアンダーソンがんセンターから助成金の交付を受けた。

Cohen氏以外のMDアンダーソンの共著者は以下のとおり。
Patricia Parker, Ph.D., Qi Wei, M.S., Department of Behavioral Science; Luis Vence, Ph.D., Cheryln Savary, Ph.D., Diane Kentor, Leslie Wiltz, Tejal Patel and Laszlo Radvanyi, Ph.D.,MD Anderson’s Department of Melanoma Medical Oncology; Curtis Pettaway, M.D., Richard Babaian, M.D, and Louis Pisters, M.D., Department of Urology.Brian Miles, M.D., Department of Urology, Baylor College of Medicine, Houston, also contributed to the research.

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橋本 仁 訳
田中 謙太郎 (呼吸器/腫瘍内科・免疫、九州大学大学院医学研究院胸部疾患研究施設 ) 監修
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原文


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