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2008/01/08号◆特集記事「肝臓癌リスクの高い肝硬変患者を遺伝子変異で特定」

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2008/01/08号◆特集記事「肝臓癌リスクの高い肝硬変患者を遺伝子変異で特定」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年1月8日号(Volume 5 / Number 1)

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◇◆◇特集記事
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肝臓癌リスクの高い肝硬変患者を遺伝子変異で特定

マサチューセッツ総合病院の研究者らによると、上皮増殖因子(EGF)遺伝子の一塩基多型(SNP:DNAの特定の塩基が変異したもの)は肝硬変患者の肝細胞癌(HCC)発症率を著しく高める可能性がある。

HCCは、治療が困難であり肝硬変患者における発症が最も一般的である。肝硬変はB型もしくはC型の肝炎ウィルスによる慢性感染症が原因となって起こる場合が多い。Journal of the American Medical Association誌の1月2日号に掲載された今回の試験結果は、強化スクリーニングや、場合によっては化学的予防を受けることで効果が得られる可能性のある一部の患者の同定に役立つかもしれない。

研究者らは、一方または両方のDNAにあるEGF遺伝子における特定のアデニン塩基(A)がグアニン塩基(G)に置換されているEGF 61*G対立遺伝子のSNPに焦点を絞った。細胞や動物を用いた予備研究では、このSNPがEGFタンパク質レベル上昇の一因となり、動物実験によってEGFが肝臓腫瘍形成に関与していることが明らかにされた。

発癌の際に「予備実験のデータから、機能に関わると推察される一つのSNPに焦点を絞ることにしました」と、論文の主著者であるDr.Kenneth Tanabeは説明した。

研究者らは、1999~2006年の間にマサチューセッツ総合病院がんセンターの腫瘍バンクに保管されていた計207例の肝硬変患者における血液もしくは組織のDNAを調べた。これらの患者のうち、59例がHCCを発症した。

一コピーSNP(A/G遺伝子型)をもつ患者がHCCを発症する可能性はA/A遺伝子型の患者の2倍以上であり、二コピーのSNP(G/G遺伝子型)をもつ患者が発症する可能性はA/A遺伝子型の患者の4倍であった。この関係は、年齢、性別、人種、並びに肝硬変の原因および重症度による調整後も依然として顕著であった。研究者らは、G/G遺伝子型の患者の肝臓および血清に、通常よりも高いEGFおよびリン酸化EGF受容体(EGFR)レベルを認めた。

フランスのPaul Brousse病院の共同研究者らにより、バリデーション研究用として1993~2006年の間に確認された白人のアルコール性肝硬変患者121例の遺伝子データが提供された。このうちの44例は後にHCCを発症した。

マサチューセッツ総合病院の対象患者と同様、G/G遺伝子型の患者がHCCを発症する可能性はA/A遺伝子型の患者よりも著しく高く、この場合においてはほぼ3倍であった。

「より多くの対象患者を調べる前向き研究(プロスペクティブ研究)および少数民族に対するこれらの結果の応用」は必要ですと著者らは説明するものの、彼らはHCCのスクリーニングや予防の可能性にも興味があるようだ。

「肝細胞癌のリスク増大に関連する分子マーカーが同定されると、最もリスクの高い対象患者がより明確になるでしょう。そして予防および治療における重要な治療標的も明確になるかもしれません」と、続ける。「今回の結果は、ヒトにおける化学的予防の新たな標的としてEGF-EGF受容体経路を調査する根拠となっています。」

Dr. Tanabeの研究室では、長期使用においても毒性のない化学的予防薬を模索する予備研究が始まっている。「私たちはすでに、臨床利用の可能がある形質転換を抑制する化合物をスクリーニングするために、in vitroの形質転換モデルを用いてEGF-EGFR経路を調べており、同様の動物モデルも作成しています。創薬および薬剤検査のためのプラットフォームの構築は、検証的試験と並行して進めることができました。(今回の試験では)SNPが血清EGFレベルを調節していますが、言うまでもなく、EGFレベルを調節するものは他にも数多く存在しています」と同氏は結んでいる。

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豊 訳
大藪 友利子(生物工学)監修
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