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2008/01/08号◆癌研究ハイライト

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2008/01/08号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年1月8日号(Volume 5 / Number 1)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

スニチニブ、心不全および高血圧との関連性

スニチニブ(スーテント)を服用している患者で、特に冠動脈疾患または心血管リスク因子の既往を有する患者は、高血圧および心不全の徴候などの心血管副作用のモニタリングを行うべきである、と先月号のLancet誌に腫瘍専門医および循環器専門医のチームからの報告が掲載された。その推奨は、消化管間質腫瘍(GIST)の治療にスニチニブを服用している一部の患者に共通する心副作用の根拠に基づくものである。スニチニブは、進行腎細胞癌およびイマチニブ(グリベック)抵抗性となった転移性GISTの治療に対し承認されている。

ハーバード大学医学部のDr. Ming Hui Chen氏らは、第1/2相試験中にダナファーバー癌研究所にて治療を受けた75名のGIST患者のカルテをレトロスペクティブに分析した。合計で11%の患者で心血管障害がみられ、2名の患者は心臓発作、6名は心不全を起こしていた。さらに、患者の47%では治療の初回コース中に収縮期および拡張期の高血圧を発現し、20%では心機能低下がみられた。

高血圧を含む多くの心臓障害は管理可能であり、心不全を有する患者の多くはスニチニブ療法を再開した。冠動脈疾患や高血圧の既往は心血管イベントの予測因子であった。

心副作用は、トラスツズマブ(ハーセプチン)およびベバシズマブ(アバスチン)などのその他の成功した分子標的抗癌剤についても報告されている。その試験は、腫瘍専門医および循環器専門医が新しい標的薬剤の心副作用を特定し、治療を通じて心臓の健康管理を行うため共同作業が必要であるとする見解を支持する。

「心臓に注意を払う一方で癌を治療するためのパラダイムは残る。」と、成人癌患者の心臓管理を専門とする循環器専門医のDr. Chen氏は言う。同氏は、この試験における心毒性は第3相試験では認められてはいないものの、その患者は現在スニチニブで治療されている一般母集団における患者により類似している可能性があると述べた。

1月3日号のNew England Journal of Medicine誌に掲載された報告では、スニチニブでの治療中に急激な著しい血圧上昇を同様に発現した14人の転移性腎細胞癌患者について報告されている。その結果は、家庭での血圧測定により判明したものであり、定期的な外来診療時には見逃されていた。

「急激かつ高値の血圧上昇は、スニチニブで治療される患者に対して副作用として予測すべきであるとわれわれの試験は示唆している。」とパリ Hôpital Européen Georges Pompidouの著者らは結論づけている。

腫瘍専門医は感情表現スキルのトレーニングの必要がある

腫瘍の専門家ら(腫瘍専門医)は、患者が不安や否定的感情を表現するよう促し、親身になってこれらの不安に応えるためのさらなるトレーニングの必要があることを推奨した研究が2007年12月20日発行のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

その報告では、デューク大学、Durham Veterans Affairs 医療センター、およびピッツバーグ大学の3施設で実施されたNCI助成 Studying Communication in Oncologist-Patient Encounters project(腫瘍専門医と患者の接触におけるコミュニケーションを研究する(SCOPE)プロジェクト)からのデータを発表している。51名の腫瘍専門医と270名の進行癌患者との間で交わされた398の診療会話のデータを基にしている。その研究では、腫瘍専門医は患者との外来診察中(外来診察の37%)に共感する機会が少なく、親身な言葉で応える頻度が低い(1回につき22%のみ)ことが明らかになった。

癌ケアにおいて親身な受け答えは重要である。なぜなら、「患者は、不安と抑うつが少なくなり、また大きな満足や治療の継続へと繋がる」からである、と研究者らは述べた。その研究では、女性患者は女性腫瘍専門医に対し苦痛の感情を表す傾向が高いことがわかった。加えて、若い腫瘍専門医、および自身のオリエンテーションを技術より社会情緒によると自ら評価する腫瘍専門医は親身な言葉で応じる傾向が高かった。

「腫瘍専門医および患者の両者は、患者が感情を表現するよう導く連携を築く必要がある。」と研究者らは示唆する。腫瘍専門医は患者の感情への対応に高いレベルの自信を表わしているとはいえ、感情を識別し、患者の不安に対していかに応対するかを身につけるためには、今以上のトレーニングを受ける必要がある。「共感を示した機会の多くが間接的であったため、腫瘍専門医の適切な応答ができるよう、自分たちの感情をより直接的に表現する方法を学べれば、患者はさらに高い満足感を得るだろう。」と著者らは述べた。

非浸潤性乳管癌(DCIS)の経過に関連するバイオマーカー

乳管上皮内膜に異型細胞が見受けられる非浸潤性乳管癌(DCIS)の治療は、通常、腫瘤摘出手術とその後の放射線治療や化学療法、または放射線治療と化学療法の併用、あるいは経過観察である。これらの治療をおこなったほとんどの女性に再発は起こらないとみられるが、15~30%の女性には10年以内に新たな腫瘍が見つかり、そのうちの半数は浸潤性乳癌である。DCISがどちらの結果になるかを判定するため、臨床医に役立つ、カリフォルニア大学サンフランシスコ校とベイエリア乳癌SPOREプログラム(Bay Area Breast Cancer Specialized Program of Research Excellence)の研究者らは浸潤度に関連するバイオマーカを特定した。彼らの研究結果はCancer Cell誌2007年11月12号に掲載された。

研究者らは、DCISと診断されその後10年(180ヶ月)以上追跡調査された70人の切除検体を用いて、ストレスによって誘導された老化あるいは増殖に関連したいくつかのマーカを調べた。彼らは、DCISが進行しなかった女性とDCISが進行した女性のこれらのマーカーの分析結果を比較した。

結果は、増殖マーカーであるKi67を使って識別された増殖細胞を含んだサンプルでは、ストレスで活性化されるp16およびCOX-2タンパク質の過剰発現が細胞のストレスに対する異常な反応を反映し、初めてDCISと診断されてから10年以内の腫瘍イベントを予測することを示していた。(p16やCOX-2の状態に関係なく)Ki67発現が少ないことは、通常、予後が良いことを示している。この他の発見には、HER-2陽性腫瘍の一部における、COX-2発現の 転写後制御 などがある。

著者らは、実際に浸潤癌となる数年前の防止機会として、組織がp16やRbシグナルのストレス活性化や脱制御を示した場合には、これは「侵襲病巣が進行する前に分析することができる基底細胞がんに類似した発癌メカニズムを明らかにするかもしれない」と結論づける。

高齢の乳癌患者はフォローアップを順守しない傾向がある

最近の2つの調査により、より再発の可能性があると思われる高齢の乳癌患者は、推奨されるフォローアップのマンモグラフィを受けたり処方された薬の服用を順守しないケースが多いことがなった。乳癌の治療とフォローアップのガイドラインを導く臨床試験では、適格基準あるいは合併状態などの理由により高齢の女性は通常少ない。しかし、65歳以上の乳癌サバイバーに焦点をあてた最近の2つの地域地域密着型の調査では、このグループの行動とその結果に関する特定の質問を扱った。この調査には、NCI支援HMO Cancer Research Network(CRN)を通じた共同の保険制度の参加者が用いられた。

Journal of General Internal Medicine誌2007年12月1日号のオンライン版に掲載された最初の調査は、ステージ2あるいはそれより早期の乳癌と診断された経過観察中の女性のマンモグラフィを調査した。1762人の女性のほとんどは70歳以上であった。4年の追跡調査の結果、ステージ2と診断され乳房温存手術だが放射線治療をおこなっていない再発リスクが最も高い女性において、推奨されるマンモグラフィー検査の受診が最小となりがちであった。この傾向に関連する他の要因には80歳以上と非白人が含まれた。

2つ目の調査は、術後補助療法として5年間のタモキシフェン服用の女性961人を検討したもので、Journal of Clinical Oncology誌2007年12月10日号の発刊に先立って発表された。この結果によると、これらの女性の49%はこの5年間にタモキシフェンの服用を中止していた。75歳以上で同様に乳房温存手術後に放射線治療を行わずエストロゲン受容体の発現状態不明の女性が最もタモキシフェンの服用中止をしているようであった。最初の年に服用中止をする最も多い理由はこの薬の副作用に関連していた。

どちらの論文でも、著者らは、推奨される術後治療を順守しない場合のリスクを患者が理解することによって、臨床医がこの患者集団の対処を調整することが可能かもしれないと記している。

共同研究機会とNCIのCRN資金に付いての詳細情報は http://crn.cancer.gov/about/work.html で見ることが出来る。

早期大腸癌における術後補助化学療法の有利性が試験で示される

ステージ2の結腸直腸癌患者に術後補助化学療法の真価を判断するために計画された欧州の大規模臨床試験によると、患者は生存と再発リスクの両方において「わずかではあるが、確固たる恩恵」を得ることが判明したと英国のバーミンガム大学の研究者らは語る。

Dr. Richard Gray氏によって率いられたThe QUick And Simple And Reliable (QUASAR)臨床試験共同グループは、参加患者3,239人における中央値5.5年の追跡調査結果をLancet誌2007年12月15日号に発表した。それによると、化学療法群の患者は経過観察群に比べて相対死亡率が18%減少した。これは、この集団の死亡率は約20%であり、5年間で完全に3.6%の低下がもたらされたことを意味する。22%の再発リスク減少のほとんどが最初の2年間に起こり、その後は横ばい状態であった。

「化学療法は、再発と死亡を遅らせるというより一部の再発と死亡を防止しているとみられる。これにより、特に若年層患者にとっては、実質的な生存延長を得られることとなる」と著者は述べている。

これらの患者集団に関するより良い情報は、フルオロウラシルとオキサリプラチンの併用療法、フルオロピリミジン療法、あるいは経過観察という現在用いられている3つの選択肢のリスク/ベネフィット比率を患者と医師が評価するのに役立つかもしれないと彼らは記している。これらのより新しい薬や併用方法は、QUASAR試験で使用された薬に代わり、広く用いられている。

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湖月 みき、Nogawa 訳
小宮 武文(NCI研究員)監修

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