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2011/09/20号◆各界のトピック「骨髄異形症候群に関する最先端科学シンポジウム開催」

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2011/09/20号◆各界のトピック「骨髄異形症候群に関する最先端科学シンポジウム開催」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年9月20日号(Volume 8 / Number 18)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 各界のトピック ◇◆◇

骨髄異形症候群に関する最先端科学シンポジウム開催 

米国国立心肺血液研究所(NHLBI)とNCIはこのほど、骨髄異形症候群(MDS)に対する理解を深め、より効果的な治療法の開発促進に有効な研究分野を特定すべく、骨髄異形症候群に関する最先端科学シンポジウムを開催した。

MDSは、患者の骨髄が正常な赤血球または白血球を作ることができず、重度の貧血や感染症を引き起こすまれな症候群である。MDS患者のうち、約30%が最終的に急性骨髄性白血病(AML)へと移行するが、こうした形質転換を起こす遺伝子変化やAMLに移行しない患者におけるMDSの悪化要因となる遺伝子変化は明確に理解されていない。

今回のシンポジウムについて、国立心肺血液研究所の所長代理であるDr. Susan Shurin氏は、新たな治療法の開発に向けMDSの原因となる生物的、環境的な要因の理解を深める「行動への呼びかけ」だと説明した。また多くの国々から参加者が集まったことも、「骨髄異形症候群と骨髄不全全般に関する研究努力が世界的に行われている」ことの表れだと述べた。会議での共通した話題は、この症候群が比較的希少であることから、MDS研究には国際的な協力が不可欠であるということだった。

シンポジウムの講演者らは、現在ある限られた治療法の中で患者をいかに有効に治療するか、MDSの生物学および病態生物学、そしてこの症候群を起こす複雑な遺伝的要因とエピジェネティクス(非遺伝的、後成的)要因など、骨髄異型症候群の分野で理解されていること、されていないことについて説明した。

複雑な疾患

研究者はかなり以前よりMDSが遺伝的に複雑であることを認識していた。骨髄細胞で同一の染色体異常を持つ患者でも、大きく異なる臨床転帰を示すことがある。しかし3、4年前までMDSに関与する遺伝子は、おそらく3つしか判明していなかったとフランスのアビシエンヌ大学病院のDr. Pierre Fenaux氏は述べた。

同氏によれば、この数年、マイクロアレイ法や高性能遺伝子配列決定法の利用により、専門家らは細胞のエピジェネティクスな状態に影響するものも含め、MSDにおける最も一般的な染色体異常でより多くの遺伝子を特定してきたという。

このシンポジウムで発表した研究者らは、MDSのより完全な遺伝的および非遺伝的な特性を知ることで、特定の異常を標的にした新たな治療法を設計し、また予後判断における現行システムを改善することへの期待を表明した。

講演では、現在明確になっていない分野についても取り上げられた。すなわち、癌幹細胞が白血病を引き起こすと想定されているように、MDSは「MDS幹細胞」に起因するのか、また場合によっては骨髄微小環境や免疫システムがMDSを促す可能性があるのか、MDSの発症および進行におけるマイクロRNAの役割、そして特発性のMDSと化学療法薬剤など化学物質への曝露によるMDSの違い(続発性MDSまたは治療誘発性のMDS)などである。

疾患発症と進行の要因であり、それゆえに治療の標的となる細胞的事象は、AMLに移行するMDSと、血球数の減少(血球減少症)に特徴づけられるMDSとの間で異なる可能性もあるとオックスフォード大学のDr. Sten Eirik W. Jacobsen氏は述べた。会議の出席者らは、MDSを異なる疾患を組み合わせた症候群として研究することの重要性を主張した。

研究資金の優先づけ

多くの討議で、重点的な研究資金の投入により効果が見込める分野への言及があった。そうした分野の一つとして、ニューメキシコ大学がんセンター長のDr. Cheryl William氏は、遺伝的研究およびエピジェネティクス研究を行うため、適切な患者同意に基づき、十分な情報のある生物検体および適切な対照用試料を含む高品質な組織バンクの設置が急務だと述べた。同大学でWilliam氏が率いる研究グループは、NCIのTARGET(Therapeutically Applicable Research to Generate Effective Treatments:効果的な治療確立のための治療応用研究の取り組み)イニシアチブで、こうした組織バンクの構築を支援した。

このような資源は、遺伝子変異やエピジェネティクスな変化、骨髄微小環境、そして病気が進行した際の健全な血液を造る幹細胞の運命を含む、MDSの完全な生物学的特性を解明するのに必要だと講演者らは話した。より良質なMDS細胞株とより多くのマウスモデルも、この疾患の基本的なメカニズムを理解するための研究に役立つという。

MDSに見られるすべての遺伝子変異やエピジェネティクスな変化の臨床的意義を、大規模な前向き集団研究により検証する必要があり、それには研究資金と共同作業が必須である。遺伝情報に基づいたMDSの新たな治療法を検討する臨床試験も、新たな治療が有効だと想定される遺伝的特性を持つ患者に限定して登録する必要があるかもしれないと、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Guillermo Garcia-Manero氏は述べた。

また、現在は治療法がほとんどないことから、どのような研究でもその重点は新たな治療に近づくものであるべきだと、多くの研究者が強調した。既存の薬剤は病気の進行を数カ月から数年遅らせるだけで、唯一、同種幹細胞移植(SCT)が根治治療になる可能性があるが、リスクの高い治療法である。MDSの患者のほとんどは70歳以上で他の疾患も抱えているため、SCTが治療の選択肢となることは比較的少ないとGarcia-Manero氏は強調した。

「(今は研究用の)有効なツールがあるので、適切な資源とインフラストラクチャーがあれば、大きな前進を遂げることができると思う」と、ジョンズホプキンス大学のDr. Steven D. Gore氏が締めくくった。

— Sharon Reynolds

【画像下キャプション訳】異常な血小板をつくる骨髄異形症候群患者の骨髄細胞(写真提供:米軍病理学研究所)  《画像原文参照

 

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片瀬 ケイ 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修
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