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転移性・進行大腸癌の初回治療として、オキサリプラチンを含む化学療法とセツキシマブの併用が有効でない可能性

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転移性・進行大腸癌の初回治療として、オキサリプラチンを含む化学療法とセツキシマブの併用が有効でない可能性

Cetuximab Combined with Oxaliplatin-Based Chemotherapy May Not Be Effective First-Line Treatment for Metastatic Colorectal Cancer

(Posted: 08/30/2011) -第3相ランダム化試験で、進行性大腸癌患者にオキサリプラチンとフッ化ピリミジン系薬剤を用いた化学療法に分子標的薬のセツキシマブを併用しても、生存期間および無増悪期間を延長しなかった。この研究結果は2011年6月5日付けLancet誌で報告された。

要約

第3相ランダム化比較試験で、転移性・進行大腸癌患者を対象に、オキサリプラチンとフッ化ピリミジン系薬剤を用いた化学療法に分子標的薬セツキシマブを併用しても、生存期間および無増悪期間を延長しなかった。また、これまでの試験とは対照的に、腫瘍組織中のKRAS遺伝子に変異がみられない患者であっても、セツキシマブによる改善効果は認められなかった。

出典

2011年6月5日付けLancet誌電子版(ジャーナル抄録参照)

背景

10年前まで転移性・進行大腸癌の治療は、5-フルオロウラシル(5FU)とロイコボリン(LV)の組み合わせしかなかった。2000年代に入って間もなく、研究者らは、転移性・進行大腸癌治療に有効な新薬をいくつか特定した。その中には、化学療法薬としてイリノテカン、オキサリプラチンおよびカペシタビン、分子標的薬としてベバシズマブ、セツキシマブなどが含まれる。しかし、転移性・進行大腸癌の治療において、これら新薬をどのように用いるのが最適かは明らかにされていない。

この問題に対処するため、初回治療後に疾患が進行した患者または未治療の患者を対象に、薬剤の単剤使用や様々な組み合わせによる臨床試験が、多数開始されることとなった。そのうちの2試験(CRYSTAL試験、OPUS試験)において、初回治療として化学療法FOLFIRIおよびFOLFOXに、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするモノクローナル抗体セツキシマブを併用したところ、奏効率および無増悪期間が化学療法単独よりも上回った。

しかし、EGFRシグナル伝達経路の一部となる物質を生成するKRAS遺伝子が野生型、すなわち遺伝子変異がないことが後に確認された患者にのみ、セツキシマブが有効であることがわかった。これはKRAS遺伝子変異型を有する場合、EGFRが伝達経路を活性化しようとしまいと(癌細胞)増殖シグナルを発してしまうためと予測される。したがって、EGFRシグナルの阻害は、野生型KRAS遺伝子を有する患者にのみ効果があると考えられる。二次治療としてセツキシマブと化学療法併用を行った複数の試験においても同様の知見が得られている。

試験

未治療の転移性・進行大腸癌患者に対する化学療法とセツキシマブ併用投与の有効性をより大規模な患者集団で検討するため、1,630人の患者を、オキサリプラチン+フッ化ピリミジン系薬剤(カペシタビンまたは5FU+ロイコボリンのいずれか。患者の主治医である癌専門医によって決定される)にセツキシマブを併用する群と併用しない群のいずれかに無作為に割り付けた。治療は、病勢が悪化するか、許容できない副作用が起こるまで継続した。患者の腫瘍の状態は、治療前および治療終了時まで12週間ごとにCTスキャンでモニタリングされた。

患者1,065人から採取した腫瘍の生検サンプルは、EGFRの発現を確認するため、免疫組織化学的検査を行った。またKRAS、BRAFおよび NRAS遺伝子の変異を同定するため、1,316の腫瘍サンプルから単離したDNAを用いて塩基配列決定を行った。KRASと同様に、BRAFおよび NRASもEGFR関連シグナル伝達経路に関与することが知られている。

本試験は、英ウェールズ・カーディフ大学医学部のTimothy S. Maughan医師主導で実施された。

結果

腫瘍組織中のKRAS遺伝子が野生型であった患者に対して、化学療法にセツキシマブを併用しても、全生存率は改善しなかった。生存期間の中央値は、化学療法単独群で17.9カ月、セツキシマブと化学療法併用群で17.0カ月であった。腫瘍組織中のKRAS遺伝子に変異がある患者では、化学療法単独群で14.8カ月、セツキシマブと化学療法併用群で13.6カ月であった。KRAS遺伝子野生型患者において、無増悪期間に関しても改善は認められなかった(無増悪期間の中央値は両群ともに8.6カ月)。

DNA配列解析により、腫瘍組織中の遺伝子変異は、KRAS遺伝子で43%、BRAF遺伝子で8%、NRAS遺伝子で4%の割合で生じていたことが明らかになった。BRAFとNRAS、もしくはBRAFとKRASの両方に変異がみられた患者はいなかった。ただし、11人でKRASとNRASの両方に変異がみられた。

また治療法に関わらず、腫瘍に発現する変異型によって、全生存率が異なることがわかった。生存期間の中央値は、腫瘍組織中にBRAF遺伝子変異のある患者では8.8カ月、NRAS遺伝子変異のある患者では13.8カ月、KRAS遺伝子変異のある患者では14.4カ月であった。また、いずれの遺伝子変異もみられない患者では20.1カ月であった。

オキサリプラチンを含む化学療法とセツキシマブの併用は、患者の生存率を改善させることなく化学療法薬の使用による皮膚刺激および胃腸系の副作用を増加させた。これらの毒性のうちいくつかは、使用されたフッ化ピリミジン系薬剤に特有のものであった。例えば、カペシタビンとセツキシマブの投与を受けた患者では、5FUとセツキシマブを投与された患者よりも下痢、四肢のしびれ感および痛みが増加した。

コメント

今回の第3相試験で、オキサリプラチンを含む化学療法にセツキシマブを併用しても効果が認められないという結果が示されたことは意外であった。OPUS試験ではFOLFOX療法とセツキシマブの併用が、腫瘍組織のKRAS遺伝子野生型患者に効果があることが示されていたからである。本試験の著者らは、どの薬剤をセツキシマブと組み合わせるかが、患者の生存率に重要な影響を与えるのではないかと指摘している。だとすれば、今回の試験で効果が認められなかった原因は、大半の患者で5FUとロイコボリンではなく、カペシタビンを使用したことによる可能性がある。

異なる試験結果が出た理由が何であれ、「一次化学療法で、セツキシマブをオキサリプラチンおよびカペシタビンに併用することは推奨できない」と著者らは述べている。同様に、付随論説で英国ロンドンおよびサリー州Royal Marsden病院に所属するMadeleine Hewish 医師(M.R.C.P.= Member of the Royal College of Physicians)とDavid Cunningham医師は、オキサリプラチンが「セツキシマブと組み合わせる化学療法薬として最適でない」可能性を提示した。CRYSTAL試験の結果から、セツキシマブはイリノテカン、5FUおよびロイコボリンと組み合わせることで腫瘍縮小効果および患者の生存率を改善するかもしれないとしており、これらの組み合わせによる効果を比較するため、さらに試験を実施する必要があると語っている。

NCI癌治療・診断部門のJack Welch医学博士によれば、本試験はいくつかの重要なバイオマーカー(KRAS、BRAFおよびNRAS)に関する理解を深めるものでもあり、転移性・進行大腸癌患者の予後予測因子として利用される可能性を示唆した。将来的には、進行期の患者を対象とした臨床試験では、鍵となる特定のバイオマーカーによる患者の分類がなされるのではないかと付け加えた。

最後に、本試験における患者の生存期間は、OPUS試験を含め、過去に発表された試験より短いものであった。これについて著者らは、試験対象集団および診断時の病期ステージの違いによるものではないかと述べている。病期が進行している患者ほど、生存期間は短い傾向にある。

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濱田  希 訳

野長瀬祥兼(工学/医学)監修
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