2011/10/18号◆特別リポート「ビタミンEサプリメントが前立腺癌リスク増加と関連」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/10/18号◆特別リポート「ビタミンEサプリメントが前立腺癌リスク増加と関連」

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2011/10/18号◆特別リポート「ビタミンEサプリメントが前立腺癌リスク増加と関連」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年10月18日号(Volume 8 / Number 20)

 日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

ビタミンEサプリメントが前立腺癌リスクの増加と関連

前立腺癌に関する大規模な予防試験に参加した男性のうち、ビタミンEサプリメントを服用した群ではプラセボ群に比べ前立腺癌を発症するリスクが高まることが、試験参加者の長期間追跡調査によりわかった。クリーブランドクリニックのDr. Eric Klein氏らが10月12日付JAMA誌で本知見を報告した。

この結果はセレンおよびビタミンE癌予防試験(SELECT)によるもので、同試験には前立腺癌リスクが平均的で比較的健康な男性35,000人以上が参加した。本試験は2008年に早期中止となった。計画された中間解析の結果、ビタミンEおよびセレンは単独でも併用でも前立腺癌を予防する可能性はないことが示されたためである。

試験が中止となった時点で試験参加者にはサプリメントを服用しないよう伝え、その後も追跡調査を続けた。中間解析では、その時点で統計学的に有意な結果ではなかったものの、ビタミンEが前立腺癌リスクの増加と関連している可能性も示唆された。

その後の追跡調査により、400IU/日のビタミンEを服用した群の男性は、プラセボ群の男性に比べ前立腺癌リスクが17%高くなっていることがわかった。この差は統計学的に有意であった。

ビタミンEに関する証拠

Klein氏らは結果の報告のなかで、全体的に見てビタミンEは多くの疾患において予防効果を示さなかったことに触れている。「証拠全体として、ビタミンEが他の疾患を予防することは示されておらず、今やわれわれは前立腺癌リスクを高めるという証拠を得ました」とKlein氏は話している。

健康をうたっている市販の製品に臨床試験により効果を示した強力な証拠が示されていない場合、消費者は疑ってかかる必要がある、と著者らは強調した。

「SELECTなどの試験により、われわれが投与する医薬品には、効果をもたらす可能性があると同時にわずかではあるが害を及ぼす可能性もある、ということに一歩下がって気づかされます」と共著者でブリガム&ウィメンズ病院のDr. J Michael Gaziano氏は述べている。

「われわれがこれらの大規模ランダム化比較試験、とりわけ広く使用される薬剤の試験に携わっているのはそういう理由からです」とGaziano氏は付け加えた。

米国の60歳以上の男性では半数以上がビタミンEを含有するサプリメントを摂取しており、SELECTで設定した用量を摂取している男性は23%に及ぶ、と著者らは言う。それゆえ前立腺癌リスクが増加するという今回の知見には「大きな意味」がある。

前立腺癌リスクの増加はサプリメント摂取の中止後にのみ現れる。「これらの物質はかなり効果が持続するようです」とKlein氏は述べ、臨床試験のデザインをする研究者はこの可能性を考慮に入れるべきだとした。

「SELECT試験では他にも栄養サプリメント高用量摂取のリスクの可能性を示す教訓的エピソードがあります」とハーバード大学医学部のDr. JoAnn Manson氏は述べた。同氏は本研究に関わっていない。「以前に見かけた事例ですが、こういったランダム化比較試験の重要性を示しています」。
1980年代初頭に、臨床試験においてβカロテンが肺癌リスクを高める(特に喫煙者)という害が示されるまでは、「健康をもたらす特効薬」と広く考えられていたとManson氏は述べた。

また、別の大規模ランダム化比較試験であるPhysicians Health Study IIでは、ビタミンEと出血性脳卒中リスク増加との関連が示された。

特定の栄養素が欠乏すると健康上の障害をもたらす場合もあるが、高用量のサプリメント摂取では健康上のリスクが効果を上回る可能性もある、とManson氏は述べた。同氏はビタミンDおよびオメガ3脂肪酸に関する大規模ランダム化試験を主導している。

「多くの栄養素には適切な摂取量や血中濃度の範囲というものがあり、それを超えることがよいとは限りません」とManson氏は付け加えている。

前立腺癌の大半は早期に発見

SELECTは、連邦政府の助成を受けた癌研究協力団体のSWOGが調整し、米国、カナダ、プエルトリコの400以上の施設が参加した。医師らは、各地域で最新の検診および生検の標準的手法により参加者をモニターした。一般診療と同様に、PSA検査を受けた人も受けていない人もいた。

7年間の臨床試験期間中(5年半サプリメントを服用し、1年半服用中止)に、プラセボ群では1,000人あたり65人が前立腺癌と診断された。一方、ビタミンE単独群では1,000人あたり76人が前立腺癌と診断された。

大半の癌は早期に発見されたため、「前立腺癌による死亡リスクはさほど大きくない」と共著者でテキサス大学サンアントニオ校健康科学センターのDr. Ian Thompson氏は話す。

一方で、米国では前立腺癌と診断された男性はそのほとんどが最終的に手術または放射線治療を受けることとなり、性的機能や泌尿器系機能に影響を及ぼす可能性があると、指摘した。「もし男性でビタミンEを服用している場合、服用を中止するか主治医に摂取すべき理由を聞いてください」とThompson氏は話した。「ビタミンEを摂取すべき理由はないと思います」。

このランダム化比較試験のきっかけとなった以前の研究でビタミンEが前立腺癌を予防することが示されており、SELECTで前立腺癌リスクの増加が示された理由は明らかでない。しかし、今回の試験に参加した集団は異なっており、以前の研究結果は偶然によるものではないかと研究者は話している。

実際、医学的根拠のゴールドスタンダードである前向きランダム化比較試験が今回実施されたのも、まさに以前の研究結果が決定的なものでなく再確認を要するものであったためだ。

SELECTでは参加者から生物学的試料を採取しており、同試験でわきおこってきた疑問の解決に取り組むこととしている。たとえば、セレンとビタミンEの両方を摂取した男性では癌リスクが増加しなかったことから、両者間における相互作用の可能性が考えられる。

今回の結果は「厳格な科学的探究」の一例だとして、共著者でNCI癌予防部門のDr. Howard Parnes氏はこう述べる。「科学の考え方とは、観察したことを実験により正しいか確認することです」。さらに、「研究結果が社会通念を覆すことはしばしばです」。

—Edward R. Winstead

SELECT試験およびPCPT試験の試料を用いた研究提案の期限を延長セレンおよびビタミンE癌予防試験(SELECT)の新データで、ビタミンEを摂取した男性の前立腺癌リスクが高まることが報告されたことから、同試験の生物学的試料を用いた研究提案の期限が延長された。SWOG(以前のSouthwest Oncology Group)はSELECTおよび前立腺癌予防試験(PCPT)から得られた試料を準備中で、前立腺癌におけるビタミンEの役割の解明など、新しいトランスレーショナルリサーチができるよう幅広い研究分野に提供する。SELECTまたはPCPTの試料に興味のある研究者は、2011年11月14日午後5時(東部標準時)までにSWOGあて同意書を提出すること。本申請の期限は2011年12月15日午後5時(東部標準時)。SWOGは提出された提案を2012年1月に審査し、同年4月に採用結果を発表する。SELECTおよびPCPTでは、前立腺癌を患っていない男性合計53,000人以上を介入群またはプラセボ群にランダムに割り付けており、前立腺癌発症リスクに関連する膨大な臨床データが得られたほか、これに付随する分子、疫学研究などに用いる生物学的試料も得られている。すでに承認された研究および生物学的試料に関する情報、ならびにデータ要素についてはSWOGのウェブサイトを参照のこと。

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橋本 仁  訳
須藤 智久 (国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)  監修
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