BRCA2遺伝子変異を有する腫瘍の卵巣癌患者は生存期間が長い/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

BRCA2遺伝子変異を有する腫瘍の卵巣癌患者は生存期間が長い/MDアンダーソンがんセンター

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BRCA2遺伝子変異を有する腫瘍の卵巣癌患者は生存期間が長い/MDアンダーソンがんセンター

DNAに損傷を与えるプラチナ製剤はBRCA2対して効果があるが、BRCA1には影響がない

MDアンダーソンがんセンター

2011年10月11日

高悪性度卵巣癌でBRCA2遺伝子変異陽性の腫瘍を有する患者は、生存期間が長く、プラチナ製剤ベースの化学療法に対する反応が良好なことを、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびInstitute for Systems Biologyの研究者らが、JAMA誌の10月12日号で報告した。

「BRCA2遺伝子変異の腫瘍が、DNAを損傷する薬剤に対してより脆弱であるというのは、非常に素晴らしい発見だ。というのもDNA修復を阻害する多数の試験薬が臨床試験中で、併用によりこうした腫瘍への有効性が証明される可能性があるからだ」と、統括著者で、MDアンダーソンの病理学部教授のWei Zhang博士は話した。

BRCA2とBRCA1は、DNA修復にかかわる腫瘍抑制遺伝子であり、この遺伝子に変異がある女性は乳癌や卵巣癌のリスクが高まる。

「BRCA1とBRCA2変異について異なる潜在的な効果を発見することは、卵巣癌治療および、さらには他の癌の治療においても、より個別化した方法に近づくステップとなる」と、Zhang博士。「この研究報告は、これら二つの遺伝子、さらにDNA修復に関わるその他多くの遺伝子が、今後の研究の主要対象になることを示している」。

BRCA1とBRCA2遺伝子変異の潜在的な臨床的影響に関する過去の研究は、二つの遺伝子変異を一括りにして見ることが多く、また標本数も少なかった。

筆頭著者でMDアンダーソン病理学部のオデッセイ特別研究員のDa Yang博士は、この詳細な調査は癌ゲノムアトラス・プロジェクトにより可能になったと語った。TCGA(癌ゲノムアトラス)は卵巣癌で最も一般的な高悪性度漿液性卵巣癌の489例について、個々の腫瘍のゲノムに関する詳細分析とそれに呼応する患者の総合的な臨床データをあわせた調査結果を公表した。

「TCGAがBRCA1とBRCA2変異を区別して生存率を分析する力を与えてくれた」と、Yang博士は話した。

全体的な生存率改善
316例のうち、29の腫瘍がBRCA2遺伝子変異陽性で、37の腫瘍がBRCA1遺伝子変異を有していた。腫瘍は悪性度及び病期ともに同等。調査結果には以下が含まれる。
• BRCA2変異陽性の患者群の61%が5年生存したのに対し、腫瘍に正
常なBRCA2遺伝子を有する患者群で5年生存したのは25%だった。
• BRCA2変異陽性の患者群では、44%が手術及びプラチナ製剤による治療後、3年無増悪だったが、正常なBRCA2遺伝子群では16%だった。
• 腫瘍にBRCA1遺伝子変異を有する群では、生存率に影響が見られなかった。
• BRCA2遺伝子変異陽性の患者群は全員がプラチナ製剤の化学療法に反応したが、正常な遺伝子の患者群では82%、BRCA1遺伝子変異陽性の患者群では80%だった。
• BRCA2遺伝子変異陽性の患者群には化学療法が18カ月奏功したが、正常なBRCA2遺伝子群では11.7カ月、BRCA1遺伝子変異群では12.5カ月だった。
• 異型のBRCA2遺伝子変異のある腫瘍は、より多くの遺伝子変異を有する高頻度変異であり、腫瘍サンプルにつき84の変異が見られた。これに対して通常のBRCA2では52だった。

Zhang博士は、この最後に挙げられた超変異表現型と呼ばれる状況が、腫瘍の進行と成長の要因であり、脆弱性の兆候でもある可能性に言及した。

BRCA2は通常DNA2本鎖切断の修復に関係している。BRCA2変異のある細胞は、修復能力が低く、他の遺伝子変異が生き延び成長し、癌が活発になるようなゲノムの不安定性を呈する。

しかしながら癌細胞は、プラチナ製剤などDNAを損傷する薬剤から身を守るためには、DNA修復機能に依存している。このためDNA修復を阻害する薬剤を追加することで、化学療法の効果を高める可能性があるとZhang博士は話した。臨床試験段階にある新薬であるPARP阻害剤は、DNA修復を阻止するので、BRCA2遺伝子変異を有する卵巣癌治療に効果を示す可能性がある。

今回の調査結果をより完全に理解し、癌治療に生かすためには、BRCA1およびBRCA2変異の機能をさらに調査研究する必要があると、Zhang博士らは言及した。

癌ゲノムアトラスは、国立衛生研究所のNCI(国立癌研究所)およびNHGRI(国立ヒトゲノム研究所)の協同プロジェクトで、様々な癌の遺伝子変異と調節の変化の総合的な特性を明らかにする調査研究である。

Zang博士とYang博士の協同研究者は、次の通り。Sofia Kahn, Ph.D., Yan Sun, M.D., Ph.D., of MD Anderson’s Department of Pathology; Kenneth Hess, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Biostatistics, Anil Sood, M.D., of MD Anderson Departments of Cancer Biology and Gynecologic Oncology and Reproductive Medicine and the Center for RNAi and Non-Coding RNA; Ilya Shmulevich, Ph.D., Institute for Systems Biology in Seattle.

本研究はNCI、Blanton-Davis卵巣癌研究プログラム、MDアンダーソン卵巣癌SSPORE(Specialized Program in Research Excellence)、MDアンダーソンOdyssey Fellowsプログラム、ASLAフルブライト研究助成金から資金援助を受けた。

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片瀬 ケイ 訳
原野 謙一 (国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科) 監修
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原文

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