2008/02/05号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/02/05号◆癌研究ハイライト

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2008/02/05号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年2月05日号(Volume 5 / Number 3)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

ソラフェニブ、高血圧症リスクを高める

腫瘍血管の増殖または血管新生を標的とした抗癌剤ソラフェニブ(ネクサバール)の標準的な臨床投与量を受けた患者は高血圧症の発症率が有意に上昇すると、Lancet Oncology誌オンライン版1月24日号掲載のメタ分析で報告された。

スニチニブ(スーテント)などの他の標的薬剤や抗血管新生剤の使用で高血圧症の発症リスクが高まることがこれまでの研究でわかっている。ソラフェニブも高血圧症やそれによる心臓発作、他の重篤な心疾患事象リスクを高めるかどうかを調べるため、FDA に承認されている現行のソラフェニブ開始用量である1日2回400mg を投与した患者の高血圧症データを含む3つの論文と6 つの学会報告による臨床試験データが用いられた。

これら9 つの研究で、4,599 名の患者が分析され、うち3,567 名がソラフェニブの投与を受け、他の1,032 名を対照群とした。全グレードの高血圧症に関するデータが7 つの臨床試験に登録された3,363 名の患者から得られた。全グレードの高血圧症の全発症率は、ソラフェニブ投与群の患者で23.4%であった。ソラフェニブの投与を受けた患者は対照群の約6 倍、全グレードにおいて高血圧症を発症しやすかった。

複数の血圧降下剤やソラフェニブの休薬を必要とすることも多い高グレードの高血圧症に関するデータが、9つの試験でソラフェニブの投与を受けた3,567 名の患者から得られた。高グレードの高血圧症の全発症率はこれらの患者で5.7%であった。

「高血圧症とソラフェニブの心血管系副作用には徹底的な市販後調査と報告が必要です。ソラフェニブ誘発性高血圧症のメカニズムと適切な治療法を特定するために今後の研究が必要になるでしょう。」と著者らは結論づけた。「特に、起こりうる薬物相互作用やソラフェニブの有効性を阻害する可能性を最小限にするべく、追加の研究を行い、ソラフェニブと安全に併用できる降圧剤の分類を特定することが必要です。」と彼らは説明した。

マイクロRNA遺伝子に関連した大腸癌の臨床転帰

Journal of the American Medical Association誌1月30日号の研究によると、miR-21 と呼ばれるmicroRNA(マイクロRNA)遺伝子の高発現をもたらす結腸癌は、米国と中国の2 つの患者集団において生存率や治療成績の低さと関係していた。

他のmicroRNA 遺伝子と同様、miR-21 は癌に関与するものを含む複数の遺伝子を制御する短鎖RNA を生成している。本研究結果は、十数の主要な癌において活性の増加を示すこの遺伝子が、有用な生物学的マーカーや治療標的になる可能性があるという見解を裏付ける。

「私たちがこの遺伝子に関心を持つ理由の一つは、この研究結果が他の癌にも影響するかもしれないということです。miR-21 に対する治療はさまざまな癌に対して有効かもしれません。」と本研究を率いた米国国立癌研究所(NCI)癌研究センター(CCR)のDr. Curtis Hamis 氏は述べた。これは予備的な解析結果であり、有力な治療法が見出されるのは何年か先になるかもしれないと彼は注意を促した。

研究者らはまず結腸癌におけるmicroRNA 遺伝子活性のプロファイルを作成し、メリーランド州の84 名の患者の正常細胞とマッチングさせた。そして香港の113 名の患者によって有効性を実証した。最も顕著な発見は、腫瘍中のmiR-21 の高活性と、5-フルオロウラシルをベースとする補助化学療法を受けた患者の生存率や治療成績の低さとが関連しているということであった。各群のmicroRNA 活性は少しずつ異なる技術で評価されたが、この関連性は一致していた。

正常細胞に比べ、結腸腫瘍では、microRNA 遺伝子活性が系統的に変化していることもこの結果では示唆されている。「癌進行過程において、microRNA の発現には、系統的な変化が起きています。」と代表著者のNCI、癌研究センターのDr. Aaron Schetter 氏は述べた。

乳房腫瘍のタンパク質が化学療法のベネフィットを予測できない

2 つの臨床試験においてどの女性が内分泌(抗エストロゲン)療法に化学療法を追加することでベネフィットを得られるかは、乳房腫瘍中のKi-67 タンパク値が高いことでは予測されなかった。細胞増殖と関連しているそのタンパク質は、術後補助化学療法と内分泌療法のベネフィットを得られる可能性のある初期疾患の女性の特定に利用できるかもしれないと示唆する研究もあった。

この見解を検証するため、国際乳癌研究グループのミラノ大学Dr. Giuseppe Viale 氏らは2 つのランダム化試験に参加した患者の腫瘍におけるKi-67 の発現をレトロスペクティブに評価した。各試験で、化学療法後の内分泌療法と、内分泌療法単独とを比較し、リンパ節転移陰性の初期の女性のみが分析された。Ki-67 高発現で化学療法のベネフィットは予測できなかったが、低生存率は予測された。「内分泌療法に化学療法を追加することでベネフィットを得られる内分泌反応性でリンパ節転移陰性の初期の患者を特定するには、他のバイオマーカーが必要でしょう。」と、Journal of the National Cancer Institute (JNCI)誌2 月6 日号で研究者らは結論付けている。

本研究は、Ki-67 の発現などの細胞周期の測定を化学療法に関する決定に用いるべきではないという米国臨床腫瘍学会腫瘍マーカー専門委員会のかねてからの主張を裏付けている。

セントルイスのワシントン大学Dr. Matthew Ellis 氏は付随の論説で、バイオマーカー研究の否定的結果の発表は肯定的な利用を避ける意味で重要であると述べている。「反証があるにもかかわらず長年主流となってしまった間違った仮説に固執することは、科学的、臨床的進展の妨げになるからです。」

世界的なタバコ関連死の脅威が調査で浮き彫りに

13 歳から15 歳の青年層を対象とした世界保険機構(WHO)主導による新しい調査結果によって、2020 年までに毎年予測されるタバコ関連死が驚くほどの数であることがすでに示されているが、この推定は低すぎるかもしれないと疾病対策予防センター(CDC)から報告された。

2020 年までに全世界のタバコ関連の死亡者数は、年間500 万人から倍の年間1000 万人に達すると推測され、これらの死亡の約70%は開発途上国で起こると予想される。

しかし、最新の140 のWHO加盟国と地域の学校を対象とした調査をまとめた国際的な「青年とタバコに関する国際調査(GYTS)」の結果は、状況は前回の調査よりも悪くなっていることを示していると、Dr. Charles W. Warren 氏らは「死亡率と罹患率週間報告」の1月25日号で述べている。

調査結果から判明したことは、成人女性と比較して若年女性の喫煙率が高く、非喫煙者が翌年喫煙してしまう「影響を受ける可能性が高いこと」、そして、受動喫煙による曝露の増加である。

その他の主要な調査結果として、巻きタバコと他のタバコ製品の使用が同程度であること、および多くの回答者が、拒否されることなく店で最近タバコ製品を購入したこと、があげられる。また喫煙している回答者の70%は禁煙に興味を示し、さらに、回答者全体の80%は公共の場での喫煙禁止を支持した。

「この報告の結果は、青年のタバコ消費量を減少させる介入法(例えば、消費税を上げる、メディアによるキャンペーン、地域ぐるみの学校プログラムや地域の介入などによって未成年者がタバコへ触れる機会を減らす)は、広範囲かつ少年少女に焦点を合わせたものであり、喫煙の防止と禁煙を目指したものでなければならないことを示唆している」と著者らは述べている。

抗癌剤の標的の探究がさらに進む

Science 誌2 月1 日号に、沈黙すると癌細胞を脅かす、癌細胞にとって「必要不可欠」な遺伝子を発見するためのゲノム規模の戦略についての2 つの研究が掲載されている。これらの遺伝子は、突然変異や活性の上昇といった癌遺伝子の特徴に欠けている可能性があるが、これらの遺伝子は癌細胞が生き残り、増殖するのに不可欠であり、抗癌剤の標的となる可能性を秘めている。

最初の研究に示されていたアプローチは、ウイルスのNA を分解することによって侵略してくるウイルスを阻止するという細胞が有する自然の防御メカニズムを利用するものである。研究者らは、現在、RNA 干渉として知られているこのメカニズムを、細胞内の遺伝子を標的にしたり沈黙させる手段として利用している。しかし技術的制約により、ゲノム全体でこの種のスクリーニングを行うことは困難である。

ハーバード大学医学部のDr. Stephen J Elledge 氏とコールドスプリングハーバー研究所のDr. Gregory Hannon 氏らは、これまでの6 年間、この制約を乗り切るため研究を続けてきている。進歩の一つとして、研究者らは、ヒトとマウスのゲノムのあらゆる遺伝子を沈黙させることができる短いヘアピン型RNA分子のライブラリーを開発した。また彼らは、細胞から遺伝子を取り除いた時、どの遺伝子が癌細胞に対して害を及ぼすかを同定するために、分子タグ、つまりバーコードを使う方法も構築した。

Science 誌に掲載された2つ目の研究によると、研究者らは、約1 万の短いヘアピン型RNA を用いて、大腸と乳房の腫瘍細胞と正常細胞の数千の遺伝子をスクリーニングした。彼らは、沈黙した時に癌細胞の増殖を阻害するが正常細胞には影響を及ぼさない数十の遺伝子を特定した。研究者らは、この研究結果は予備的なものではあるが有望であると信じている。

このアプローチは、癌ゲノムアトラスや、腫瘍細胞と正常細胞とで異なる遺伝子のカタログを作る他の壮大な取り組みを補完できると彼らは続けた。具体的には、このスクリーニングによって、見落とされてしまうかもしれない、潜在的な治療標的を明らかにすることができるということである。

「抗癌剤の開発において癌遺伝子にのめりこみ過ぎたために、他の多くの抗癌剤の標的を見落としてきたと私は常に感じていた」とDr. Elledge 氏は、腫瘍が特定の発癌遺伝子に依存している現象を参照しながら語る。「癌細胞は、発癌遺伝子ではない多くの遺伝子に依存しているとみられ、発癌遺伝子でなくてもそれらの遺伝子は重要である。私たちはこれを非発癌遺伝子依存と呼んでいる。」

彼のチームはこのアプローチをヒトの全ゲノムに対して適用する準備を始めている。それと同時に、彼らは他の研究者らが多くの異なる癌にこの手法を適用し始めることを期待している。研究手段が開発された今、実験を行うことは比較的費用対効果に優れていると研究者らは述べた。

前立腺癌はホルモンと関連性が無いことが明らかに

国際研究チームの報告によると、18 の前向き試験のオリジナルデータの分析によって、前立腺癌のリスクは血中のある種の循環性ホルモンの濃度によって影響されないことが示唆された。

前立腺癌患者3,886 人と対照群6,438 人を含む試験の統合データの解析結果が、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌1月29日オンライン版に掲載された。長い間疑われていたが明確に立証されずにいたことに反して、ステージやグレードに関係なく前立腺癌のリスクと、種々のアンドロゲンおよびエストロゲンの1 種であるエストラジオールの濃度には関連性がないことが判明した。

さらに、オックスフォード大学のDr. Andrew Roddam 氏とEndogenous Hormones and Prostate Cancer Collaborative Group(内因性ホルモンおよび前立腺癌共同グループ)の研究者らは、「考えられるどのホルモン濃度と前立腺癌リスクのあいだにも相互作用の形跡がない」と報告した。しかし、低グレードで限局した前立腺癌のリスクは性ホルモン結合グロブリン(SHBGs)の循
環濃度に相関して多少減少していた。

「限局性あるいは低悪性度の前立腺癌を促進させる因子は、進行が早く、高悪性度の前立腺癌の促進因子とは全く異なるであろう」とノースカロライナ大学チャペルヒル校のDr. Paul Godley 氏らは付随の論説で述べている。「これらの試験に含まれる多くの癌は限局性で低グレードであったため、多くの試験の統合データによって、進行性で悪性度が高い癌のサブ解析を行うのに十分なサンプルサイズが得られ、そしてホルモンと性ホルモン結合グロブリンの相互作用を検討することが可能となった。」

この研究結果より、「より高度な仮説と新しい試験デザインを開発することに研究努力を集中する時期に来ているのであろう」と論説は結ばれている。これはNIH ロードマップや生物検体保管システムを含む米国国立衛生研究所(NIH)や米国国立癌研究所(NCI)ですでに実施されているプログラムによって促進されるであろう。

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吉田 加奈子、Nogawa 訳
大藪 由利子(生物工学)、島村 義樹(薬学)監修

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