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腫瘍細胞に対する免疫攻撃を強化し、持続させるアプローチをNIHが発見

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腫瘍細胞に対する免疫攻撃を強化し、持続させるアプローチをNIHが発見

NCIプレスリリース2011年9月19日

幹細胞のように機能する新たな分類のヒト免疫細胞が特定された。この細胞は白血球の一部であるTリンパ球のサブタイプであり、これまでに癌治療目的での使用が報告されているどの種類のT細胞よりも効果的であると証明される可能性がある。米国国立衛生研究所の一部である米国国立癌研究所(NCI)による本研究により、この幹細胞様T細胞が継続的に細胞障害性T細胞を産生しながら自己再生することによって、腫瘍細胞に対する長期的な免疫攻撃をひきおこす機序が説明された。研究結果は、2011年9月18日にNature Medicine電子版に掲載された。

「ヒトにおいて、そのようなT細胞サブセットが理論的に存在するはずだ、ということは知られており、多数のグループがその細胞を探し求めてきました。我々は幸運にもこれらの細胞を特定することができました。この細胞は希少で捕らえにくく、ほとんどの供血検体では、血中に含まれるT細胞のほんの1~2%から成ります」。 NCI癌研究センター主任研究員のNicholas P. Restifo医学博士は言う。

現在転移性癌患者の治療に用いられている多くの治療法は、投与後ほんのわずかな期間しか持続しない。Restifo氏によると、本研究で述べられている生細胞療法ならば、継続的に自ら活性を取り戻し、長期間、場合によっては生涯にわたって患者の免疫システムと一体化し、腫瘍細胞と戦い続けることができるかもしれない。

組織内の細胞はすべて老化の過程をたどり、リンパ球も例外ではない、と著者らは説明する。T細胞は老化に伴い、自己複製し、腫瘍や病原体による攻撃に応答する能力が衰える。しかし、すべてのT細胞が同じ速さで老化するわけではない。抗原への長期間にわたる曝露や免疫応答を引き起こす物質により、T細胞の老化が速まることがある。にもかかわらず、100歳以上の超高齢者においても、若いT細胞が存在する。非常に長生きする人は癌や感染症に対する防御を何らかの方法で補強する必要があるため、そのようなことを可能にするT細胞サブセットが存在するに違いないと常々考えられてきた。問題は、胸腺(新たなT細胞を産生する器官)が思春期には実質的に退縮してしまうことである。

著者らは、非常に若い免疫細胞の特性を多く有するT細胞(いわゆる、完全に未分化なT細胞、すなわちナイーブT細胞)を研究する戦略をとった。これらの非常に若いT細胞を調べることにより、著者らは、リンパ球が記憶応答(以前に接触したことがある抗原を記憶し、迅速に応答することができる機能)を行う際に生じる、遺伝子発現の初期変化を示したT細胞を分離することに成功した。この幹細胞様のメモリーT細胞は、非常に若い免疫細胞の物理的特性を有する。幹細胞は、分化して様々なタイプの細胞になることができ、その点で非常に有益なものである。

「幹細胞様T細胞の遺伝的特性を特定できたことにより、我々は特定の遺伝子を操作して、古いT細胞から若いT細胞を再生することができるかもしれない。これは再生医療にとって重要な可能性を含んでいる。」同じく癌研究センターに所属する筆頭著者のLuca Gattinoni医学博士は言う。

著者らはこれまでに、マウスを用いた研究により、Wntと呼ばれる重要なシグナル経路を模倣するよう設計された薬剤の存在下で刺激を受けた際に、T細胞が幹細胞様の特性を獲得することを示していた。本研究はその結果に基づいて行われ、この方法を用いて、ヒトにおいて幹細胞様T細胞が作製され、特徴づけられた。その後、100人以上の健常人供血者および癌患者の血液検体を調査し、これらのT細胞がヒトに自然に存在することが確認された。さらに、ヒト化モデルマウス(ヒトの機能遺伝子をもつマウス)において、幹細胞様T細胞が迅速な増殖機能をもち、これまでに報告されてきたどのT細胞よりも効果的な抗腫瘍反応をひきおこすことが発見された。

参照:L Gattinoni et al. A human memory T-cell subset with stem cell-like properties. Nature Medicine電子版2011年9月18日

(原文の図の説明)

抗原による刺激に伴い、若い(ナイーブ)T細胞はメモリーT細胞およびエフェクターT細胞に分化する。この過程で、T細胞は、青矢印で示す再生、急速増殖する能力を次第に失う。(提供:NCI Nicholas P. Restifo医学博士)

図は、ナイーブT細胞→幹細胞様記憶T細胞→セントラル記憶T細胞→エフェクター記憶T細胞と分化しながら次第に自己再生能力を失い、エフェクターT細胞へと最終分化する様子を示している。

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石岡  優子  訳

田中 謙太郎 (呼吸器/腫瘍内科、免疫/MDアンダーソンがんセンター)監修
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原文

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