2008/02/19号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/02/19号◆癌研究ハイライト

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2008/02/19号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年2月19日号(Volume 5 / Number 4)
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

骨肉腫に対する試験薬により全生存率が改善

スローンケタリング記念がんセンターのDr. Paul A. Meyers氏らの報告によると、化学療法と併用で試験薬mifamurtide(L-MTP-PE)投与を受けた骨肉腫患者では、化学療法のみを受けていた患者よりも良好な効果が得られた。骨肉腫は、骨に発生する稀な癌ではあるが、死に至る場合が多い。本疾患の罹患者は通常子供や若年青年であるが、過去20年間に新しい治療法は導入されていない。

Children’s Oncology Group(COG)臨床試験共同グループが実施した本試験は、骨肉腫を対象とした、これまでで最も大規模なランダム化最終相試験であり、非転移性骨肉腫の新規患者662人を組み入れた。

6年間追跡調査したところ、全生存率はmifamurtide+化学療法群で78%、化学療法単独群で70%であった。Meyers氏らは、Journal of Clinical Oncology誌2月1日号に「これは、死亡リスクがほぼ3分の1低下したことを示す」と述べている。

NCIが資金提供した本試験の第二の目的は、この試験で使用した3種の化学療法剤(シスプラチンドキソルビシン、メトトレキセート)とイホスファミドの併用を評価することであった。本試験では、同薬を併用しても、患者の無イベント生存率および全生存率は改善されなかった。

Mifamurtideは試験薬として臨床試験を介してのみ入手できる。2006年、同薬の製造会社であるIDM Pharma社は骨肉腫治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けようとした。ただし、FDAに追加情報を要求した。本年、同社は本疾患における全生存率のデータを新たに提出する予定である。

一部の前立腺癌では、治療せず経過観察のみを行うことのリスクは低い

ニュージャージー癌研究所のDr. Grace Lu-Yao氏らが先週発表した報告によると、局所前立腺癌を伴う高齢男性のうち、当初からは治療を行わない人の大多数は前立腺癌以外の原因で死亡するとみられる。本所見は、治療を要するまでの積極的な経過観察(慎重な経過観察)が一部の患者にとっては初期段階の疾患に対する妥当な対応であるとの見解を裏付けるものである。

Lu-Yao氏らはNCIのSEERプログラムのデータを用いて、前立腺特異抗原(PSA)を用いたスクリーニング検査が増加した時代に治療よりも積極的な経過観察を選択した男性9,000人を対象に調査を行った。

10年後、前立腺癌を伴う男性のうち同疾患が原因で死亡したのは、低~中グレードの場合で3~7%、高グレードの場合で23%であった。対象となった男性らは1992~2002年に診断を受け、診断後6カ月間に治療を受けなかった。半数は75歳以上であった。

同疾患に対して最終的に治療を受けた約2,600人の男性のうち、約半数が10年以上の間治療を遅らせた。Lu-Yao氏は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)および他の研究グループが資金提供してサンフランシスコで初めて開催された泌尿生殖器癌シンポジウムにて本結果を発表した。

スクリーニング検査で発見される前立腺癌は緩徐に進行する傾向にあるため、高齢男性は同疾患を持ったまま、それ以外の原因で死亡することが多い。さらに、前立腺癌に対するあらゆる治療法はリスクを伴い、尿便失禁、勃起不能などを起こす可能性もある。

同会議にて、ミシガン大学のDr. Howard Sandler氏は、「本試験は高齢男性の局所前立腺癌(特に低グレードの場合)に対する積極的な経過観察を支持するさらなる裏付けとなった」と述べた。

小さな腎腫瘍に対する腎部分切除術は十分に施行されていない

ニューヨーク大学医学部の研究者らの報告によると、新規の小さな腎腫瘍を治療するための腎部分切除術の施術頻度は相当低い。

過去の試験結果から、腎部分切除術(小さな腫瘍[通常4cm以下]のある腎臓の一部を切除するのみ)には腎臓の全摘出(根治的腎摘除術)と同等の効果があること、および慢性腎疾患などの重篤な副作用の予防となる可能性が示された。それにもかかわらず、先週のASCO 泌尿生殖器癌シンポジウムで報告されたのは、腎部分切除術が新規の小型腫瘍を伴う患者5人に対して1人にしか行われていないということであった。

Dr. William Huang(泌尿器腫瘍学助教 )らは本試験を実施するため、NCIのSEERプログラムのデータを解析した。同データには、1995~2002年に小型腎腫瘍の治療を受けた患者3,000名以上が含まれている。記者会見におけるHuang氏の説明によると、腎腫瘍の罹患率は過去数十年間着実に上昇している。最も大きな理由は、その他の疾病で画像検査を受けている間にこれらの小型腫瘍が偶然検出されるためである。

同研究チームは、小型腎腫瘍を有する患者で根治的腎摘除術を受けた2,500人以上と腎部分切除術を受けた556人との間で異なる術前因子を特定した。腎部分切除術を受けた患者では、若齢者、男性の割合が多く、また試験に参加した期間の終わりにかけて治療を受けた割合が高い。Huang氏によると、この結果は、小型腫瘍を有する患者のうちより多くが、腎部分切除術を受ける方向に移行し始めたことを示唆している。女性、高齢者、および脳血管疾患患者では、腎部分切除術を受ける割合は低い。

Huang氏は結論として、「多くの新規腎腫瘍患者にとって、腎部分切除術は選択肢の1つである。また、腎腫瘍を有する患者はその他の併存疾患に罹患している場合が多いため、同術式は実際、より良い選択肢であるかもしれない」と述べている。

前立腺癌遺伝子の新たな手がかりが発見

ゲノムスキャンの新たな手法により、前立腺癌と新たな別の染色体領域と本疾患との関連性が発見され、さらに、以前報告された8番および17番染色体との関連性も確認された。ゲノム規模の連関に関する3件の研究結果はNature Geneticsオンライン版に今月発表され、前立腺癌の遺伝的性質の複雑性が強調されている。

NCIのCGEMS(Cancer Genetic Marker of Susceptibility、癌体質に関する遺伝子マーカー)イニシアチブによる1つ目の試験では、前立腺癌リスクの中程度な増加と関連する7番、10番、および11番染色体の領域が特定された。NCIの癌疫学・遺伝子学研究部門のDr. Stephen Chanock氏らは、その他に9つの「可能性が示唆される」関連性も特定し、また以前報告された領域についても確認した。

全体としては、研究者らは、「本試験では、前立腺癌の遺伝性に影響を与える遺伝的因子の展望を確認し、さらに大幅にその範囲を拡張した」と述べている。本試験で候補として挙げられた領域の約20%が、5番および10番染色体上に位置する。これらの染色体には、前立腺癌感受性を示す領域が複数含まれている可能性がある、と研究者らは指摘している。

本研究チームは、数千人の前立腺癌男性および非罹患男性における約27,000個の単一塩基多型(SNP)を分析した。SNPはゲノム上の可変部位であり、DNAの1対のみが個人間で異なると考えられている。この変異は、危険因子となる可能性を伴う領域のマーカーとなりうる。

本領域における感受性遺伝子はまだ特定されていないが、いくつかの候補が報告されている。例えば、10番染色体領域の一部にMSMB遺伝子が含まれているが、同遺伝子は精液の成分を産生することから、前立腺癌のバイオマーカーとなり得る。また、7番染色体領域は、子宮内膜癌と関連する遺伝子JAZF 1の近くに位置する。

2つ目の試験では、英国サットンにある癌研究所のDr. Rosalind Eeles氏らが、3番、6番、7番、10番、11番、19番、およびX染色体上にある前立腺癌関連領域を7箇所特定した。これらの領域のいくつかには、本疾患と関連している可能性を有する遺伝子(MSMBなど)が含まれている。

同研究者らは、「この試験結果は、前立腺癌は遺伝子的に複雑であることの確証となり、また、前立腺癌の遺伝子的構造の理解に役立つ」と述べている。

アイスランドにあるdeCODE Genetics社のDr. Julius Gudmundsson氏らが報告した3つ目の試験では、2番およびX染色体上での関連性が特定された。同氏らによると、2番染色体上の変異は、より悪性度の高い前立腺癌と有意に強い関連性を示す。

一部の自己免疫疾患におけるNHL発症リスクが明らかに

Blood誌2月8日号オンライン版の発表によれば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、特にある種のNHL亜型の発症リスクは、特定の自己免疫疾患罹患歴のあるものにおいて有意に高いことが確認されたという。

自己免疫疾患はNHLの一般のリスク因子として知られているが、特定のNHL亜型に対する影響を大規模に評価した研究はない。NCIが先導する国際リンパ腫疫学協会(InterLymph)の研究者らは、欧州、北米、オーストラリアの12の症例対象研究から約3万人にのぼる症例データを蓄積し、解析した。

最も強い関連性は、シェーグレン症候群とのあいだに確認され、同症候群によるNHLリスクはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫のリスク上昇も含めて全体で6.5倍、NHL亜型の耳下腺辺縁帯リンパ腫のリスクは1000倍高いことが示された。

全身性エリテマトーデス(SLE)や溶血性貧血患者のNHLリスク上昇はより低いものの依然として有意差があり、セリアック病や乾癬患者ではT細胞由来のリンパ腫のリスクが有意に上昇した。しかし炎症性腸疾患や1型糖尿病、サルコイドーシス、悪性貧血、多発性硬化症とNHL(またはその亜型)リスクとの間に関連はなかった。

InterLymphの研究者らは本試験の重要性について次のように語った。「われわれの研究結果は特定の自己免疫疾患に対する一部のNHL亜型の新しい関連パターンを示唆している。シェーグレン症候群およびSLEと、NHL全般との既知の関連性を確認しているだけでなく、これら2つの自己免疫疾患では辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のリスクが増大すること、およびセリアック病や乾癬では特定のT細胞NHL亜型のリスクが増大することを明らかにした」。さらに、「NHL亜型との関連パターンは『リンパ腫発生の手がかりを提供する可能性がある』」と語った。

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斉藤 芳子、Okura 訳
小宮 武文(NCI研究員) 監修

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