2011/10/18号◆特集記事「心毒性のより低い化学療法は一部のHER2陽性乳癌患者にとって一つの選択肢になる可能性がある」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/10/18号◆特集記事「心毒性のより低い化学療法は一部のHER2陽性乳癌患者にとって一つの選択肢になる可能性がある」

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2011/10/18号◆特集記事「心毒性のより低い化学療法は一部のHER2陽性乳癌患者にとって一つの選択肢になる可能性がある」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年10月18日号(Volume 8 / Number 20)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

心毒性のより低い化学療法は一部のHER2陽性乳癌患者にとって一つの選択肢になる可能性がある

乳癌国際研究グループ(BCIRG)006試験の結果によれば、アントラサイクリン系薬剤を用いない化学療法と標的療法トラスツズマブ(ハーセプチン)の併用は、一部のHER2陽性乳癌患者にとって一つの選択肢になる可能性がある。この結果は、アントラサイクリン系薬剤を用いない化学療法にハーセプチンを併用する初めての大規模ランダム化乳癌試験から得られたもので、10月6日付New England Journal of Medicine誌で報告された。

アントラサイクリン系薬剤は効果のある抗癌剤であるが、心臓障害や二次原発癌などの長期的副作用を起こし得る。トラスツズマブも心臓障害を起こし得るので、この2薬剤を組み合わせることで心臓へのリスクをさらに増大させる可能性がある。

BCIRG-006で検討されたアントラサイクリン系薬剤を用いない療法は、トラスツズマブと、ドセタキセルまたは白金剤を中心とした化学療法剤との間の相乗効果が示された実験データに基づいていた。「その療法によってアントラサイクリン系薬剤を中心とした療法にみられる心毒性を避けられるのではないかという期待もあった」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ジョンソン総合がんセンター臨床/橋渡し研究責任者のDr. Dennis Slamon氏が率いるこの研究論文の著者らは書いている。

41カ国の研究者が3,222人のHER2陽性乳癌患者をこの試験に登録した。患者は、手術後、次の3つの化学療法のうちの1つの投与群に無作為に割り付けられた。すなわち、ドキソルビシン(アントラサイクリン系)+シクロホスファミド+ドセタキセル(AC-T)投与群と、AC-Tにトラスツズマブを追加する投与群、ドセタキセル+カルボプラチンにトラスツズマブを追加する(TCH)投与群である。ドセタキセルの製造者であるサノフィ・アベンティス社が研究助成を行い、トラスツズマブの製造者ジェネンテック社も助成している。

追跡期間中央値5.4年で、トラスツズマブの投与を受けた両群の患者の5年無病生存率(AC-T+トラスツズマブ群で84%、TCH群で81%)は、AC-Tのみの群(75%)より優れていた。このトラスツズマブを用いる両投与群とAC-T群との差には統計学的有意性が認められた(無病生存の定義は、乳癌の再発、二次原発癌、全死因死亡のない期間とされた)。

トラスツズマブを用いる2つの投与群間では無病生存率と全生存率において有意差は認められなかったが、この試験はトラスツズマブを用いる両投与法とトラスツズマブを用いない投与法とを比較するようにデザインされていて、トラスツズマブを用いる投与法同士を比較するものではなかった。

そのため、トラスツズマブを用いる投与法で一方がもう一方より優れているかどうかについて決定的な答えはないとNCI癌治療・診断部門(DCTD)バイオメトリック研究科の研究者Dr. Sally Hunsberger氏は説明した。その代わり、著者らは、両投与法で乳癌に関連する事象が多いか、また高度のうっ血性心不全が多いかを比較することにより、癌関連事象が起こらないことと心事象が起こることとの間のトレードオフ(二律背反関係)に注目した。

癌の遠隔再発は、TCH群では144人に認められたが、AC-T+トラスツズマブ群では124人であった(20件の差)。しかし、高度のうっ血性心不全は、AC-T+トラスツズマブ群で21人に認められたのに対し、TCH群では4人であった(17件の差)。さらに、AC-T+トラスツズマブ群患者の18.6%に無症候性の心機能低下が認められたが、TCH群では9.4%であった。

TCHの投与を受ける患者にはおそらく癌再発が若干多いが、「心事象があってもアントラサイクリン系薬剤を用いるべきだろうか」とHunsberger氏は問いかけた。各患者とその主治医は、後の副作用のリスクと再発のリスクを天秤にかけてどちらの治療法が自分たちの状況によりふさわしいかを決める必要があると同氏は述べた。「もし患者に心疾患があるなら、おそらくTCHが妥当な療法です」。

まとめると、この試験から得られたデータは「一つの投与法がもう一方より優れているとは、はっきり示していない」とミシガン大学総合がんセンターのDr. Daniel F. Hayes氏は、付随論説の中で書いている。そして、「HER2陽性早期乳癌の術後療法として、TCHがもう一つの(だが唯一のではない)標準治療であることがこれらの情報から立証された」と結論づけた。

「トラスツズマブを用いる両投与法は『標準』とみなし得るということに賛成です」とDCTDの乳癌治療リーダーであるDr. Jo Anne Zujewski氏は述べた。「この研究により、トラスツズマブを中心とした治療法は、化学療法の根幹としてのTCとの併用であるかAC-Tとの併用であるかにかかわらず、HER2を過剰発現している腫瘍を持つ患者には顕著な利益があります」。

心臓に対する長期的影響をさらに解明するためには、アントラサイクリン系薬剤とトラスツズマブの併用投与を受けたこの試験の被験者やその他の患者の追跡調査を続けることが重要になるとSlamon氏は述べ、「多くのこのような研究には長期的安全性データがなく、それが大問題なのです」と説明した。

BCIRG-006の研究者らは、10年間(中央値)、この試験の被験者を追跡調査して、有効性と安全性のデータをさらに集めようと計画している。

— Sharon Reynolds

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鈴木 久美子  訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター) 監修
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