2008/01/08号◆クローズアップ「患者にやさしい手術へ:頭頸部癌外科の進歩」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/01/08号◆クローズアップ「患者にやさしい手術へ:頭頸部癌外科の進歩」

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2008/01/08号◆クローズアップ「患者にやさしい手術へ:頭頸部癌外科の進歩」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年1月8日号(Volume 5 / Number 1)
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◇◆◇クローズアップ◇◆◇

患者にやさしい手術へ:頭頸部癌外科の進歩

癌の治療には化学療法や放射線療法、分子標的療法が登場する以前から手術療法があった。癌組織の物理的な切除が現在もほとんどのタイプの癌治療の基礎であることに変わりはない。

しかし、体にメスを入れることにはさまざまなリスクが伴い、傷痕が残る。癌の全身的治療に取り組む外科医とともに、侵襲を最小限にとどめ、最大限の効果をめざし、損傷組織の再建術の改良を図ることで外科腫瘍学の成績を向上させようと研究を続けるアカデミック・サージョン(※臨床に加え研究活動も行う外科医)らがいる。

小規模になる手術

実験的外科療法によって重点的に取り組まれてきた領域のひとつが頭頸部である。頭頸部癌の手術療法は、1970年代、この領域の脆弱な構造物周辺の手術を可能にした手技の開発により初めて大きく前進した。しかしながら、こうした手技は侵襲度のきわめて高いものであった。

たとえば頭蓋底に発生した腫瘍の場合、「従来は・・顔面を切開し、場合によっては顔面の一部を取り除いて腫瘍に到達するか、または頭蓋骨を開き、脳をわきに押しやりながら上から入っていく必要がありました」と、米国国立聴覚・伝達障害研究所(National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)頭頸部外科部長のDr. Carter Van Waes氏は説明する。「この手技は多くの患者を治癒し、あるいは・・苦痛を和らげるという点では有効でしたが、機能面および審美面での転帰は期待されたレベルには及びませんでした」

次の外科的革命は、頭頸部領域の手術に適用された侵襲度のきわめて低い内視鏡法の出現により1980年代~90年代に起こった。内視鏡により、外科医は鼻や口など体にもともとある開口部や比較的小さな切開部分から手術ができるようになり、手術合併症を減らす可能性を秘めるものであった。

最近、SOG臨床試験共同グループが初期の喉頭癌患者に対して第2相臨床試験を実施して、経口的内視鏡手術を評価した。この試験には標準治療である開放手術の対照群を設けなかったが、と試験の主任研究者であるオハイオ州立大学のDr. David Schuller氏は語る。「主観的に見て生存率に変化は全く認められなかったものの、合併症が減少、入院期間が短縮し、出血量も少なかったのは確かで、われわれは慎重ながらも楽観的な見通しをもっています」

「今後もさまざまな外科的手技を用いて腫瘍を減量すると同時に合併症も抑えることができれば、患者は速やかに非外科的な術後療法に移ることができると期待しています」と氏は続ける。研究者らは現在、頭頸部領域でロボット補助下の内視鏡的手術の実験を行なっており、実現の可能性があるかどうかや、小さな生理学的空間で手術の精度が向上するかどうかを評価している。

もとどおりにつなぎ合わせる

頭頸部癌手術を受ける患者にきわめて重要な問題となるのは、手術によって発声、嚥下、咀嚼、呼吸機能および外見などのQOLがどのように影響を受けるかということである。

幸いに、頭頸部領域の再建外科も過去20年で大きな進歩を遂げている。現在の組織移植法が可能になるまでは、切除後の欠損部位を閉じ、感染を予防するために、皮膚および血管柄のついていない骨移植法が用いられていた。しかし、このような手技は正常の外見を再建するには不十分で、骨移植では骨が体に再吸収されることも多かった。

再建外科は、有茎(つながった)皮弁移植術が開発されたことで重要な進歩を遂げた。この手技では、隣接する構造物(胸筋など)から組織を切り取り、組織の血流を維持したまま切除術により欠損が生じた部位に組織を移動させることができる。

血行のない組織移植に比べるときわめて大きな進歩であったものの、この手技は隣接する組織からの移植に限られる。加えて、皮弁が採取部に付着しているために緊張がかかったり、移植先に放射線治療による傷害がある場合などはとくに治癒が遅延する可能性がある。こうした問題は遊離組織移植術の開発により解決された。この手技では微小血管吻合技術をもつ外科医が体のほかの部位から、付随する血管とともに筋肉や骨、あるいはその両者を切り取り、移植部位で血管を吻合する。

「微小血管吻合技術を会得する頭頸部外科医が増えていますが、この手技を施行できる外科医が十分な数に達し、こうした再建術の効果が評価され、多くの症例でその優位性が示されたときにこそ、標準[治療]として真に認められることになると思います」とミシガン大学頭頸部腫瘍外科部長のDr. Theodoros Teknos氏は解説する。

遊離皮弁移植では歯科および顔面の補綴法も取り入れて、人工の耳や目、歯などを用いることで患者のより自然な外見を再建できる。

将来的には、「再建術の次の大きな段階は細胞組織工学でしょう」とDr. Teknos氏は語る。遊離皮弁移植術で筋肉や骨を採取するために起きることのある採取部位の損傷を避け、個々の患者に合わせた再建を実施するために、研究者らは成人幹細胞、タンパク質または遺伝子治療を用いてカスタムメイドの骨の培養を実験している。

最近ではドイツの研究者らが、広範囲にわたる腫瘍の切除術を受けた男性の新しい顎骨を培養することに成功した。研究者らはカスタムメイドのメッシュケージに骨塩ブロックと造血幹細胞を含む骨髄および骨形成タンパク質を入れ、これを患者の背筋に移植して健康な血液が供給される患者にぴったりの新しい骨を培養し、顎に移植することに成功した。

切除術および再建術の未来の進歩のために、関係するすべての専門諸分野の参加が今後も不可欠であろう。「治療分野だけでなくリハビリやQOL分野などあらゆる学問分野の指導者を国中から集めること、それこそが臨床研究の生産性を高めることになると思います」とDr. Schuller氏は締めくくる。

—Edward R. Winstead

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中村 訳
榎本 裕(泌尿器科) 監修
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