2009/03/24号◆スポットライト「ラジオ波を利用した焼灼治療法へのアプローチ」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/03/24号◆スポットライト「ラジオ波を利用した焼灼治療法へのアプローチ」

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2009/03/24号◆スポットライト「ラジオ波を利用した焼灼治療法へのアプローチ」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年3月24日号(Volume 6 / Number 6)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

ラジオ波を利用した焼灼治療法へのアプローチ

ラジオ波発生器は、化学療法による不眠とパイ焼き皿、そして一部はホットドッグによって生み出された。それは、やがて1,300マイルも離れた小さな2つの地域の住民の関心を引き、最終的には2つの主要な大学病院の研究室に持ち込まれるに至った。残念なことに、これを発明した男性は、約7年間にわたるB細胞白血病との闘病の末、治療による合併症で5週間前に亡くなった。

元ラジオ局の技術者であり重役でもあったJohn Kanzius氏と同氏が発明し、将来きわめて有効な癌治療の一部になることを期待していたラジオ波(RF)発生器の話は、Discover誌の読者や「60ミニッツ」の視聴者の心を捉えた。現在、Kanzius氏の発明は臨床試験に向けて必要な準備を進めているところである。

「現実的には、われわれにはまだ越えるべき課題や証明すべきことがいくつもあります」とピッツバーグ大学医療センターのDr. David Geller氏とともに本プロジェクトに当初から携わっているテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Steven S. Curley氏は述べた。「しかし、このプロジェクトは非常に有望だと信じていますので、引き続き研究を進めていきます。」

トロイの木馬に加熱

ある夜眠れないでいたKanzius氏は、体の外から癌細胞を攻撃するにはRFが理想的な方法だということに気がついた。低レベルのRFなら健康な組織を害することなく、しかもほんの数分でRF電磁場内の金属を華氏130度まで加熱することができる。そこで、癌細胞内に金属ナノ粒子を注入し、RF波を利用して加熱したらどうかと考えた。

Kanzius氏はフロリダ州サニベルの夏季別荘で、パイ皿を活用して初めてのRF装置を製作し、ペンシルバニア州エリエの自宅のガレージで、アメリカの球場で最も人気のある軽食(ホットドッグ)を用いてその装置の試験を行った。最終的には私費を投じてより精巧なRF発生器を開発し、Geller氏や後にはCurley氏が癌細胞株やモデル動物を用いた研究で使用した。

これらの研究では、ナノ粒子を細胞内に注入し、低レベルのRF波を数分照射した。浸潤細胞内で発生した高熱が「タンパク質を変性させ、脂質二重層を破壊し、細胞内構造や細胞小器官に回復不能な損傷を与える」とCurley氏をはじめとするM.D.アンダーソンの研究者らは最新の論文においてそのように説明した。

前臨床実験は成功したが、まだやるべきことはたくさんあるとGeller氏は強調し、次のように述べた。「試験管内の癌細胞または動物の癌細胞を破壊することと、ヒトの腫瘍を破壊し、癌を消失させることは同じではありません」

標的への到達

ここまでの研究によると、RF波で悪性細胞を焼灼するという方法は、標的薬剤を付着させたナノ粒子を用いてRF波を正確に癌細胞に集束させる手法へと急速に進展していることがわかる。Curley氏率いる研究チームが行った最初の研究では、特定の分子を標的としない単層カーボンナノチューブを使用した。これは当時Curley氏の治療を受けていた患者の一人であり、ナノテクノロジーの研究でノーベル科学賞を受賞し2005年に亡くなったDr. Richard Smalley氏から授かったものである。

現在、Curley氏およびGeller氏の研究チームは共に球状(スフィア)金ナノ粒子を使用した研究を行っている。最近発表された論文によると、Curley氏の研究チームはEGFRを標的とするモノクロナール抗体のセツキシマブ(商品名:アービタックス)を金ナノ粒子に付着させた。

EGFRを過剰発現している膵臓癌および大腸癌の細胞株に金ナノ粒子を注入し、それらをRFの電磁場に一分間暴露したところ、癌細胞の100%近くが死滅したとM.D.アンダーソンチームは報告した。

「われわれはおそらく臨床試験ではセツキシマブを使用しないでしょう。EGFRは多くの健康な組織に高度に発現しているため、健康な組織にかなりの量のナノ粒子が取り込まれ、RF照射されることになります」とCurley氏は述べた。

Geller氏の研究チームは、モデルラットを用いた試験において、RFを使用して肝臓腫瘍を加熱することができると報告した。同研究チームは実験の際、金ナノ粒子をそのままの状態で直接腫瘍に注入した。Curley、Gellerの両氏は、癌細胞にきわめて特異的な分子を発見するために今もなお研究を進めている。

「われわれは、各癌に対する特異的な戦略を提供しなくてはならなくなるでしょう。肝臓癌に対して有効であっても、乳癌や前立腺癌には有効でないかもしれません」とGeller氏は説明した。

今後の展望

このようながん治療方法は、「総じて興味深いもの」だと癌ナノテクノロジーNCI連携(NCI Alliance for Nanotechnology in Cancer)のプログラムディレクターDr. Piotr Grodzinski氏は述べた。「実際、他の研究者も独自のひねりを加えた同様の手法を開発していました」と付け加えた。

たとえば、テキサスに拠点を置くNanospectra Biosciences社は、切除不能頭頚部癌患者に対し近赤外線照射装置を使用して腫瘍内の金ナノ粒子を加熱する第1相臨床試験を行う承認をFDAから取得した。また、ドイツの企業であるMagForce社は交流磁場を利用して磁性ナノ粒子を加熱する装置を開発した。この装置は、ヨーロッパでの数種の癌を対象にした第1/2相試験において検証が行われている。

他の研究者らは別の標的分子(アプタマーと呼ばれるDNAフラグメントや抗体フラグメントである二重特異性抗体)がより効果的にナノ粒子を癌細胞のみに送達できるかどうか研究しているとNCIのナノテクノロジー特性化研究所(Nanotechnology Characterization Laboratory)の研究主幹のDr. Nicholas Panaro氏は述べた。

一方、Therm Med社(Kanzius氏が以前、自身が発明した装置を商品化するために設立した会社)は、大型動物や将来的にはヒトを対象とした試験に対応できるよう、装置のスケールアップを図っている。Geller氏もCurley氏も、研究資金を継続的に獲得することができ、研究が進歩し続ければ、数年以内には初めての臨床試験を開始することができると信じている。

「ジョン(John Kanzius)みたいな人間はなかなかいません。われわれはこの研究を続けることを心から願っています。なぜならそれはジョンがわれわれに望んだことであるからです」とGeller氏は述べた。

—Carmen Phillips

【画像下キャプション訳】金ナノ粒子による治療を受けた膵臓癌の画像。左側の細胞は外部ラジオ波(RF)の照射を2分間受け、原子核が不安定になり細胞内損傷を受けた。右側の細胞はRFの照射を受けておらず原子核および細胞小器官は損傷を受けていない。(画像提供:Dr. Stephen Curley氏) 画像原文参照

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Yuko Watanabe 訳

中村 光宏(医学放射線)監修

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