2008/02/19号 ◆スポットライト「癌における概日リズムの影響調査」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/02/19号 ◆スポットライト「癌における概日リズムの影響調査」

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2008/02/19号 ◆スポットライト「癌における概日リズムの影響調査」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年2月19日号(Volume 5 / Number 4)
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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

癌における概日リズムの影響調査

地球の24時間自転周期に似たバイオリズムである概日リズム(サーカディアンリズム)がさまざまな方法で癌に影響を与えていることを示す動物実験や臨床試験によるエビデンスが増えている。

いろいろな種類のネズミによる実験では、概日リズムの混乱により様々な癌の発生率が増加することが示されている。また、疫学的調査では、昼夜シフト制で働くために概日リズムが狂った女性の乳癌男性の前立腺癌の発生の上昇が判明した。

30以上の抗癌剤において、投与される時間によって有効性と毒性に50%以上の違いがあることが動物実験で示されている。主に大腸癌患者を対象とした臨床試験では、概日リズムに抗癌剤注射の時間を合わせた場合、抗腫瘍活性が2倍そして忍容性が5倍向上したことがわかった。

少なくとも12の遺伝子が概日リズムの調整に関わっていることが知られている。多くの癌腫で概日遺伝子の欠損や調節異常が確認されている。さらに、癌細胞中のある種の概日遺伝子の過剰発現は細胞の成長や細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)率の増加を抑制することが判明している。

最近まで、概日リズムは視床下部視交叉上核(SCN)として知られる脳内にある「マスター・クロック」に完全に支配されていると考えられていた。しかし実際は、最近の研究では、腫瘍細胞を含むほぼ全ての細胞には独自の「時計」があることが示され、新たな研究の糸口となっている。

1つの興味をそそられる発見は、SCNは主に毎日の明暗サイクルに同調するのに対して、細胞の概日サイクルは食事時間に強く影響されることである。骨肉腫を移植されたマウスでは、夜行性の通常の時間帯である夜間に餌を食べるマウスより、昼間に餌を与えたマウスの方が長生きした。

これまで、癌における概日リズムの役割の解明に貢献してきた2つの研究チームが、NCIからの資金で概日リズム、食物摂取タイミング、カロリー制限、栄養療法と癌予防との関連の可能性を調査することでこの研究をさらに推し進めようとしている。

栄養物質

ニュージャージー州ベルヴィルにあるガーデンステートがんセンターのDr. Jack D. Burton氏らは、これまでに、乳癌のマウスによる実験でセレコキシブの有効性と毒性の両方で24時間周期の変化を示すことを明らかにしている。1日のうちの特定の時間帯では、副作用が増大することなく薬の服用量を2.5倍に増量できた。

Dr. Burton氏のもう1つの研究目的は、癌の治療と予防に栄養物質を用いることである。多くの研究で抗癌剤の使用に関して24時間周期の効果が示されていることから、彼は栄養物質でも同様な効果があるのかもしれないと考えた。

「様々な動物実験で、多くの栄養物質が抗癌効果や化学的予防効果を持つことがわかってきた」と彼は述べる。「しかし、摂取時間に焦点をあてた研究はこれまで行っていなかった」

研究者らは、予備的研究でヒト由来の前立腺癌を移植したマウスにセレニウムとクルクミン(スパイスのターメリックの原料の1つ)を様々な時間に与えた。彼らは投与時間の違いによって腫瘍の増大を抑制する度合いが異なることを発見し、そして、この効果を説明するかもしれない腫瘍マーカーを特定した。

この予備的研究に基づいて、Dr. Burton氏のグループは、セレニウムと緑茶の抽出物を概日ベースで投与をすると化学的予防効果が調節されるかどうかを前立腺癌マウスで判定する大規模研究の資金をNCIより得た。このマウスは徐々に前立腺癌を発症し、それはヒトの疾病プロセスと類似していた。

カロリー制限

化学的に肝臓癌を誘発させた遺伝子導入マウスを用いた研究で、日中の餌のカロリーを制限すると肝臓中の概日リズムが変わること、そして、その混乱パターンは、癌細胞と正常組織では異なることが、モアハウス医科大学(アトランタ)のDr. Alec J. Davidson氏によって以前から示されている。

「私達は肝臓癌細胞の時計が同動物の周辺の正常細胞とは違っていることを示した」と彼は説明する。「因果関係はあるか?そして、時計が狂ったのは、細胞が癌化したからなのか、それとも、最初に時計が狂ったのだろうか?」

他の研究者のこれまでの研究では、カロリー制限食は癌を予防し生命を長くすることが出来たことを示していた。「カロリー制限の明らかな効果は、本当は概日リズムの変化の結果なのではないかと考えた。もしかすると野生では夜行性の動物に対して昼間に餌を与えるという「間違った」時間での餌やりのためかもしれない。それが、他の部分ではなく動物の腫瘍に対してより多くの悪影響を及ぼすような不自然な状態をつくったのかもしれない」

Dr. Davidson氏らは現在、前立腺癌のマウスを使ってこの仮定をテストするNCI支援の研究を行っている。「私達は、細胞の時計を変化させる多くの可能性の1つとして、昼間の餌やりを制限し、概日タイミングが癌の成長の加速あるいは抑制をコントロールしているのかどうかを探っている」と彼は語る。

「新薬開発の推進は妥当であり、確固たる必要性があるが、新旧薬剤にけるタイミングの効果は、将来の治療の前進にとって等しく重要であるかもしれないことをこの研究結果は示しており、この研究は重要である」とNCIの癌代替医療室長であるDr. Jeff White氏は記した。

— Eleanor Mayfield

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Nogawa 訳
林 正樹 (血液・腫瘍科)  監修
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