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マイクロRNAが前立腺癌の幹細胞を抑制し転移を阻む/M.D.アンダーソン

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マイクロRNAが前立腺癌の幹細胞を抑制し転移を阻む/M.D.アンダーソン

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの前臨床試験が新たな薬剤アプローチに向けて力強い一歩を踏み出した
M.D.アンダーソンがんセンター
2011年1月16日

RNAの小さな断片が前立腺癌の幹細胞に多くみられる表面タンパク質を阻害して、前立腺癌の転移を抑制する。
本日、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの科学者らが主導した研究チームがNature Medicine誌の冊子体公表に先立って電子版で報告を行った。

「われわれの報告は前立腺癌の幹細胞におけるマイクロRNAの発現パターンを初めて解析したものであり、前立腺癌治療の新たな選択肢としてのマイクロRNA(miR-34a )の開発へ向けて、説得力のある根拠を確立するものでもあります」と統括著者であるM.D.アンダーソンがんセンター分子発癌部門のDean Tang, Ph.D.教授は述べた。

マイクロRNA(miRNA)は一本鎖のRNA短片であり、タンパク質を生成する際に遺伝子が発現するメッセンジャーRNAの制御を行う。

癌幹細胞は自己再生が可能であり、腫瘍形成能が高く、一般に他の癌細胞と比較して治療抵抗性が高い。癌幹細胞は腫瘍の再発や他臓器への致死的な癌の進展である遠隔転移に関与している。このような特徴はCD44と呼ばれる特異的な細胞表面タンパク質を持つ癌細胞でより顕著であるとTang氏は述べた。

「CD44は腫瘍形成の促進、とりわけ癌の遠隔転移と長く関連付けられてきました」とTang氏は述べた。「多くの癌幹細胞がこの表面接着分子を過剰発現しています。われわれの研究で明らかになったもう1つの重要な知見は、CD44そのものがmiR-34aの直接的かつ機能上の標的であることを明らかにしたことです」。

[b]マイクロRNAが増えればCD44と癌幹細胞が減る[/b]

細胞株やマウスに移植したヒト異種移植腫瘍、原発性ヒト前立腺癌サンプル用いた一連の研究室での実験で、研究者らはmiR-34aがCD44を抑制することにより前立腺癌の幹細胞を阻害することを示した。

・細胞表面でCD44を高発現している前立腺癌細胞では、miR-34aは著しく減少している。18のヒト前立腺癌サンプルでは、マイクロRNAの発現はCD44が認められない細胞における値の25〜70%であった。

・またmiR-34a治療を受けたマウスの前立腺癌サイズは、対照群のマウスにおける平均腫瘍サイズの3分の1から2分の1であった。

・CD44を発現している前立腺癌細胞株では、miR-34a治療により腫瘍発生率が著しく減少した。最も劇的な例としては、ある1つの細胞株で、対照miRNAで治療を受けた10匹のマウスすべてに腫瘍形成が認められたのに対し、miR-34a治療を受けた10匹のマウスすべてにおいて腫瘍再生が阻止された。

・前立腺癌細胞株でmiR-34aが過剰発現すると、自己再生細胞の形成、クローン増殖能力、スフィア形成といった癌幹細胞の多くの特徴が抑制された。

・最も顕著な場合、担癌マウスに合成miR-34aを静注治療したところ、1つの癌種においては腫瘍量が半分に減少した。また、別の癌種でも肺転移が急激に減少し、マウスの生存率の上昇につながった。

・興味深いことに、研究者らはmiR-34aと前立腺癌の幹細胞の濃縮に用いられる表面マーカーであるCD44の間に、一貫して反比例の関係が認められることに気付いた。例えば、CD44タンパク質とCD44発現癌細胞はマイクロRNA治療を受けた腫瘍で減少した。miR-34aが阻害された腫瘍ではCD44タンパク質とメッセンジャーRNAの値が高かった。

・最後に、CD44を短いヘアピン型RNA(shRNA)で除去(ノックダウン)すると、miR-34aで治療した細胞と同じ結果、すなわち腫瘍形成の抑制、腫瘍量の減少、遠隔転移の抑制が認められた。

「多くの企業がマイクロRNAを基にした薬剤を開発しています」とTang氏は述べた。「miRNAをどのように投与するかが1つの大きな課題ですが、前臨床段階を通じてこの分野は急速に進んでいます」。

オースティンを拠点とするMirna Therapeuticsの科学者らがこの研究に協力した。Mirna社はmiR-34aを含む8つのマイクロRNAの前臨床開発を取得している。

このプロジェクトは米国国立癌研究所および米国環境健康科学研究所、米国国防総省、Elsa Pardee財団の助成を一部受けた。

共著者は筆頭著者のCan Liu, Bigang Liu, M.D.医師を含めた以下の各位である。Xin Chen、Tammy Calhoun-Davis、 Hangwen Li, Ph.D.、Hong Yan, Ph.D.、Collene Jeter, Ph.D.、 Sofia Honorio, Ph.D.(以上、テキサス州スミスヴィル・サイエンスパークのM.D.アンダーソンがんセンター分子発癌部門所属) 、Can Liu、Xin Chen(両氏はヒューストンのテキサス大学生物医学学科大学院の学生であり、同大学院ははM.D.アンダーソンがんセンターとテキサス大学ヒューストン健康科学センターとで共同運営されている)、Lubna Patrawala, Ph.D.、Kevin Kelnar、Jason Wiggins、Andreas Bader, Ph.D.、David Brown, Ph.D.(以上、Mirna Therapeutics, Inc.社)、Randy Fagin, M.D.(テキサス州オースティンのWestlake病院)である。

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窪田 美穂 訳
榎本 裕 (泌尿器科/東京大学医学部付属病院)監修
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原文


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