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タンパク質がリン酸基を使って癌転移を阻害す/MDアンダーソンがんセンター

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タンパク質がリン酸基を使って癌転移を阻害す/MDアンダーソンがんセンター

化学基を酵素につけることが骨細胞形成には不可欠
M.D.アンダーソンがんセンター
2011年1月3日

ある種のタンパク質は特定部位に化学基をつけることによって、癌を進行、転移させる酵素を阻害することをテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの科学者が率いる国際的研究チームがNature Cell Biology誌1月号で発表した。
新しい抗癌経路を明らかにしたことに加えて、この研究チームは、EZH2という酵素を同じように不活化することが、多分化能と自己複製能をもつ幹細胞から、骨形成細胞の形成に必須であることを発見した。

「EZH2は侵襲性の強い固形腫瘍で過剰発現し、癌の進行や転移に関わっている。我々は、CDK1という別のタンパク質がEZH2を不活化することを突き止めた」と論文の主席執筆者、M.D.アンダーソン細胞分子腫瘍学科の教授兼主任Mien-Chie Hung博士は述べた。

このチームの基礎研究成果は、EZH2阻害剤ないしはEZH2を不活化するCDK1タンパク質を模倣する薬剤を新抗癌剤として開発する根拠となるものである。「癌の治療と予防を向上させる新治療法を開発するには癌の形成や進行の分子的詳細を理解する必要がある」とHung博士は述べた。

研究チームは一連の試験で、乳癌細胞株でCDK1がEZH2を阻害して癌細胞の転移や浸潤を抑えるメカニズムを明らかにした。

EZH2は、DNAと他のタンパク質に絡みあって、染色体を構成しているヒストンタンパク質に、炭素原子1個と水素原子4個からなるメチル基をつけることによって遺伝子発現を抑制する。このメチル化によって抑制される遺伝子には、本来なら癌の増殖と転移を妨げるはずの腫瘍抑制遺伝子も含まれる。

研究チームは、CDK1が、リン酸化と呼ばれるプロセスであるリン原子1個と酸素原子3個で構成される化学基をEZH2につけることによって、EZH2を介したメチル化を省略させることを明らかにした。また、この効果を有効にするためには、リン酸化がEZH2の特定のアミノ酸に起きる必要があることもわかった。

メチル化よりもリン酸化を優先させるということであるとHung博士は述べる。リン酸化されたEZH2は標的となるヒストンタンパク質のメチル化が出来ず、抑制されていた遺伝子が再活性化される。

リン酸基が結合する部位が変異したEZH2をもつ癌細胞では、つまりリン酸基が妨げられるので、細胞移動および浸潤が正常の非変異EZH2をもつ癌細胞の2倍になった。

同様のプロセスは骨形成には不可欠

EZH2はさまざまな生物学的過程において重要な役割をもつ。「胚幹細胞の組織や器官への分化を誘導するのにEZH2によって遺伝子がオン、オフされるため、EZH2が胚発生には不可欠なものとなる」とHung博士は述べた。胚幹細胞はどんな種類の細胞にも分化できる細胞である。

また、研究者らは、EZH2のリン酸化が骨細胞(骨芽細胞)の生成にとって必須であることを別の試験で明らかにした。

間葉幹細胞は骨細胞、軟骨細胞および脂肪細胞に分化する。研究チームはCDK1によってリン酸化されたEZH2をもつ細胞だけが骨細胞に分化したことを明らかにした。骨形成に不可欠な遺伝子はメチル化によって抑制されたが、CDK1がEZH2をリン酸化すると活性化された。

間葉幹細胞のEZH2が標的とする遺伝子を特定するゲノム規模スクリーニングを間葉幹細胞の骨細胞へ分化する前後に実施した。分化前には4,000個以上の遺伝子がEZH2に結合するのを認めたが、分化後にはEZH2に結合した遺伝子は30個以下になっていた。

「この研究や他の最近報告された研究は、EZH2のメチル基転移酵素活性を阻害したり、リン酸化を調整することによって間接的にEZH2活性を制御する薬剤を開発する可能性を切り開くものとなる」とHung博士は述べた。

「さらに、この研究成果は間葉幹細胞の骨細胞への分化を促進できる方法を示唆するもので、骨疾患の再生医療において長期的に取り扱われるであろう」とHung博士は述べた。

本研究はM.D.アンダーソンがんセンターとChina Medical University Hospital の連携で実施された。

本研究は、米国国立癌研究所をはじめ、以下Kadoorie Charitable Foundations, National Breast Cancer Foundation, Inc., and the MD Anderson/China Medical University and Hospital Sister Foundation Funds and Cancer Center of Research Excellence from Taiwanからの助成金を受けて実施された。

Hun博士および第一著者Yongkun Wei博士の他の共著者は以下のとおりである。Jingyu Lang, Ph.D., Bin Shi, Ph.D., Cheng-Chieh Yang, D.D.S., Ph.D., and Jer-Yen Yang Ph.D., all of MD Anderson’s Department of Molecular and Cellular Biology; Ya-Huey Chen, Ph.D., Long-Yuan Li, Ph.D., and Chun-Yi Lin, all of Center for Molecular Medicine and Graduate Institute of Cancer Biology, China Medical University and Hospital, Taichung, Taiwan; Su-Peng Yeh, M.D., Division of Hematology and Oncology, China Medical University and Hospital, and Chien-Chen Lai, Ph.D., Graduate Institute of Chinese Medical Science, China Medical Universiy and Hospital and the Institute of Molecular Biology, National Chung Hsing University, Taiwan. Hung博士は、China Medical University and Hospital と The University of Texas Graduate School of Biomedical Sciences at Houstonにも在籍している。

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多和 郁恵 訳
峯野 知子 (分子薬化学)高崎健康福祉大学薬学部 准教授 監修
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原文


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