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より強い血管新生阻害作用を示す二重機能タンパク質を開発/スタンフォード大学

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より強い血管新生阻害作用を示す二重機能タンパク質を開発/スタンフォード大学

2011年8月8日

癌は血液が必要である。実際、ある種の抗癌薬はもっぱら癌細胞に作用して毛細血管の生成を遅延させたり阻止したりし、大量に必要とする血液や栄養の供給を遮断することにより腫瘍の増殖を停止させる。

Proceedings of the National Academy of Sciences誌の8月8日付オンライン版に発表された報告によると、スタンフォード大学の研究者らは、1種類ではなく2種類の毛細血管の生成(血管新生)を制御する化学受容体を標的とすることにより、血管生成阻害作用においてより高い有効性を顕著に示す新種の改変タンパク質を開発したことを発表した。本研究により、両受容体を遮断する新規のタンパク質が示された。

「化学受容体とそれらのタンパク質リガンドはさまざまな細胞機能を制御するが、そのタンパク質は受容体に正確に合致する必要がある。あたかも分子のジグソーパズルのようなものだ。」スタンフォード大学生物工学講座助教で、主任研究員のJennifer Cochran博士が語る。「適切なタンパク質とそれらに合致する受容体が遭遇して結合するとき、細胞レベルでさまざまな現象が開始する。本研究では、血管新生に対する化学情報伝達および細胞内機構を調査した。」

既存の癌治療法は血管新生を制御する特異的受容体の活性を遮断する。ある種の抗癌薬は、コルク栓が瓶の口を塞ぐかのように作用し、受容体を占有して血管誘導性タンパク質を細胞情報伝達や生化学過程の活性化から阻止する。また、血管誘導性タンパク質に結合して、それらのタンパク質から受容体を遮蔽する抗癌薬もある。

しかし、血管新生は共同作用を行う複数の受容体により制御されることが多いため、癌研究者にとって事態は複雑である。「細胞内情報伝達過程は、複数の鍵がなければ開けられない貸金庫のようなものだ。」とCochran博士は語る。

このような状況においては、複数の受容体が共同作用しクロストークと呼ばれる化学的協調作用により互いに相互作用する。しかし、現行の坑血管新生治療法は1種類の受容体しか標的とすることができない。そのため、血管成長を顕著に抑制するには複数の受容体を遮断する必要がある。

博士研究員のNiv Papo氏およびAdam Silverman氏、および研究当時は大学院生であり現在は博士研究員であるJennifer Lahti氏を含むCochran博士の研究チームは、共同作用する受容体の対と考えられる候補を同定した。これまでの研究結果から、二種類の特異的な血管新生受容体間の顕著なクロストークの存在が知られていた。彼らの目標は、両方の受容体を遮断できる単一のタンパク質の開発であった。

最初に、研究チームはどちらか一方の受容体に結合するタンパク質を選択した。このタンパク質を“足場”とし、これに新しい部分を追加したり、一部を新しい部分と置換したりした後に、大きな“足場”タンパク質の元の機能や物理的構造を変えることなく、二番目の受容体にも結合できるものを新たに選択した。彼らは両方の受容体を遮断する新規タンパク質の開発に成功した。

このタンパク質を栄養豊富な基材に分配し、マウスに移植したとき、劇的な血管新生抑制効果が認められた。「二重機能タンパク質を処理した検体では血管形成はほとんど起こらず、血管新生因子処理を行わない検体と同程度であった。」とCochran氏は語った。「重要なことに、この遺伝子組換えタンパク質は、単一受容体阻害薬と比較して血管新生過程をより強く阻害する。」

1種類の特異的受容体を標的とする各々の薬剤のカクテルを用いた場合、同様の効果がもっと容易に得られる可能性があると指摘する研究者もいる。Cochran氏もそのような方法の可能性を認めているが、カクテルに含まれる各々の薬剤について臨床試験を行い米国食品医薬品局(FDA)により承認を得る必要があるだろうと指摘する。今回の新規タンパク質は、単一医薬品の基礎が確立された。

「これが、一分子内二機能タンパク質の主な利点である。」Cochran氏は語った。「一回のFDAの承認プロセスにより、新薬開発プロセスを何年も短縮できる可能性があり、また、複数の薬物を製造する代わりに単一の薬物のみを製造するという明らかなコスト上の利点がある。さらに、過去10年かそこらの間に開発された蛋白工学の最先端技術を用いることにより、望ましくない副作用を減らしつつ最適な治療効果を得るために、そのような分子を改変することができるかもしれない。」

Cochran氏によると、血管新生の阻害は癌だけでなく黄斑変性症などの治療にも有効かもしれない。ある種の黄斑変性症では、網膜での無制限な血管成長により視力が低下し、場合によっては失明してしまうこともある。

診断や免疫療法から組織再生に至るまでのさまざまな生物医学的応用が可能な新規の多重機能タンパク質の開発に、“足場蛋白”を用いた研究戦略が応用できるとCochran氏は考えている。

「二重機能タンパク質には大いに注目すべきだ。二つの方が一つよりもよい場合もある。」とCochran氏は述べた。

本研究は米国がん協会研究助成金の援助を受けた。

スタンフォード大学生物工学講座(また、本研究を支援した)に関する情報は次のサイトで閲覧できる(http://bioengineering.stanford.edu/)。本講座は工学部と医学部の連携により運営されている。

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石井 一夫 (ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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原文

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