2007/12/04号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/12/04号◆癌研究ハイライト

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2007/12/04号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年12月04日号(Volume 4 / Number 31)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

肥満男性のPSA値が低い理由が明らかに

多施設共同でレトロスペクティブ試験を実施している北米の研究者らが、おそらくふたつの異常の根拠であると思われるものを発見した。その異常とは(1)BMI(body mass index:肥満指数)が高い男性は前立腺特異抗原(PSA)値が低い傾向にあるという広く認められる所見、および(2)肥満と悪性度の強い前立腺癌に相関関係を認めた最近の試験結果である。

新しい試験結果から導き出された結論によれば、決定的な要因は「血液希釈」にあるとしている。これは、男性の体が大きくなれば血液量が増大し、PSAタンパクの濃度を薄めることでPSA値を低下させる現象である。PSAタンパクは前立腺の肥大に伴い循環血液中に入るものと考えられている。この知見はプロスペクティブ試験を実施して確認する必要があるものの、試験担当者らは、BMIが高い患者の血液希釈の現象は循環血液中に存在するほかの疾病マーカーの検査結果にも影響を及ぼしかねないと考えている。

1988~2006年の試験期間中、13,600人以上の患者がデューク大学前立腺センター、ジョンズホプキンス大学病院または5ヵ所の退役軍人医療センターで根治的前立腺全摘除術を受けた。患者のBMIおよびPSA値はいずれも信頼度の高いものであった。統計学的手法を用いて各患者の血液量、実際に体内に存在するPSA量およびPSA濃度が算出された。BMIが35を超える男性は(30以上が肥満)、標準体重の男性より血液量が21~23%多く、PSA濃度は11~21%低いことがわかったが、標準体重の男性のほとんどで統計学的に有意な循環血液中のPSA量の増加は認められなかった。

デューク大学医療センターのDr. Stephen Freedland氏および10ヵ所以上の病院や研究所の共同研究者によるこの研究の成果は11月21日発行のJournal of the American Medical Association誌に掲載された。同氏は「このような他の検査(癌をはじめとした疾患のバイオマーカー発見の試み)は始まったばかりです。バイオマーカーはその濃度ではなく、総量を考える必要があります」と述べている。

肺癌患者から化学療法の副作用をオンラインで報告

癌患者が化学療法の副作用を担当医師にリアルタイムで報告できるインターネットシステムのテストをスローンケタリング記念がんセンターの研究者らが行った。結果は12月1日発行のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

平均42週間の試験期間中、ほとんどが50歳以上で英語がわかる107人の患者がSymptom Tracking and Reporting(症状の追跡および報告)と呼ばれるオンラインシステムを利用して身体的、精神的およびQOLに影響を及ぼす副作用を記録し、その重症度を段階別に評価した。参加者は主に転移性非小細胞肺癌などの胸部腫瘍の治療を受けていた。治療を受けている医療施設の待合室に設置されたコンピュータ端末から情報を入力した患者がほとんどであったが、中には自宅のコンピュータを使用した人もいた。この報告は直ちに医師のもとに届き、処置については医師の判断に委ねられた。

プロトコルの遵守は、患者の年齢、性別または癌の進展度に関わらず試験期間を通してきわめて良好であった。プロトコル遵守を左右した唯一の要因はそれまでコンピュータを利用した経験があったかどうかということであった。システムを利用できなかった理由としては、多くの場合、時間が十分になかったことと利用を促されなかったためだという。ほとんどの患者がシステムは使い方が簡単で引き続き利用したいと考え、他の人にも勧めると回答した。

患者にシステムを使うようにと働きかけができ、患者が送った情報が医師にとって真に有益であることの確証が得られれば、このような自己申告プログラムにより治療計画に従うよう患者を励まし、毒性データ収集の精度を高めて患者管理を迅速にし、回避可能な入院の回数を減らすことができるようになるため、臨床研究および日常の医療現場での効率を高める可能性があると著者らは記している。しかし、そのかわりに「診察時以外にも報告を受けることで、検討し、対応しなければならない情報が新たに生じ、業務負担が増える可能性」もあるという。

細胞のしなやかさが腫瘍マーカーになりうる

癌細胞は正常細胞よりはるかに柔らかく弾力性がある傾向が認められ、この特徴をナノメータースケールで評価することが癌の新しい診断方法になる可能性がある。California NanoSystems InstituteのDr. James Gimzewski氏はUCLAのジョンソン総合がんセンターのDr. Jian Yu Rao氏との共同研究で、癌患者の体液から、生きた高転移能の癌細胞および正常細胞を採取して原子間力顕微鏡を用いて細胞の弾力性をプロファイリングした。Nature Nanotechnology誌オンライン版12月2日号に掲載された試験結果によると、研究者らは細胞の物理的特徴にもとづいて正常細胞と癌細胞を識別することができたという。f

「癌細胞の物理的特徴を評価する方法は、癌細胞の解析方法に新しい側面を加え、癌診断の一助となる可能性があります」とDr. Rao氏は述べる。同氏によれば、癌細胞は正常細胞とは違い、弾力性に富み、穴や間隙を容易に通り抜けることができることから循環血液中に入り他臓器に広がる。「これが癌が極めて致死的である大きな理由です」と、同氏は付け加える。

研究者らは転移性の肺癌、乳癌または膵臓癌の疑いのある患者の体液を検査した。各患者の検査検体には正常細胞と癌細胞の両方が含まれ、細胞の物理的特徴を直接比較することが可能であった。ナノメータースケールの細胞の硬度をもとに評価したところ、癌細胞は正常細胞よりも70%以上やわらかいことがわかった。癌細胞は、患者の癌のタイプが違っていても、正常細胞とは明らかに異なる同様の物理的特徴を備えていた。

徹底的な電話カウンセリングと無料のニコチン補充療法が多くの人の禁煙を支援

より長時間の電話カウンセリングおよび無料のニコチン補充療法からなる徹底した電話禁煙相談サービスの提供は、喫煙者を禁煙に導く上できわめて有効で費用対効果の高い方法であることが、この種の試験では最大規模のランダム化試験によって明らかになった。

オレゴン州ポートランドにあるKaiser Permanente Center for Health Researchの研究者らがNCIのTobacco Research Initiative for State and Community Interventionsから一部資金援助を受けて実施したこの試験の結果は、Tobacco Control誌2007年12月号の特別増刊号クイットライン特集に掲載された。

この試験ではオレゴン州の電話禁煙相談に電話をかけてきた4,600人の喫煙者が対象となった。試験参加者は、3種類の電話カウンセリング(短時間、中程度、徹底的)をそれぞれ無料のニコチン補充療法の有無に分けた6つのタイプの支援サービスに無作為に割り付けられた。最も効果のあったアプローチの仕方は、徹底的なカウンセリングと無料のニコチン補充療法がセットになったもので、21%を越える喫煙者を禁煙に導いた。これに比べて、カウンセリング時間が短く、ニコチン補充療法の無料提供もなかった試験群で禁煙できた人は12%未満にとどまった。研究チームは禁煙の定義を12ヵ月後の追跡調査の時点で少なくとも30日間どのタイプのタバコも吸っていないこととした。

電話禁煙相談サービスに対する満足度は、徹底したカウンセリング/ニコチン補充療法ありの試験群が短時間カウンセリング/ニコチン補充療法なしの試験群よりもはるかに高いことがわかったものの(92.5% vs. 53.9%)、参加者1人当たりに要した費用はそれぞれ、268ドル、67ドルとほぼ4倍であった。

「それでも、禁煙率や顧客満足度の高さ、および今後さらに多くの喫煙者が電話禁煙相談サービスを利用する可能性は、費用のわずかな追加分を補って余りあることがわれわれの研究で明らかになりました。タバコ中毒が重症である人は長期的に見て医療費が最もかかるため、このような喫煙者に徹底的なカウンセリングと薬物療法が最も有益であると思われます」と論文の主著者であるDr. Jack Hollis氏は語った。

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中村 訳
小宮 武文 (NCI研究員) 監修

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