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2007/12/04号◆スポットライト「癌との戦いを引き分けに持ち込む免疫系」

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2007/12/04号◆スポットライト「癌との戦いを引き分けに持ち込む免疫系」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年12月04日号(Volume 4 / Number 31)
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◇◆◇スポットライト◇◆◇

癌との戦いを引き分けに持ち込む免疫系

免疫系は癌細胞の増殖を長期間抑制し、潜在癌が致死的腫瘍に変わるのを防止することが研究者らによるマウス実験で明らかにされた。今回の研究結果は、癌細胞を排除するというよりも制御するという新しい免疫療法が開発される可能性を提起している。

「ヒト免疫系を用いて潜在腫瘍を抑えることが免疫療法の立派な目標となるかもしれません」と言うのは、オーストラリアのビクトリア州ピーター・マックカラムがんセンターでDr. Mark Smyth氏と共同で今回の研究を主導したワシントン大学医学部のDr. Robert Schreiber氏である。

免疫系は、癌の発症を妨げる一方でその増殖を促すと思われていることから、癌にとって両刃の剣と称されることがよくある。例えば、急性炎症は癌細胞を根絶する可能性がある抗腫瘍免疫を誘導することがあるが、その一方で慢性炎症は発癌のきっかけとなることがある。今回の新たな結果は先月オンライン版Nature誌で発表されたものであるが、腫瘍を潜在状態つまり平衡状態に維持する、という免疫のもう一つの役割を提示している。

「この作業によって、免疫系が癌を制御する様々な方法について新たな認識が生まれることを期待しています」とDr. Schreiber氏は述べる。今回の実験は異なる種類のマウスを用いて別々の研究室で実施されたが、その結果は同じであった。他の腫瘍への一般化が可能となり、さらに人にまで適用が拡大されれば、今回の研究結果はなぜ癌は晩年に発生する傾向にあるのかなど、癌についての臨床観察を説明するのに役立つかもしれない。

「腫瘍がかなりの期間平衡状態に保たれていることが、癌の発症に時間がかかる理由の一つであると考えられます」とDr. Schreiber氏は言及する。

今回の研究結果は、ある腫の免疫細胞が卵巣および大腸の腫瘍に存在しているかいないかによってこれらの疾患患者の生存が予測されることがある、という内容の最近の研究を裏付けている。今回の結果によって、一部の前立腺癌患者のように疾患の臨床徴候が何もない人になぜ癌細胞が存在しているのかが解明される可能性もある。

研究結果は、また、メラノーマ皮膚癌が臓器移植を介して転移するという報告の説明にも役立つかもしれない。2003年のNew England Journal of Medicine誌への投書で、2名の患者が同一の臓器提供者から腎臓移植を受けた後にメラノーマを発症したと報告された。調査によれば、提供者は以前にメラノーマの治療を16年間受けていたが癌は認められないと判断されたということであった。明らかに、提供者のメラノーマはその期間ずっと免疫に制御されていたが、被提供者の臓器拒絶反応を防ぐために免疫系が抑えられたことによって、被提供者の中で目覚めたのである。

Dr. Schreiber氏とそのチームは、現在、平衡の分子基盤を研究している。潜在腫瘍を分離した状態で初めて、これらの病変の遺伝子署名をしかるべき免疫系を持っている人においても癌化する病変の遺伝子署名と比較することが可能となるであろう。

潜在腫瘍を分離するために、研究者らはマウスに発癌性物質であるメチルコラントレンを低用量注入した。1/5のマウスに致死性の腫瘍が発現した。生き残ったマウスは健康そうに見えたが、約半数の注入部位近辺に腫瘍細胞と免疫細胞の混合物を含む小結節が認められた。これらの小結節が潜在腫瘍であった。

研究者らは、その腫瘍がT細胞のような免疫細胞を伴う適応免疫系によって潜在状態に保たれていることを認めた。その重要な免疫細胞をブロックすると、腫瘍はほとんど即時に増殖し始めた。

「この研究は、免疫系がどのように癌と相互に作用して癌の転帰に影響を及ぼすのかを理解する上で、次に取り組むべき課題です」と共著者であるルートウィヒ癌研究所のDr. Lloyd Old氏は言う。「現在の目標は、免疫系および癌を潜在状態、つまり平衡状態にする機序を理解することです。」

理論的には、人の適応免疫系を強化する方法を見つけることが癌の制御を強化することになると考えられる。「癌を糖尿病などのより制御可能な疾患にする慢性的な平衡状態を誘導することができるかもしれません」と、Dr. Schreiber氏は述べる。「現時点では免疫系を用いて癌を治癒することが不可能であっても、免疫系を用いて癌を制御することができるかもしれません。」

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豊 訳
真庭 理香(薬学博士)監修
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