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2008/02/19号◆特集記事「メラノーマの発現を阻止するタンパク質」
- 2008年2月19日
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2008年2月19日号(Volume 5 / Number 4)
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◇◆◇ 特集記事◇◆◇
メラノーマの発現を阻止するタンパク質
皮膚細胞が単一のタンパク質によって遺伝子損傷を感知し、癌化する前に成長を阻止している可能性があることが報告された。
タンパク質IGFBP7は、遺伝子損傷の状態にある細胞をメラノーマへ進展させずに成長停止の状態または自殺に追い込むといった正常細胞の抗癌メカニズムを制御している。このプロセスを理解することが、本疾患を治療するための新戦略構築につながる可能性がある、と研究者らは語る。
マサチューセッツ医科大学のDr. Michael Green氏らはCell誌2月8日号に知見を発表した。
正常細胞の抗癌反応は癌予防において重要であると考えられているが、時に失敗することがある。その理由を明らかにするため、Dr. Green氏の研究グループは癌化をもたらす変異があるBRAF遺伝子を持つ細胞の中から、メラノーマ予防に関与する遺伝子をゲノム規模でスクリーニングした。
この調査により、有名な腫瘍抑制遺伝子p53を含む17の遺伝子が確認された。
さらに実験を行ったところ、IGFBP7が成長停止に必要かつ十分であることが示された。このタンパク質は、BRAF遺伝子が産生するタンパク質の成長促進シグナルを阻害する負のフィードバック・ループの一部である。
IGFBP7の活性は、BRAF変異のあるほくろでは増大しているが、同じ変異のあるメラノーマ細胞では増大しないと研究者らは語る。遺伝子に傷があるにも関わらず、なぜ大部分のほくろが癌に進行しないのか、これにより説明可能である。
「IGFBP7が発現している場合、ほくろは単なるほくろのままであるが、メラノーマ細胞ではこのタンパク質が欠失しており抗癌反応が正常に行われなくなるのである」とDr. Green氏は語る。
マウスの実験で、IGFBP7はヒト由来のBRAF変異メラノーマのある腫瘍細胞に対し抗腫瘍効果を有することが示された。しかしこのタンパク質は、正常BRAF遺伝子を含む腫瘍細胞に対しては効果がないか、またはごくわずかであるようだ。
すばらしい抗腫瘍効果がヒトでもみられるかは不明であるが、本知見が癌に対する治療戦略として、増大や老化停止をもたらす可能性を示している、と論説欄にある。
「細胞の老化を活性あるいは抑止する変異は、ヒトのその他の悪性腫瘍の進行に関しても、間違いなく極めて重要なことであろう」とコールドスプリングハーバー研究所のDr. Yuchen Chien氏とDr. Scott W. Lowe氏は記している。
—Edward R. Winstead
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Okura 訳
九鬼 貴美 (腎臓内科)監修
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