遺伝子治療は乳癌幹細胞に対し殺細胞効果を示し化学療法を増強する/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

遺伝子治療は乳癌幹細胞に対し殺細胞効果を示し化学療法を増強する/MDアンダーソンがんセンター

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遺伝子治療は乳癌幹細胞に対し殺細胞効果を示し化学療法を増強する/MDアンダーソンがんセンター

標的薬剤は正常細胞を避けて、腫瘍内の細胞死を防ぐタンパクを阻害する。

MDアンダーソンがんセンター

2011年9月12日

乳癌細胞の特に難治性のタイプに対し直接的に送達された遺伝子治療により、細胞の自己破壊、再発率の低下をもたらし、ある種の化学療法の有効性向上に寄与することを、テキサス大学MDアンダーゾンがんセンターの研究者が9月13日付けのCancer Cell誌に報告した。

研究者らは細胞およびマウスの実験で、BikDD遺伝子変異がBcl-2ファミリーの3種のタンパク活性を阻害することにより、乳癌幹細胞としても知られる治療抵抗性の乳癌源細胞(BCICs)を有意に減少することを見出した。この遺伝学的手法により、乳癌に対し最も使用されている抗癌剤の1つであるラパチニブの有用性が向上した。

「BCICsを標的とする有効な方法はなく、特に再発した乳癌患者で早急に必要とされる」とMDアンダーソンの分子細胞腫瘍学部門長、基礎研究所副所長兼教授であり、統括著者のMien-Chie Hung博士は述べた。「この研究は、再発および薬剤耐性を最小化する、乳癌幹細胞に対する潜在的な治療方法を示した。

特異的デリバリーシステムは細胞を標的とする
遺伝子治療は、MDアンダーソンで開発された万能な発現ベクター、略してVISAと呼ばれる画期的なデリバリーシステムであり、乳癌細胞内に直接取り込まれる。VISAには、プロモーターと呼ばれる標的薬剤、標的組織で遺伝子発現を亢進する2つの成分および癌細胞を殺すことで知られるBikDDと呼ばれるBik変異遺伝子のペイロードが含まれる。これはすべてリポソームと呼ばれる球状の脂質膜で封入され、静脈内投与される。

このシステムは、膵臓癌、肺癌、肝臓癌および卵巣癌の前臨床モデルにうまく適用され、MDアンダーソンの臨床研究者らは、膵臓癌を対象とする第1相臨床試験を準備している。

幹細胞はしばしば治療を妨げる
「化学療法および放射線療法にしばしば抵抗性を示す乳癌幹細胞は、乳癌治療の大きな障害となっています」とHung博士は言う。治療後にこれらの細胞のいずれかが残っていると、新しい癌が形成されることが多い。タイケルブ®として市販されているラパチニブは幹細胞数を一定にすることが出来るが、幹細胞を減らすために利用できる薬剤はない。

Bcl-2タンパクファミリー、特にBcl-2、Bcl-xLおよびMcl-1サブタイプは、乳癌細胞の増殖および治療抵抗性に必要不可欠である。これらの3種のタンパクが過剰に存在すると予後不良となり、パクリタキセル、ドキソルビシンおよびシスプラチンと同様にラパチニブを含む化学療法に耐性となる。

この研究は、Bcl-2タンパクが乳癌幹細胞の生存を助長し、そして治療に対する抵抗性および再発の可能性をもたらすことを示した。しかし、BikDDを送達するためのVISAを用いることにより、3種の重要なBcl-2タンパクを阻害し、幹細胞を消失させる。

VISA-クローディン4-BikDDは腫瘍量を減少する
乳癌細胞内でBikDDを選択的に発現させるための標的薬剤として、乳癌で過剰発現しているタンパクであるクローディン4を含むVISAを、研究者らは操作した。この一連の操作により、3種のBcl-2タンパクを不活化させ、癌細胞の自己破壊を引き起こした。VISAはBikDDを癌細胞に集中させるため、正常細胞は影響を受けなかった。

VISA-クローディン4-BikDDを用いて治療したマウスは、対照としたマウスと比較して腫瘍体積が75%まで減少した。

研究者らは、さらにVISA-クローディン4-BikDDと、サイトメガロウイルス(CMV)由来の非特異的で強力なプロモーターで封入されたBikDDを比較した。いずれも腫瘍量が減少し、マウスの生存期間が延長したが、VISA-クローディン4-BikDDを投与されたマウスの腫瘍体積は、CMV-BikDDを投与されたマウスの半分であった。かなりの高用量を用いた安全性試験で、CMV-BikDDを投与されたマウスの60%が3日後に生存していたのに対し、VISA-クローディン4-BikDDを投与されたすべてのマウスは、14日間の安全性試験期間中、生存していた。

細胞株の実験で、CMV-BikDDはまた正常細胞に侵入し破壊したが、VISA-クローディン4-BikDDではなかった。

標的薬剤はラパチニブや他の薬剤を活性化する
3種のBcl-2タンパクが別々に阻害されず、すべて阻害された時に、BikDDはHER2陽性乳癌細胞をラパチニブに対してより感受性を高める。HER2陽性乳癌は、特に悪性度が高くヒト上皮成長因子を過剰に産生し、乳癌の約20%を占める。また、BikDDによりEGFR+(上皮成長因子受容体陽性)乳癌細胞はラパチニブに、数種の他の乳癌細胞株はパクリタキセルに感受性となった。

次の開発への移行
この方法は乳癌、特に再発乳癌の治療に有望であるとHung博士は述べた。

「VISA-クローディン4-BikDD遺伝子治療は、乳癌増殖を阻害するための有効な戦略かもしれない」と氏は述べた。「本遺伝子治療は正常細胞に実質的に毒性がなく、複数の乳癌細胞株において強い殺細胞作用と、他の薬剤との相乗作用を示した。

「次の段階は、VISA-クローディン4-BikDDを第1相臨床試験に移行させ、乳癌患者での効果を検証することである。」とHung博士は述べた。

本研究は以下の資金提供を受けている。
National Cancer Institute, including MD Anderson’s Specialized Program in Research Excellence grant, the MD Anderson/China Medical University Hospital Sister Institution Fund, the Breast Cancer Research Foundation, National Breast Cancer Foundation, Inc., Patel Memorial Breast Cancer Research Fund, MD Anderson’s Center for Biological Pathways and NCI Cancer Center Support Grant, and the Taiwan Department of Health Cancer Center Research of ExcellenceGgrant.

Hung博士の共著者は、筆頭著者のJing-Yu Lang, Ph.D., Jennifer Hsu, Ph.D.をはじめ、以下のとおり。Chun-Ju Chang, Ph.D., Qingfei Wang, Ph.D., Xiaoming Xie, Ph.D., Yi Bao, Ph.D., Hirohito Yamaguchi, Ph.D., and Dihua Yu, M.D., Ph.D., Department of Molecular and Cellular Oncology; Funda Meric-Bernstam, M. D., Department of Surgical Oncology; Wendy Woodward, M.D,. Ph.D., Department of Radiation Oncology; and Gabriel Hortobagyi, M.D., Department of Breast Medical Oncology.

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木下秀文 訳
須藤 智久(国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
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原文

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