ワークショップに寄せられた’爆弾質問’2010・10・9~2011・2・4/NCI爆弾質問プロジェクト | 海外がん医療情報リファレンス

ワークショップに寄せられた’爆弾質問’2010・10・9~2011・2・4/NCI爆弾質問プロジェクト

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ワークショップに寄せられた’爆弾質問’2010・10・9~2011・2・4/NCI爆弾質問プロジェクト

米国国立癌研究所(NCI)―米国衛生研究所(NIH)

爆弾質問(PQ)プロジェクト
―Provocative Questions-

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‘爆弾質問(PQ)’プロジェクトホーム 
→ ワークショップからの質問集(2010年10月9日、2011年2月4日を見る
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ワークショップに寄せられた’爆弾質問’

以下に、最近の「爆弾質問(PQ)」ワークショップに寄せられた一連の質問を掲載します。ワークショップの回を重ねるごとに掲載数が増え、ウェブ上で議論されるでしょう。新たな質問の投稿、既存の質問に対するコメントや評価、また既存のコメントに対するコメントなどもお待ちしています。投稿する際は、「爆弾質問(PQ)」ウェブサイトのユーザー・アカウントに登録を行ってください(原文参照)。
※各記事にスコアやコメントがつきます。翻訳は省略していますので原文をご覧下さい。

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質問ID:Feb 4-1
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」(Behavioral, Population, Epidemiology, and Prevention Provocative Questions workshop)提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆臨床上のリスクに見合った治療を選ぶことができる癌の特徴、なかでも早期癌の特徴は存在するのか?

背景:早期に検出される癌のすべてに治療の必要があるわけではありません。しかし、特定の病変の臨床的挙動の不確実性が、しばしば実際に必要とする以上に積極的な治療につながり、その結果患者に害をもたらすことがあります。例えば、このような問題は非浸潤性乳管癌(DCIS)や数種の前立腺癌で起こることがあります。また、予後の予測がもともと不確実な癌の場合には、実際のリスクに関する患者へのコミュニケーション不足を招き、個々の状況におけるベネフィットとリスクに対して必ずしも適切とはいえない判断が促されることもありえます。

実現可能性:ゲノム技術やプロテオミクス技術の大きな進歩と、腫瘍微小環境への関心の高まりから、分子プロファイルと表現型がどのように関連するかについての理解が深まっており、より精度の高い予後の測定が可能になるかもしれません。前向き試験が特定の病変の臨床的挙動における予測精度に、実質的な改善をもたらす可能性があります。 

研究の意義:臨床的リスク予測が改善されると、臨床医が治療選択肢の持つリスクとベネフィットを患者に伝えるのに役立ち、患者はより多くの情報を得た上で決断することができ、診断と最適な治療のバランスを取ることができるでしょう。またこのような進歩により、治療法の改善が最も必要とされている領域がより一層明確に特定されるでしょう。こうした変化は、過剰治療による弊害のリスクを低下させることで、早期発見がもたらすベネフィットを全般的に向上させるでしょう。

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 質問ID:Feb 4-3
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆他の適応症に対して一般的かつ慢性的に使用される薬剤が癌を予防するのか?もしそうであるなら、どのような機序で?

背景:癌以外の疾患の治療や予防に一般的に用いられている薬剤のなかには、ある種の癌のリスクを低減したり癌の予後の改善につながる可能性を持つものもあることが数多くの観察研究から指摘されています。例えば、アスピリンやその他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、多くの健常人が服用しますが、結腸直腸癌を含む数種の癌による死亡リスクを低減すると報告されています。これ以外にメトホルミン(2型糖尿病治療薬)などの一般的に使用される薬剤も癌リスクの低下と関連する可能性があります。しかし、これらの薬剤が癌のリスク及び転帰に影響を与えるメカニズムはくわかっていないため、現在の観察研究を超える研究が必要とされています。薬剤監視へのより包括的なアプローチにより、癌リスクの低減(もしくは増大)につながる薬剤をこれ以外にも発見できるかもしれません。

実現可能性:米国食品医薬品局(FDA)が承認した薬剤の長期使用の結果を記載した一連の臨床データは、治療中の疾患との交絡作用の可能性を除外したうえで、これらの薬剤と種々の癌の発症との関連を調べるのに利用できるかもしれません。また、初期の有効性指標として有用とされている代用エンドポイントを用いた対照予防試験が検討される可能性もあります。癌リスクの低減との関連がすでに明らかな薬剤については、リスクを低下させるメカニズムが解明される可能性もあります。例えばアスピリンの場合、この効果は抗炎症活性によるものなのか、もしくはそれ以外の機序によるものなのでしょうか?また、予防がうまくいかなかった患者(すなわち、アスピリン治療を行っても結腸直腸癌を発症した患者)では、アスピリンの主要な抗癌作用に対する反応が低いのでしょうか?動物モデルがこのような要因の解明に役立つかもしれません。

研究の意義:既存の観察データは癌予防仮説を支持するものですが、複数の疾患にまたがる効果を示す確定的な根拠を得るには臨床試験が必要となるでしょう。また、薬剤で予防できる癌の種類がより明確になることで、より効率的な臨床試験の実施につながる可能性があります。さらに、併発状態や危険因子の影響を最大限に活かした癌予防に努めることで、重要な予防的相乗効果を生み出し、公衆衛生の向上につながる可能性もあります。これらの薬剤の作用機序が解明されれば、副作用の少ない薬剤の改良や新規開発につながるかもしれません。
(このPQは、2011年2月2日の「臨床・トランスレーショナル科学に関するワークショップ」(Clinical and Translational Sciences Workshop)に提出されたPQと類似していることにご注意ください。)

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質問ID:Feb 4-4
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆ある地域から他地域へ移住した場合、どのような環境因子が種々の癌のリスクに変化をもたらすのか?

背景:種々の癌の発症率に地理的差異を認める研究は数多くあります。このような違いが集団間の遺伝学的差異による場合もありますが、移住により癌の発症率が大幅に変化し移入国の癌の発症率に類似するようになる移住者集団の例が、数多く報告されています。このような例では、環境要因や文化的要因がさまざまな癌の発症率に大きく関与している可能性が高いと考えられます。異なる緯度における皮膚癌の発症率に対する紫外線の影響など、環境要因が明白な例もあります。しかしそれ以外では、主要因となる環境やライフスタイルの変化とそれらに関するメカニズムについて、疫学的解析では解明されていません。

実現可能性:移住者集団における発癌率の変化の原因となりうる環境要因に関してかなり大規模な疫学的解析が行われていますが、否定的あるいは一貫性のない結果が頻繁に生じます。このような決定的でない試みでは、仮説や環境・遺伝・行動要因のすべてを含んだ幅広い検討を行わなかったことから、結論が限定的となった可能性があります。さらに、移住が癌の発症率に及ぼす影響は経時的に変化するようですが、類似した移住パターンの経時的な比較に関する系統的な調査は行われていません。そのため、移住してからまだ日の浅い集団とかなり時間の経った集団における発癌率の変化に関する会議を開くことが提案され、利用可能な情報を議論し広く伝え、この重要な課題への新たなアプローチを検討することが期待されています。

研究の意義:移住者集団において発癌率を変化させる新たな要因が特定できれば、環境要因による発癌に関する理解が大きく向上するでしょう。この情報は癌の病因や予防の理解に大きな意義を持つでしょう。

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質問ID:Feb 4-5
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆肥満はどのようにして癌のリスクの一因となるのか?

背景:肥満と癌リスクの増大を関連づける研究は数多くあり、なかには減量が癌リスクを低下させることを示す研究もあります。しかし、発症機序の理解にはほとんど関心が払われてきませんでした。

実現可能性:適切な研究として、肥満に関与する代謝経路やシグナル伝達経路を同定する分子的研究、脂肪の分布パターンを決定する画像研究、肥満症治療手術や他の減量法を実施した患者の臨床的観察、運動と食事の効果を解明する疫学的手法などがあげられます。また、遺伝的に肥満になりやすいアメリカ先住民のような特殊な集団が研究に役立つかもしれません。肥満とある種の癌とを結びつけるメカニズムに焦点をあてたワークショップも検討するべきです。

研究の意義:肥満による癌リスクのメカニズムとその可逆性が深く理解されれば、癌のリスクを抑える新たな戦略を示し、体重管理への積極的な取り組みを促進することができるかもしれません。また、肥満がどのような機序で癌を発生させるのかを理解できれば、疫学的に同定されたリスク因子と癌発症の分子生物学とを結びつける重要な研究領域の進展をもたらすでしょう。
(このPQは2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)の試験的ワークショップ」に提出されたPQと類似していることにご注意ください。)

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質問ID:Feb 4-6
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆多くの人々が癌のリスクを高めるとわかっている行動を改められないのはなぜか?

背景:多くの疫学的研究では、修正可能な行動と癌リスクの増加に関連があることが示されています。こうした行動には喫煙、紫外線曝露、性行動、肥満、癌検診の未受診などがあります。しかし、そうした知識を持っていても、多くの人々が行動を改めるのに苦労したり、修正することができません。重要な外部環境要因に加えて、行動変化を促すために取られるべき措置に悪影響を及ぼしていると思われる原因は、少なくとも以下の3つに分類されます。(1)メッセージ自体が効果をもたらすよう最適に計画されていない場合、(2)メッセージが効果的に伝わらない場合、(3)行動変化を促進する治療介入が最適でない場合です。

実現可能性:(1)複数の研究が、メッセージの性質と癌のリスクに関わるメッセージをどのように伝えるかが、癌リスクを低減させる行動を身に付けようとする個人の意欲に大きな影響を与えることを示しています。教育研究では、生徒に否定的な固定観念を意識させると実際にテストの成績が下がり、肯定的な発言がまったく正反対の効果をもたらすことがわかっています。医療格差に関する声明が癌検診などの癌予防行動を取ろうとする患者の意欲に悪影響を与えるとしたら、このアプローチは腫瘍学にも適用可能かもしれません。
(2)メッセージを伝える手段も、癌のリスクに関連する患者の行動に影響を及ぼす可能性があるため、メッセージを伝える手段や発信元を変えることによって、患者の癌リスクに関する情報の受け取り方を改善できるかもしれません。このような改善が、メッセージを伝える医療制度、従来のジャーナリズムの役割や私たちが利用している現代のインターネットを基盤とするコミュニケーションのあり方に変化をもたらすかもしれません。
(3)効果的なメッセージや有効な伝え方をもってしても、行動変化を呼びかけるメッセージに従うことができない人もいるかもしれません。神経科学領域の進歩が、脳の画像撮影技術の進歩と相まって、意思決定と行動変化に関する神経機構を研究し、新規の治療介入を開発する新たな機会を生み出しています。例えば、脳と行動の両方を変化させる方法で集中的にトレーニングを行うことで、認知機能を高めると思われるエビデンスが出ています。

研究の意義:前述のアプローチの1つか2つ、もしくは3つすべてによって癌のリスクを増大させる行動が減少すれば、発癌率に多大な影響を及ぼすことができるかもしれません。認知訓練による介入は、肥満や禁煙といった癌のリスクを伴う習慣と戦っている人々の行動コントロールを向上させるでしょう。癌を発生させる行動の原因となる分子機序や神経機構の研究から、これらの行動を改める方法についての理解が増し、その結果癌のリスクが低減するでしょう。癌のリスクをどのように患者(特にマイノリティ)に伝えるかも同様に重要です。メッセージを変えることが行動変化につながるかもしれません。最後に、癌に関する情報を伝える仕組みが医療制度ごとに異なっている現状を変えることによって、様々な要因がどのように患者に影響を与えるかについて、医療機関や医療チームもこれまで以上に理解できるようになるでしょう。

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 質問ID:Feb 2-1
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆原発腫瘍由来の細胞を他部位で見つける臨床的意義は何か?

背景:転移性疾患は癌による主な死因であると言われています。しかし、すべての原発性癌が転移しやすいわけではないように、続発部位で検出される腫瘍細胞のすべてが致命的なわけではありません。原発腫瘍の増殖による播種は腫瘍成長の比較的早い時期に起こり、続発部位の細胞の性質は潜伏状態から悪性度の高いものまで多岐に渡ることがあります。さらに、比較的不活性な腫瘍細胞が続発部位で完全に悪性の表現型となるには、おそらく細胞非自律的な変化に伴って起こる遺伝子変異やエピジェネティックな変化が必要であると考えられます。しかし、腫瘍細胞が広がると通常は予後不良の指標とみなされるため、このような細胞が検出されると、必要であるかに関わらず、より強度の高い治療を施す主な根拠と見なされるのが一般的です。例えば、ある種の癌(精巣癌や膀胱癌)では播種性癌細胞を有するリンパ節の切除が有効ですが、リンパ節の切除が転帰にまったく影響を与えない癌(乳癌、メラノーマ)もあります。

実現可能性:循環性腫瘍細胞を捕捉する手法や、続発部位における少数の腫瘍細胞を検出してその特徴を明らかにする感度の高い技術、また改良された癌の動物モデルの開発といった新しい実験手法のおかげで、播種性細胞に関する知識を拡大しその詳細な分類を行う機会を生み出しています。例えば、近年のDNA配列解析の進歩により腫瘍細胞集団の系統樹が作成され、それぞれのクローン関連性と進化距離、そしてさまざまな進行段階にある原発腫瘍の各部分についてのクローン関連性と進化距離が決定されています。これらの新しい手法を用いて、腫瘍進行のどの時点で原発腫瘍から細胞が遊離するかを特定したり、播種性細胞の悪性度を決定したり、潜伏細胞を悪性度の高い細胞へと変化させる細胞非自律的な要因やゲノムの自律的事象を特定することができるようになる可能性があります。

研究の意義:このような解析を通じて、続発部位の腫瘍細胞が催腫瘍性を持たずにいる機序や、これらの細胞を悪性化させる機序に関する理解が深まり、続発部位で見つかる腫瘍細胞が呈する生物学的挙動の予測を高めることができるようになるかもしれません。この情報によって臨床医が、このような腫瘍細胞へ治療的介入が必要な時期について、また、処置をしなくても安全な場合もしくは今後の挙動に備えて追跡する場合について、より明確に把握することができるでしょう。腫瘍細胞が播種する時期や生物学的関連性、播種性細胞の進行性の形質転換に関する理解が増してゆけば、癌の病期分類の改善や、罹病率の低下及び不要な癌治療による医療費の削減、そしてさまざまなタイプの播種性細胞に対する薬剤標的の決定が期待できるかもしれません。

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質問ID:Feb 2-2
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆抗炎症薬を長期的に使用することで発癌を予防もしくは遅延させることができるのか?もしそうならば、どのような機序に基づくのか?

背景:炎症と発癌との関連は、とりわけ結腸に関して長い間報告されていますが、癌リスクの低下を目的とする抗炎症薬の使用は一般的ではなく(非ステロイド系抗炎症薬[NSAID]に伴う出血リスクが主な原因)、炎症が癌の発生を促進するおそれがあるとする機序についてはほとんど解明されないままになっています。最近発表されたメタ解析では、血管疾患のリスクを下げるために低用量アスピリンを服用している人々において、食道癌、肺癌、膵臓癌、結腸癌といった数種の癌による死亡リスクが20~30%低下したことが示されました(Lancet誌2011年1月1日号)。この研究が契機となり、発癌に対する炎症の関わりへの関心が高まり、発癌における炎症の役割を十分理解したうえでの抗炎症薬による化学予防の利用可能性に注目が集まるようになりました。

実現可能性:炎症細胞および炎症分子の決定因子は、細胞分画や免疫学的手法並びに生化学的手法によってかなり特徴付けられます。また、画像技術を用いて炎症を観察することもできます。炎症マーカーと癌の発症の関連性を解明するための抗炎症化合物に対する長期的な前向き臨床試験において、候補となる細胞型や分子をモニターできるかもしれません。また、動物モデルを用いたコンパニオン解析も実施できます。アスピリンや他のNSAIDは広範に用いられているため、患者記録や臨床研究を活用することで、最近報告されている知見を広げこれらの薬剤の短期的及び長期的効果を調べる新しい研究を計画することが期待されます。また、NSAIDによって保護される部位に腫瘍が発生した患者の解析からも理解が得られるかもしれません。というのも、このような治療上の「失敗」は、腫瘍形成がもともとNSAID非感受性であるタイプの腫瘍であったのかもしれませんし、投与されたNSAIDの用量では炎症を抑制できない患者であったのか、もしくは、別の要因によるものかもしれないからです。

研究の意義:さまざまな癌の発生にかかわる慢性炎症に特異的なマーカーが同定されれば、癌予防において大きな突破口が開けるでしょう。腫瘍の発生に抗炎症薬が影響を及ぼす場合とそうでない場合があるという明確な腫瘍の分類を決定することで、癌の不均一性に対する重要な理解が深まるでしょう。特定の細胞マーカーや分子マーカーで測定される慢性炎症の制御は、癌の化学予防評価における中間評価項目となる可能性があり、癌による死亡リスクの低減を目的とする、既存の抗炎症薬や新たな抗炎症薬を用いた新しいアプローチを促進するかもしれません。この試みがうまくいけば、スタチンや降圧薬など癌の適応以外に処方され広く用いられている他の薬剤に対する介入研究において、発癌率の補助評価も行われるようになるでしょう。

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質問ID:Feb 2-3
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆放射線療法に対する腫瘍の抵抗を克服することは可能なのか?

背景:放射線療法は、放射線の照射範囲と線量を精確に制御することができるため、さまざまな癌種の治療に対して注目されている方法です。しかし、放射線療法によく反応する癌もあれば、そうでない癌もある理由は不明です。たとえば、放射線による局所制御率は精巣癌ではほぼ100%ですが、膠芽腫では10%に過ぎません。このような差がなぜ生じるのか、放射線耐性細胞の感受性を改善できるのか、どのように改善するのか、また二次耐性を獲得する機構が存在するのかについては明らかになっていません。

実現可能性:現在利用可能な技術を使って、放射線耐性癌細胞と放射線感受性癌細胞の遺伝子構造およびエピジェネティック機構の特徴を明らかにすること、放射線耐性に関与する生化学的および生理学的経路(例えばサイトカイン分泌やストレス応答)を明確にすること、さらに従来の化学療法や標的薬を使用するときと同様にさまざまな放射線増感剤の放射線耐性に対する影響を調べることができます。画像検査法が改善されれば小病変の耐性を追跡できるようになりますし、新しい動物モデルが放射線耐性を理解する契機になる可能性もあります。標的薬剤耐性、化学療法耐性および放射線耐性には共通のメカニズムが介在するのか、放射線耐性は遺伝的なものなのかエピジェネティックなものなのか、または両者に基づくものなのか、耐性細胞特有の適応反応とはどのようなものか、放射線耐性には細胞非自律的な要素があるのか、というような重要な課題に取り組むこともできるでしょう。

研究の意義:放射線耐性を理解することによって、多くの癌種で患者の転帰を大幅に改善することができるでしょう。特に、前向き臨床試験の結果から忍容性が高く効果的な放射線増感剤を特定することが期待されます。

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質問ID:Feb 2-4
 2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2011年3月27日ウェブサイトへ投稿。

 

◆現在のin vivoイメージング様式で検出できる腫瘍よりも2〜3桁(100〜1000倍)小さい腫瘍を検出できるのか?

背景:現在のイメージング様式では細胞107〜109個分(1〜数百mm3の範囲)の腫瘍を検出することができます。一方、PET装置が収集する放射能はPET検査薬から放出される量の1%未満であるため、感度を向上させる余地があります。原発病変や転移病変の早期検出によって効果的な治療につながる可能性が高まると思われること、患者の管理に関する臨床判断が顕微鏡的病変に基づくことが多いことから、さらに高感度な画像撮影法が臨床診療および癌の転帰を変える可能性があります。

実現可能性:画像撮影法の感度と解像度はトレードオフの関係にありますが、以下のことが実現できれば微小な腫瘍も検出できるはずです。まず、腫瘍細胞の生物学的標的に対するイメージングプローブの精度をさらに向上することです。(これは、製薬業界と学術研究機関が協力して、薬剤として不適格であった製剤に対して画像検査薬として利用する道を模索することで実現できるかもれません。)また、新規のより高感度なイメージングプローブを開発すること、カメラの感度を向上することです。

研究の意義:患者および実験的癌モデルにおいて極微小な細胞の塊を検出できることは治療と研究の観点から重要であり、いつ、どのように腫瘍が広がるのかを理解すること、腫瘍の播種と悪性進行にはどのような相関関係があるのかを研究すること、標的を正確に定めた放射線や薬剤による治療戦略を改善すること、および治療効果を観察することが期待されます。

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質問ID:Feb 2-5
2011年2月4日の「行動・集団・疫学・予防に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」提出、2011年3月3日ウェブサイトへ投稿。

 

◆癌に対する新たな治療法を迅速に評価するための最適基準を決定するには、臨床試験システムをどのように変えればよいか?

背景:現在開発中の新しい薬剤が多数あります。しかし、薬剤の試験は臨床試験の実施に必要な諸資源や患者の不足で制約を受けます。さらに、従来の臨床試験デザインが一部の標的薬剤には有用ではないこともあります。また、不成功であった試験を詳しく調べて失敗から役立つ情報を蓄積することはほぼ皆無でした。

実現可能性:臨床開発のためには、細胞培養や動物モデルを用いて作用機序および前臨床有効性を実証した薬剤のみを選別することが有用であると思われます。さらに、推定標的またはその経路が阻害されているかどうかを臨床試験で決定することが、薬物評価を早めるのに役立つことも考えられます。このほか、バイオマーカー(利用可能であれば)、中間エンドポイントおよび中止規定を臨床試験デザインに組み入れることができます。

研究の意義:作用機序を明らかにし、なおかつ臨床検査によって標的または標的経路の阻害を観察できる薬剤に絞ることが、開発中の薬剤のなかでも期待が高い薬剤の開発を早め利用可能となるのを促します。その結果、患者の選択をより良いものとし開発後期の失敗を減らし、また治療が不成功であった腫瘍や臨床試験を理解するための手がかりとなります。

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質問ID:Feb 2-6
2011年2月2日の「臨床・トランスレーショナル科学に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2011年3月3日ウェブサイトに投稿。

 

◆癌の併用療法を決定し検査するための適切な基準は何か?

背景:腫瘍の治療には集学的治療や多剤併用療法がよく用いられており、多剤併用療法の潜在的有用性は癌細胞死を増大させたり薬剤耐性の可能性を抑えるための基本としてよく知られています。しかし最近まで、FDAは個別に吟味していない薬剤を2剤以上併用する際の有効性を評価することに消極的でした。また、研究者の間でも既に知られている耐性の機序、シグナル経路の活性化、突然変異の組合せや合成致死に基づく多剤併用の癌治療戦略を検討することに消極的でした。

実現可能性:変異する腫瘍細胞の特性化、細胞シグナリングの変化、単剤投与と併用投与における薬剤に対する反応、細胞モデリングや腫瘍の挙動から、併用療法に関する有用な情報を得られることがあります。このような研究を拡大して、ロボットを用いたハイスループット方式によって数千におよぶ薬剤の組合せを選別することができますし、有望な組合せを動物モデルでさらに検証することができます。複数の薬剤を選ぶ際の基本原理はほとんど解明されていませんが、最新の分子生物学的方法論を用いれば知見が得られると思われます。放射線療法と従来の化学療法の併用も検証することができます。患者を対象にしてこのような併用療法の臨床試験を試みる場合は、多剤の同時投与によって影響を受けると思われる薬剤のバイオアベイラビリティパターンおよび毒性も考慮する必要があります。

研究の意義:癌細胞の大半を除去したり、薬剤耐性の一次または二次機構を克服することによって、併用療法が薬剤の単独療法よりも高い効果を示すようになるのは確実でしょう。また、高い相乗効果を得られる可能性が、効果的で毒性の低い癌治療へと向上させるでしょう。

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質問ID:Feb 2-7
2011年2月2日の「臨床・トランスレーショナル科学に関する爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2011年3月3日ウェブサイトに投稿。

 

◆前向き研究の患者データを効率的に収集できる健康情報システムを設計するための原則は何か?

背景:特に腫瘍学では、基礎研究、トランスレーショナル研究および臨床研究によって生じる膨大な量の情報を処理するために、健康情報システムが不可欠です。将来的に、健康情報システムが医学的意思決定および保健医療の提供を顕著に改善し、転帰に関する豊富な情報源となりうることは広く認識されていますが、そのシステム設計の詳細は最終的に決まっていませんし、検証されたわけでもありません。

実現可能性:米政府は、速習が可能で知識に基づく保健医療システムを支援できる情報システムの開発を奨励しています。電子化した医療記録の普及、新しい計算原理およびバーチャル学習技術が利用できるようになり、新しいシステムの設計に役立っています。しかし、システムに患者データを適切に組み入れて、研究目的に沿ったデータへのアクセスを許可しながら、患者から適切な同意を得たうえで個人情報を保護することができる正確な手法は、まだ確立されていません。しかし、腫瘍学研究者らが、(たとえば)協力的な臨床試験実施団体から得られる患者データを利用して、このようなシステムの開発を援助することができるでしょう。

研究の意義:前向き研究から得られる全患者の健康情報を収集することによって、特に「情報の倉庫」から医療従事者へ関連情報を迅速に提供することができれば、さまざまな点で医療行為と医学研究を向上できるでしょう。最適なシステムであれば、患者を経時的に観察し、患者自身が自分のデータにアクセスできるでしょう。さらに、この情報システムは臨床試験の候補者を特定するのにも使えるため、症例集積度が大幅に増大するでしょう。

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質問ID:Oct 9-1
2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2011年1月9日ウェブサイトに投稿。

 

◆一部の播種性癌が化学療法のみによって治癒するのはなぜか?

背景:化学療法はごく稀にきわめて効果的であり、癌を慢性の無症候性状態に変えて望ましい転帰を迎えると言われることも多いですが、特定の播種性癌を化学療法によって根治できることは明らかです。この種の癌には、固形腫瘍(精巣癌、絨毛癌、ウイルムス腫瘍)および血液系腫瘍(ALL[急性リンパ性白血病]、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)があります。

実現可能性:この「治癒可能な」癌の生物学的研究や効果的な薬剤の作用機序を探るための新しい手法が利用できます。

研究の意義:化学療法によって根絶しやすい癌の特性を明らかにできれば、特定の治療法がどのように作用するのか理解を深めたり、比較的感受性の低い腫瘍を感受性の高いものに変えることを検討したり、難治性の悪性腫瘍の新しい治療法を開発することができるかもしれません。

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質問ID:Oct 9-2
2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2010年12月17日ウェブサイトに投稿。

 

◆転写因子をはじめ、癌細胞の生存に必要でありながら従来「薬剤開発につながらない」とされてきた標的タンパク質を阻害するには、新しい技術をどのように活用できるのか?

背景:人工的に調節された導入遺伝子または阻害性RNAを用いた実験によって、腫瘍細胞の多くが転写因子(突然変異体または不適切に発現した野生型因子など)の発現に依存していることが知られています。しかし、一般に酵素以外のタンパク質を阻害する手段がないため、ほとんどの場合、臨床で転写因子やその作用をどのように阻害すればよいのかわかっていません。

実現可能性:ホルモン様リガンド、タンパク質およびタンパク質間相互作用の構造モデル、タンパク質修飾やタンパク質安定性への阻害、阻害性RNAを用いるなどいくつかの方法によって、従来「薬剤開発につながらない」とされた標的タンパク質に対して新たな治療戦略の基礎を築くことができる可能性があります。

研究の意義:これまで標的にされてこなかった作用を遮断することを目的とした新しいクラスの薬剤を用いた臨床試験では、さまざまな悪性腫瘍が対象候補になる可能性があります。

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質問ID:Oct 9-3
2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2010年12月17日ウェブサイトに投稿。

 

◆浸潤性疾患へ進行する可能性が予測される非悪性病変には明確な性質があるのか?

背景:現在、前立腺癌または乳癌でもいわゆる「上皮内癌」のような(前癌状態であると推定される)非悪性病変が検出されると、時間とともに進行的な挙動をとりやすい病態である可能性があるため、積極的に治療されることが多いです。この治療パターンを覆すことは難しく、悪性になる可能性を病変の遺伝学的・生化学的・細胞学的特徴から判断できるかどうかを知る必要があります。

実現可能性:極微小な細胞塊の遺伝子型および表現型を決定できる技術の到来により、悪性形質は確率的に付与されるものなのか、初期病変では悪性転換の可能性に関して定義しうる再現可能な差異があるのかについて、現在では解明できるかもしれません。

研究の意義:初期病変が浸潤癌に進行する予測値を高中低にグループ分けし信頼度の高い分類ができるかどうかがわかれば、癌になりやすいさまざまな組織の初期病変の検出、およびあらかじめ決められた治療方針に大きな影響を与えるでしょう。このグループ分けに関する生物学的な理解が深まれば、複数の組織にみられる類似病変に関連する可能性から、重要な前進となるでしょう。

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質問ID:Oct 9-4
2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2010年12月17日ウェブサイトに投稿。

 

◆癌遺伝子によってコードされたタンパク質が突然奪われると、多くの癌細胞が死ぬのはなぜか?

背景:癌細胞の生存力は、正常な前駆細胞や同等の細胞には不要な発癌性タンパク質の継続的な産生とその活性に依存することが多いです。このことが、標的治療や癌遺伝子発現を阻害する手段を用いて、数種の腫瘍を速やかに縮小させる根幹をなしています。

実現可能性:ヒトの癌および癌のマウスモデルで、(俗に「癌遺伝子中毒」と呼ばれる)癌遺伝子に依存した症例が多く見られ、この「中毒になる」癌遺伝子産物が最新の癌治療における有望な標的となるため、現在大きな関心の的になっています。また、それらの活性化におけるシグナル伝達ネットワークの研究も、治療標的を特定するために進められています。しかし、健康な前駆細胞にはみられない癌遺伝子産物の欠失に対して過敏になる、細胞内の「アンバランス」についてはほとんどわかっていません。

研究の意義:発癌性タンパク質の欠失または不活性化に対する脆弱性を細胞がどのように呈するのか、その結果、どのようにプログラム細胞死を遂げるのかに関する知見が得られれば、治療のための新たな標的を示唆する可能性がきわめて高いです。さらに、標的治療に感受性があるのはどの腫瘍かという問いや、標的治療によって腫瘍の全細胞を除去することの問題についても理解を深められる可能性があります。

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質問ID:Oct 9-5
2010年10月9日の「爆弾質問(PQ)ワークショップ」へ提出、2010年12月17日ウェブサイトに投稿。

 

◆肥満と特定の癌種に関連があることは十分に裏づけられているが、その原因となるのはどのような分子機構なのか?

背景:肥満と癌リスクの増大との関連は多くの研究で実証されていますが、そのリスクの根拠をなす機序はほとんど解明されていません。また、(食事療法や肥満症治療手術による)減量によってこのリスクをどの程度まで軽減できるのかは明らかにされていません。肥満と癌の関連メカニズムを理解し、リスクを大幅に改善するという強力な証拠が得られれば、癌予防の努力に重要な影響を与えることになりますし、禁煙プログラムの成功例にみられるような効果をもたらすでしょう。

実現可能性:摂食障害の内分泌学的研究、脂肪蓄積の代謝に関連する要因、および糖尿病をはじめとする肥満に起因する疾患の発症に関する最新の研究が、肥満と発癌の関連メカニズムを理解する機会をもたらしています。さらに、肥満症治療手術などの体重管理の手段によって、肥満に関連する癌リスクの可逆性に関する研究の対象となる患者集団が発生する可能性もあります。

研究の意義:肥満による癌リスクのメカニズムとその可逆性が深く理解されれば、癌のリスクを抑える新たな戦略を示し、体重管理への積極的な取り組みを促進することができるかもしれません。また、肥満がどのような機序で癌を発生させるのかを理解できれば、疫学的に同定されたリスク因子と癌発症の分子生物学とを結びつける重要な研究領域の進展をもたらすでしょう。

翻訳者:窪田美穂、ギボンズ京子
監修:北丸 綾子(分子生物学/理学博士)

原文

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‘爆弾質問(PQ)’プロジェクトホーム 
→ ワークショップからの質問集(2010年10月9日、2011年2月4日を見る
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