マイクロサイズの化学塞栓療法と抗癌剤錠剤を組み合わせた肝癌患者における試験/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

マイクロサイズの化学塞栓療法と抗癌剤錠剤を組み合わせた肝癌患者における試験/ジョンズホプキンス大学

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マイクロサイズの化学塞栓療法と抗癌剤錠剤を組み合わせた肝癌患者における試験/ジョンズホプキンス大学

2011年9月30日

肝癌患者を対象として,経口抗癌剤ソラフェニブと、化学療法剤を封入したマイクロビーズを直接腫瘍に注入する治療との併用療法の安全性が確認された。この治療法は、米国において患者数が増加しているこれら進行の早い致死性腫瘍の転帰を改善するかもしれない。

9月12日付Journal of Clinical Oncology誌オンライン版に掲載された報告によると、ジョンズホプキンス大学の試験責任医師らは、進行した手術不能な肝癌患者35人を対象に、この併用療法の試験を実施した。本試験に用いたソラフェニブと化学療法剤ドキソルビシンはそれぞれ個別に肝癌治療に承認されているが、併用療法としては承認されていない。

適切な治療を適切な時点で組み合わせることが癌専門家の間でひとつの重要な研究課題となっており、ジョンズホプキンス大学の血管内治療医Jean-Francois Geschwind,医師は、今回の2剤による併用療法がその点において有望であったとの見解を示した。

「この2つの治療法はそれぞれが進行性肝癌の生存率を改善したが、これらを組み合わせることにより、さらにこの疾患の生存率を上昇させるかもしれない」とジョンズホプキンス大学の放射線科・外科・腫瘍内科の教授Geschwind氏は言う。

今回の試験においてGeschwind氏は化学塞栓療法と呼ばれる治療法を実施した。これは毛髪1本ほどの細さのカテーテルを用い、高濃度の化学療法剤ドキソルビシンを充填したマイクロビーズを、腫瘍に直接作用させるというものである。化学療法剤は3週間以上かけて徐々にマイクロビーズから放出される。

ソラフェニブはある重要なシグナル経路阻害能により承認された薬剤であり、血管新生を阻害することで腫瘍を酸素不足状態に陥らせる。この薬剤を塞栓療法の施行前に1日2回1週間投与する。「これらの癌における血管新生の阻害が目的であり、塞栓術後通常24~36時間後に阻害率は最高に達する。このことから化学療法の効果を延長させるかもしれない」とGeschwind氏は述べた。

Geschwind氏によると、今回併用療法を受けた患者に認められた副作用はソラフェニブ単独あるいは化学塞栓療法単独による副作用報告と同等以下であった。よくみられる副作用は疲労、手足症候群、全身の発疹であった。

本試験に参加した患者は一晩入院し化学塞栓療法を受けた。その後病態が進行するまでソラフェニブ1日2回経口投与を継続した。本研究では、患者らは6カ月以内の治療期間で最大4回の化学塞栓療法を受けた、とGeschwind氏は述べた。

米国では原発性肝癌の発症率は上昇しており、その原因としてC型肝炎発症率の増加があげられる。C型肝炎は肝臓への炎症を惹起するため、肝癌の主要な危険因子となるとGeschwind氏は言う。

肝癌は特に目立った症状のないまま急速に進行する傾向がある。また、肝癌の指標となるα‐フェトプロテインという腫瘍マーカーの数値が上昇するのは、肝癌患者の半数のみであり、このことが肝癌の早期発見を困難にしている、とGeschwind氏は加えた。

肝臓限局性の癌であれば、医師は肝移植か肝切除をすることが可能であるが、患者の3/4は手術に不適格である。治療をしなければこの手術不能患者の平均生存期間は通常9カ月以下である。化学塞栓療法により生存期間は10~15カ月延長される。

化学塞栓療法にソラフェニブを併用する群としない群を比較した第3相臨床試験がジョンズホプキンス大学およびその他の米国内100の施設で実施中である。「われわれは肝癌標準治療を改善する道の途中にいる」とGeschwind氏は述べた。

本研究はバイエル・ヘルスケア・ファーマシューティカル社、ソラフェニブ製造元のオニキス・ファーマシューティカル社、 およびマイクロビーズ製造元のBiocompatibles社 から資金提供を受けた。

その他本研究に関わった研究者はTimothy Pawlik氏、 Diane Reyes氏、 David Cosgrove氏、 およびジョンズホプキンス大学の Ihab Kamel氏、 Nikhil Bhagat氏である。

Pawlik氏とGeschwind氏はバイエル・ヘルスケア・ファーマシューティカル社の顧問、Geschwind氏はBiocompatibles社の顧問を務める。これらの協定取り決めはジョンズホプキンス大学により利益相反ポリシーに従い管理されている。

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武内 優子 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
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原文

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