2011/10/18号◆癌研究ハイライト「高線量の放射線治療は肺癌患者の生存期間を改善しない」「BRCA遺伝子変異が卵巣癌治療における生存期間と奏効率に影響を与える」「新規抗癌剤が甲状腺の正常機能を侵す可能性あり」「大腸癌関連性の細菌が2件の独立した研究で発見された」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/10/18号◆癌研究ハイライト「高線量の放射線治療は肺癌患者の生存期間を改善しない」「BRCA遺伝子変異が卵巣癌治療における生存期間と奏効率に影響を与える」「新規抗癌剤が甲状腺の正常機能を侵す可能性あり」「大腸癌関連性の細菌が2件の独立した研究で発見された」

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2011/10/18号◆癌研究ハイライト「高線量の放射線治療は肺癌患者の生存期間を改善しない」「BRCA遺伝子変異が卵巣癌治療における生存期間と奏効率に影響を与える」「新規抗癌剤が甲状腺の正常機能を侵す可能性あり」「大腸癌関連性の細菌が2件の独立した研究で発見された」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年10月18日号(Volume 8 / Number 20)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

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癌研究ハイライト

・高線量の放射線治療は肺癌患者の生存期間を改善しない
・BRCA遺伝子変異が卵巣癌治療における生存期間と奏効率に影響を与える
・新規抗癌剤が甲状腺の正常機能を侵す可能性あり
・大腸癌関連性の細菌が2件の独立した研究で発見された

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高線量の放射線治療は肺癌患者の生存期間を改善しない

先週発表された報告によれば、手術の対象とならないⅢ期非小細胞肺癌(NSCLC)患者に高線量の放射線治療を施行しても、生存期間が改善されない。この知見は、マイアミで開催された米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で発表された第3相ランダム化試験の中間解析に由来する。

試験責任医師であるワシントン大学医学部Dr. Jeffrey Bradley氏は、「(これによって)診療が変わると思う」と記者会見で述べた。

本試験は、NCIが助成している米国腫瘍放射線治療グループによって実施されており、当初はセツキシマブ(アービタックス)を追加した標準化学療法または追加しない標準化学療法と併用する放射線治療で、放射線量74 Gyと標準の60 Gyを比較した。中間解析(死亡数90時点)の結果から、線量74 Gyの治療を受けた患者に全生存期間の改善がみられる見込みがないことが統計的に明らかになったため、2011年6月に高線量放射線治療群の参加者登録を打ち切った。

中間解析の時点で423人の患者が試験に登録していた。高線量放射線治療群の方が治療に関連した死亡が多かった(7人対3人)が、解析によれば、この差が同群の生存率の低さを説明するものではなかった。

本試験は、近傍のリンパ節まで広がったⅢ期NSCLC患者に対する放射線治療の異なる線量を比較したものとしては、過去30年で初の臨床試験であるとBradley氏は説明した。本試験は引き続き、線量60 Gyの放射線治療と化学療法との併用療法でセツキシマブの有無を比較する2群を継続している。

Bradley氏によれば、Ⅲ期肺癌患者に対しては線量60 Gyが標準であるとされてはいるものの、単一施設で実施されたいくつかの試験から、これより高線量を用いても新たな副作用を起こすことなく生存期間を改善できることが示唆されていた。ASTRO元会長であるボカ・ラトン地域病院のDr. Tim Williams氏は、同病院では過去5年間、60 Gyよりも高い線量を標準としていると話した。

NCIの癌研究センター腫瘍内科長Dr. Giuseppe Giaccone氏は、この結果は、Ⅲ期肺癌患者に対する高線量の放射線治療を止める必要があることを強く示唆していると述べた。

 

BRCA遺伝子変異が卵巣癌治療における生存期間と奏効率に影響を与える

10月12日付JAMA誌に発表された新たな研究によると、BRCA2遺伝子に変異をもつ卵巣癌女性では、変異をもたない女性の場合と比較して標準的な化学療法がより強く奏効し、全生存期間と無増悪生存期間が延長する可能性がある。この研究では、BRCA1遺伝子に変異をもつ女性の全生存期間と無増悪生存期間が、変異が認められない腫瘍をもつ女性と比べて良好であることが示されたが、後者の所見は統計的に有意ではない。

この観察研究を行ったテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Da Yang氏らは、高悪性度漿液性卵巣癌女性316人から採取した腫瘍のゲノムデータと臨床データを解析した。データは2009~2010年にNCIの癌ゲノムアトラス(TCGA)プログラムから得られた。研究に参加した女性の大部分(219人)は、BRCA1遺伝子変異およびBRCA2遺伝子変異が認められなかった。BRCA2遺伝子に変異が認められた女性は27人のみであり、BRCA1遺伝子の変異については35人であった。

全般的にみて、BRCA2遺伝子に変異をもつ女性の5年生存率が61%であったのに対し、BRCA1遺伝子およびBRCA2遺伝子に変異をもたない女性の5年生存率は25%、BRCA1遺伝子に変異をもつ女性は44%であった。BRCA2遺伝子に変異をもつ女性は全員で化学療法に対する奏効がみられた。一方、BRCA遺伝子の変異をもたない女性の奏効率は85%、BRCA1遺伝子に変異をもつ場合は80%であった。

「BRCA1遺伝子およびBRCA2遺伝子の変異には、患者の生存率に関して、BRCA遺伝子に[変異をもたない]場合とは異なる関連性があることを裏付ける証拠がわれわれの観察所見から得られた。また、このような違いから白金製剤を主とする化学療法への顕著な奏効率が生じた可能性があり、ゲノム不安定性との関連性が異なる可能性を示唆する証拠も示されている」と論文の著者らは記している。今回の研究は規模が比較的小さいため、この所見を実証するためにはより規模の大きな研究が必要であることを著者らは認めている。

今回の研究結果によって卵巣癌の新たな治療に対する試験方法を理解する上で「大きな進展」が得られたと、コロンビア大学医療センターのDr. Victor Grann氏とDr. Ramon Parsons氏は同号の解説記事に記述している。たとえば卵巣癌患者に対するPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害薬の臨床試験では、BRCA1遺伝子に変異をもつ患者とBRCA2遺伝子に変異をもつ患者の間に奏効率の違いが認められるかを調べることが可能であろうと述べた。

今回の研究より規模の大きなNCI主導による試験が今年前半の米国癌学会年次総会で発表されているが、ここでもBRCA2遺伝子変異をもつ卵巣癌女性の全生存期間の延長などの同様の結果が得られている。

関連記事:「BRCA1タンパク質が腫瘍抑制因子として機能する仕組みが示された

 

新規抗癌剤が甲状腺の正常機能を侵す可能性あり

この10年来、多くの癌患者が新しい分子標的薬や免疫療法の開発による恩恵を受けてきた。一方、本日Journal of the National Cancer Institute誌電子版に発表された報告によれば、このような薬剤によくみられる副作用が、思いもかけなかった甲状腺への影響の結果である可能性がある。

ブリガム&ウィメンズ病院のOle-Petter R. Hamnvik氏らが甲状腺機能障害と新しい抗癌剤治療に関する科学文献を調べたところ、チロシンキナーゼ阻害薬やイピリムマブなどの免疫療法を含む新しい治療法を受けた患者の約20~50%に甲状腺機能障害が生じていることが判明した。

新規の抗癌治療によくみられる副作用に甲状腺機能低下があり、倦怠感や便秘などをひきおこす。このような症状は癌患者によくみられるため、もともとの癌による症状なのか、症状緩和に用いられた薬剤によるものなのかを見分けることが難しい。甲状腺機能障害の症状にはこのほかの治療により起こった毒性作用と区別しにくいものがあり、治療薬を減量したり治療の頻度を減らす結果となりかねない。

Hamnvik氏らは、このような治療を受けている患者に甲状腺機能障害の徴候があるかどうかを医師が慎重に監視することを推奨しており、「これによって甲状腺疾患の早期発見と早期治療が可能になり、原疾患である癌の治療を続けながら患者のQOLも改善できる」と述べている。

本報告の著者らはまた、新規抗癌剤の臨床試験では、必ず医師が甲状腺機能を監視することを推奨している。

著者らは、発表データのほとんどが小規模研究または予備研究から得られたものであることを指摘して、このような治療に起因する甲状腺異常の機序を理解し、この分野で答えが出ていない多くの疑問を検討するにはさらに研究が必要であることを付け加えた。

結びに、「甲状腺疾患の治療は安全であり患者のQOLを向上させやすく、もともとの癌に対する効果的な治療を継続できる可能性がある」と述べている。

 

大腸癌関連性の細菌が2件の独立した研究で発見された

2つの独立した研究グループが大腸癌に関連のある1種の細菌を同定した。どちらの研究も、この発症頻度の高い癌と感染要因との間に存在する関連性の可能性を確認した初めての研究である。しかしこうした所見を確認し、この細菌が大腸癌の発症に関与しているかを判断するにはさらに研究が必要であると、両グループの研究者らは強調した。両研究は10月18日付Genome Research誌電子版に発表された。

フゾバクテリウム属のこの微生物は、数兆個もの細菌および数千個もの細菌種の生息するヒトの大腸にはあまり多く生育していない。しかしフゾバクテリウム属は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)といった数多くの疾患に関与しており、大腸癌の危険因子の1つである。

どちらの研究グループも同じような研究アプローチを用いた。Dr. Robert Holt氏が率いるブリティッシュ・コロンビア癌研究所の研究チームは、まず11の大腸癌検体と、同じ患者から採取した腫瘍に隣接する健康な大腸組織に対してハイスループットRNA配列解析を行い、フゾバクテリウム属の過剰を確認した。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学共同のブロード研究所のMatthew Meyerson氏率いる研究グループは全ゲノム配列解析を行って、9人の患者の大腸癌検体と正常大腸組織検体に細菌DNAを同定した。

どちらの研究グループもポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、さらに多くの患者の大腸癌検体と正常な大腸組織検体についてこの所見を確認した(検体数はそれぞれ88および95)。

Holt氏らがPCR解析を行った検体では、「腫瘍検体のフゾバクテリウムの量は、対応する正常検体と比べて、全般的に平均して415倍に増えていた」と報告された。Meyerson氏のグループでも同様の所見が得られたが、「一部の癌組織でフゾバクテリウム属が劇的に過剰であったに過ぎない」とされた。

Meyerson氏らは、11検体の大腸癌転移巣のうち2検体でもフゾバクテリウム属を検出した。
「この細菌の存在は、単に免疫抑制部位での日和見感染を示す可能性もあるが、おそらく前炎症機構を介して腫瘍発生に関与する可能性も考えられ、さらに追求する価値のあるものである」とHolt氏らは書いている。

腫瘍の細菌構成を解析すると、別の患者の腫瘍検体の細菌構成よりも、同一の患者から採取した対照用の正常組織検体の細菌構成との間に類似性が強く認められたと、NCIの癌生物学部門のPhil Daschner氏は記した。これから「腫瘍の細菌叢の形成では、個々の遺伝的要因、その他の細菌、細胞由来成分、食物由来成分、代謝産物などを含む患者の消化管生態系が、腫瘍の微細環境よりもずっと重要である」ことが示唆されると同氏は続けた。

この所見はまた、大腸の細菌構成に基づく予防や診断、治療のための戦略の可能性も示しているとDaschner氏は述べた。

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ギボンズ 京子、窪田 美穂 訳

田中 文啓 (呼吸器外科/産業医科大学)、石井 一夫 (ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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