2007/12/04号◆特別レポート「膵臓癌治療の進歩」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/12/04号◆特別レポート「膵臓癌治療の進歩」

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2007/12/04号◆特別レポート「膵臓癌治療の進歩」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年12月04日号(Volume 4 / Number 31)
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◇◆◇特別レポート◇◆◇

膵臓癌治療の進歩

先週、膵臓癌に関する専門家が集まり、この致死的な疾患に対する治療の進歩について意見交換が行われた。議論の中心的焦点となったのは、最も将来有望となりうる治療の特定方法、およびそれらを臨床の場で効率的に試みる方法であった。試験で検討された標的療法の効果が認められた患者は今のところほとんどいないのではあるが、本疾患に対する標的療法の併用は有効と示されるであろうと多くの参加者は述べている。

90名以上の研究者、医師、患者団体、製薬業界の代表者らが、マウスモデルや癌幹細胞から臨床試験のデザインや解釈の盲点までの論題について議論した。この会議は、NCI消化器癌専門委員会(Gastrointestinal Cancer Steering Committee)によって計画され、またNCI臨床試験コーディネートセンター(Coordinating Center for Clinical Trials)による資金提供を受けた一連の最新科学会議における初めての会議である。

カリフォルニア大学(サンフランシスコ)のDr. Margaret Tempero氏は、「われわれは、膵臓癌の臨床研究においてある種の危機に直面している。一部施設での臨床試験において有効で、進歩がみられるようだと特定された治療法が、同薬剤の試験をさらに広範な集団を対象として行うと薬剤の効果がみられない。」と述べている。

薬剤の効果がみられない原因はいくつか考えられるが、常に明白であるとは限らない。例えば、初期段階の試験に参加する患者は、より広範な集団における患者ほど病期が進行していないために良好な結果が得られるのかもしれない。

多くの参加者は、単剤投与は遺伝子的に複雑な本疾患に対して有効性が認められる可能性は低いと述べている。膵臓癌は、代替経路を活性化させることで標的薬の抗癌作用を阻害することがよく知られている。

癌誘発信号の伝達に関与する分子がいくつか特定されているが、これらの複雑なネットワークで何が最も重要な役割を担うかは明らかになっていない。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. James Abbruzzese氏は、「膵臓癌に関する重要な問題点は、生物学上の不明点と向き合いながら治療を進歩させようとしていることである。」と述べている。

複数標的療法は膠芽腫(脳腫瘍)の治療に必要であると示唆する最新研究の結果は膵臓癌にも適用できるであろうと、同氏は述べている。どちらの癌も遺伝子的かつ臨床的に多様であり、治療に対して抵抗性を示す。

膵臓癌は、最も一般的な癌の上位10位にも入っていないにもかかわらず、米国において最も死亡率の高い癌の4番目に位置する。同疾患は、膵臓以外に転移してから診断されることが多く、治療選択肢は限られている。膵臓にのみ局在する癌を有する患者では完治する可能性が最も高い方法は手術である。

膵臓癌治療に使用される主な化学療法剤は、ゲムシタビンであり、一部の患者に効果が認められている。エルロチニブ(タルセバ)を除き、今日までに試験で検討されている標的薬の大半が患者に対して効果を示さなかった。

しかし、重要な遺伝子が特定されたうえ、同会議での楽観論には理由があった。マウスモデルに関心が向けられている理由として、ヒトと同様にマウスでも容易に転移して大半の治療に抵抗性を示す腫瘍が発生することである。さらに、最新の試験では手術後の補助療法が有効な患者もいる可能性が示唆された。

ウェイン州立大学カルマノスがんセンターのDr. Philip A. Philip氏は、「数年前と比較して今日では、膵臓癌の基礎科学に関する知識は大幅に増えた。また、使用可能な標的薬もある。あとは、有益な結果が得られるように患者に試用する方法を見つけるだけだ。」と述べている。

同研究グループは、2008年に研究成果と提案事項を報告する予定である。一方、Philip氏によると、大規模なランダム化試験に着手する前に少数患者を対象としたパイロット臨床試験をもっと行うべきであるという統一見解があった。これにより、最も将来有望な治療法を最終段階の臨床試験で検討することができ、成功のチャンスが増えるであろう。

また、マウスモデルなどの実験ツールを開発する必要性も強調されている。同氏は、「臨床試験をデザインする際に役立てる場合、また最大限の有益性を得られるよう薬剤および患者を選択する場合におけるこれらのツールの重要性について全般的な同意見解が得られた。」と述べている。

—Edward R. Winstead

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斉藤 芳子 訳
林 正樹(血液・腫瘍科) 監修

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