既存の安全性確認作業を組み合わせることで放射線治療事故の減少が期待される/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

既存の安全性確認作業を組み合わせることで放射線治療事故の減少が期待される/ジョンズホプキンス大学

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既存の安全性確認作業を組み合わせることで放射線治療事故の減少が期待される/ジョンズホプキンス大学

2011年8月3日

ジョンズホプキンス大学の研究者らが主導する最新研究によれば,既知の安全性確認作業をいくつか組み合わせることによって、放射線治療事故を大幅に減らせることがわかった。

放射線治療の事故防止のために、放射線腫瘍医は10数項目の品質保証(QA)作業を実施する。しかし、これまで誰も系統的にQA作業の有効性を検討したことはないとジョンズホプキンス大学の研究者らは述べる。

ジョンズホプキンス大学の研究グループはセントルイスのワシントン大学の研究者と共同で、2008年から2010年に両医療施設で発生した約4,000件の「ニアミス」事例のデータを収集した。このデータから、あと一歩間違えていれば患者に深刻な被害を与えたと思われる事例290件に絞り込まれた。研究者らは、広く採用されているQA作業それぞれについて、その作業を実施していれば防止できたと思われる事例数の割合を出した。

本研究の主要な発見は、広く実施されているQA作業を6個前後併用することによってこれらニアミス事例の90パーセント以上は防止できたであろうということである。

「この分野の臨床医はこのような品質保証作業については詳しいが、それぞれの作業を組み合わせた場合の有効性を検討したことはないと思われる」とジョンズホプキンス大学放射線腫瘍・分子放射線科学科(Radiation Oncology and Molecular Radiation Sciences)助教、D.A.B.R.(米国放射線科認定委員会専門医)であるEric Ford博士は述べる。 Ford博士は、2011年7月31日から8月4日までカナダ、バンクーバーで開催予定の米国医学物理学会(AAPM:American Association of Physicists in Medicine)とカナダ医学物理学会(Canadian Organization of Medical Physicists)合同の年次会合で8月3日にグループの研究結果を発表する。

また、同じく8月3日の分科シンポジウムで、Ford博士らは放射線治療事故調査手順の標準化について提案する予定である。

ガンマ線や陽子線などの電離放射線には腫瘍内で効率的にDNAを切断して細胞を死滅させる作用があることから,長年にわたり癌の治療では電離放射線が用いられている。電離放射線治療は、腫瘍周囲の正常組織の損傷をできるだけ少なくしながら治療部位に電離放射線を集中させて、照射される線量が腫瘍部位で最大になるようにしようとするものである。

残念なことに、放射線治療は多段階にわたり複雑であり、また数えきれないほど多くの精密測定が必要であるため、過剰照射や過小照射のようなことが時にして起きる場合がある。

QA作業ツールのひとつであるEPID(電子照合画像装置 Electronic Portal Imaging Device)という装置は、患者の体内を透過した放射線をリアルタイムにX線撮影のような画像を映し出す装置で、多くの放射線照射機器に搭載されている。しかし、EPIDを有効に活用するソフトウェアや操作のための研修がほとんど整備されていないため、この装置を使用しているのは放射線治療施設の1%未満であるとFord博士は述べる。

しかし、研究の結果、安全対策に重要なことがローテク的な安全確認作業を列挙した一連のチェックリストにまとめられたとFord博士は述べる。「チェックリストは常に適切に運用されるものであるが、そうでないことも度々あると思われる。」このチェックリストには、医師および放射線量の計算をする医学物理士の両者が治療前にカルテの審査をすることが挙げられている。

また、このリストには、EPIDの代わりにフィルム測定を実施すること、カルテの治療計画と線量が放射線照射機器の指示値と一致しているかを再確認するために放射線技師が照射装置作動前に「タイムアウト」を必ず実施することも挙げられている。

患者がいない状態で照射機器をプログラム化された強度で「テストラン」させる、IMRT(強度変調放射線治療)の治療前検証として認識されている通常のQA作業は、このリストでは下位にランクされている。というのも、研究の対象となった事例には、この試験によって回避できたかもしれないと思われる事例がなかったからである。 「心得ておかなければいけないことであるが、IMRT治療前検証は医療スタッフの多くの時間を消費してしまう」とFord博士は述べる。

Ford博士とジョンズホプキンス大学小児放射線腫瘍医でこのQA評価研究の協力者でもあるStephanie Terezakis医師は、米国医学物理学会(AAPM: American Association of Physicists in Medicine)医療事故防止対策の作業部会のメンバーである。この作業部会は、バンクーバー年次会合の8月3日の分科シンポジウムで、米国の放射線治療事故報告システムの構築を提言することにしている。この作業部会が開発しようとしているシステムは、事故調査および医療施設への情報公開をする中心組織に事故報告をさせるというものであるとFord博士は述べる。「航空機事故や列車事故が国家運輸安全委員会に報告されるのと似たようなものになると思われる」という。

QA評価の研究に参加した専門家は他に、放射線腫瘍研修医Kendra Harris医師、放射線腫瘍科の放射線技師Annette Souranis、ミズーリ州セントルイス・ワシントン大学医学部放射線腫瘍学准教授Sasa Mutic博士などがいる。

この研究はElekta社のパイロット研究助成金の支援を受けて実施された。

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多和郁恵 訳
中村 光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科)監修
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原文

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