2007/11/06号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/11/06号◆癌研究ハイライト

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2007/11/06号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年11月6日号(Volume 4 / Number 29)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

ビタミンDが大腸癌死亡率に影響する可能性

最近のin vitro試験や動物実験およびヒトを対象とした研究により、ビタミンDが癌の罹患率、死亡率あるいはその両方の低下に関与している可能性のあることが示唆されている。第3回全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)で収集されたデータをもとに新しい前向き試験が行われ、ビタミンDの血中レベルと全癌死亡率との間に相関関係は認められなかったものの、血中ビタミンDの高値と結腸直腸癌による死亡リスクの減少との間には有意な相関関係が認められた。

「癌死亡率[とビタミンD]に関するこれまでの研究はほとんどが生態学的な研究であったり、サロゲート物質を用いてビタミンDを測定したりしていた。本試験はビタミンDそのものの測定値と全癌死亡率を評価した初めての研究である。」と、論文の代表執筆者でNCI癌疫学・遺伝学研究部門のDr. Michal Freedman氏は言う。この論文は10月30日にJournal of the National Cancer Institute誌のオンライン版に発表された。

NCIおよび米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)の研究者らは、1988年から1994年にかけて17歳以上のNHANES参加者16,818人から、癌のリスク増大につながりかねない人口統計学的因子および生活様式を含むデータを収集した。各被験者から血液検体を採取し、ビタミンDレベルを測定した。

「NHANES III研究の対象集団からは[ビタミンD]と全癌死亡率との間に相関関係は認められなかった。」と著者らは言う。しかし、血清中のビタミンDの濃度が80 nmol/L以上である被験者は、濃度が50 nmol/L以下の被験者より結腸直腸癌による死亡リスクが有意に低いことがわかった。

研究者らは、対象集団がアメリカ人母集団を代表する標本集団から抽出したものであることや、癌のリスクに影響を与えることが知られている変数を多数含めたことなどこの試験の長所をいくつか挙げた。一方で、解析の対象となる全癌死亡数が少なかったこと、ビタミンDの測定回数が1回であったため長期間の血中濃度とは異なる可能性もあるなど試験の限界も認めている。

「栄養要因と結腸直腸癌をはじめとした癌との関係は複雑だ。・・・大腸ポリープおよび浸潤癌発生に対するビタミンDの影響を評価するランダム化臨床試験を実施する必要がある。」とNCI癌予防部門のDr. Cindy Davis氏および米国国立衛生研究所栄養補助食品オフィス(Office of Dietary Supplements)のDr. Johanna Dwyer氏は付随の論説で述べている。

テモゾロマイド療法による生存期間延長が脳腫瘍臨床試験で明らかに

2年前にテモゾロマイドという薬剤を放射線治療中および放射線治療後に投与すると脳腫瘍である神経膠芽腫の患者の生存を改善することが報告された。生存期間改善は、神経膠芽腫としては有意な約2.5ヶ月であった。追加の追跡調査の結果から、この致死的な疾患の一般的な生存期間である6~12ヶ月をこえて数年間生存している患者がいることが明らかになった。

ヨーロッパおよびカナダの患者500人以上を対象に実施された第3相臨床試験の結果が先週ロサンゼルスで開かれた米国放射線腫瘍学会(American Society for Therapeutic Radiology and Oncology: ASTRO)の年次集会で報告された。

最新の試験結果では、テモゾロマイドを放射線治療中および放射線治療後に投与された患者の12.9%が4年間生存した一方で、放射線単独療法を受けた患者で4年間生存した人は3.8%であったことが示された。診断後4年間生存した患者はほとんどが50歳未満で重大な既往歴はなく神経膠芽腫を除いて全身状態は良好であった。このうちテモゾロマイドと放射線の併用療法を受けた患者の約28%が4年間生存したのに対して放射線単独療法を受けた患者ではわずか7%であった。

「多形性神経膠芽腫の治療で、放射線療法にテモゾロマイドを加えることによってもたらされる生存期間改善は追跡調査期間が延長しても有意差は依然として顕著であり、少数ではあるが有意な割合の患者で長期生存を果たすものと考えている」と著者らは抄録で結論している。この試験はEORTC Brain Tumor Group、Radiation Oncology GroupおよびNCIC Clinical Trials Groupによって実施された。

患者ナビゲーターによってマイノリティーや低所得者層に応じた介入方法が可能になる

民族・人種のマイノリティーおよび低所得者層の患者が癌医療への壁にぶつかることはしばしばあるが、このような健康格差を是正するための確実な戦略のひとつに、民族的背景や言語面で対応できる“医療の専門家ではない患者ナビゲーター”(lay patient navigator: LPN)を起用するという方法がある。カリフォルニア州イングルウッドにあるセンチネラフリーマン医療研究センターの研究者らが最近の研究でアフリカ系アメリカ人およびラテン系アメリカ人の癌患者493人が経験した最も困難な障壁をつきとめた。ナビゲーターらの巧みな介入により、こうした障壁を克服するために要した平均的な時間が42日から1日に減少した。

Urban Latino African American Cancer Disparities Project (ULAAC)のDr. David Khan氏らは、継続的品質改善(continuous quality improvement: CQI)の手法を用いて低所得者集団に合わせたプログラムを作成した。ボランティアのナビゲーターには訓練を実施し、その後もナビゲーターがコホート集団の患者に助言を与える際には注意深く監督した。このような介入を追跡した結果やナビゲーターを交えたフォーカスグループでの討論から、この患者集団が直面する個々の障壁に対する解決策が導き出された。患者のうち60%がサポートを受け入れた。

この300人の患者群にとって6つの点が繰り返し障壁となった。移動手段が最も頻繁に問題となり、167人が援助を必要とした。次に多かったのが精神的な問題、経済的な問題、癌に対する不安感、介護者に関する問題および言語上の問題であった。

行動計画のもうひとつの目的は、この対象集団の臨床試験参加率を増加させることであった。CQIの手法により、ULAACはナビゲーターが臨床試験に対して対象集団の患者と同じような偏見をもっていることを発見した。再度ナビゲーターを訓練し、改めて患者への介入を実施したところ、最終的には29人の患者が臨床試験に参加した。

「この患者ナビゲータープログラムはわが国の医療システムに不可欠な要素となるだろう」とDr. Khan氏は結論する。NCIのCancer Disparities Research Partnership Programの研究助成金を受けたこの研究の成果は先週ASTROの年次集会で報告された。

放射線の「ブースト」照射は初期ステージの乳癌女性に恩恵となる

初期ステージの乳癌の40歳以下の女性では、乳房温存手術後の標準的な放射線療法のあと放射線の追加(ブースト)照射を行うことにより、同側乳房に癌が再発するリスクが低下したとロサンゼルスで先週開かれたASTROの年次大会で研究者らが発表した。この追加「ブースト」照射により10年間の同側乳房再発リスクが約24%から13.5%に減少した。効果はあらゆる年齢層の女性に認められたが、統計的証拠は若年層で最も顕著であった。

試験は、ステージI・II期の乳癌で乳房温存手術(乳房部分切除術)および放射線療法を受けた女性5,500人を登録した。オランダ癌研究所のDr. Harry Bartelink氏が統括したこの試験の結果は8月1日のJournal of Clinical Oncology誌に発表された。

追加照射による患者の生存期間延長は認められなかった。それでも追加照射はこのような患者に重要な利益をもたらすとNCI放射線腫瘍学研究部門(Radiation Oncology Branch)のDr. Deborah C. Citrin氏は論評する。乳房温存手術後の再発防止は重要な目標であると同氏は言う。追加照射は同側乳房再発のために乳房切除術を受けなくてはならない患者を減少させ、乳房喪失による影響を心身ともに受けなくてすむようになるという点で重要である。

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中村   訳
平 栄 (放射線腫瘍科)  監修

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