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2007/10/09号◆癌研究ハイライト

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2007/10/09号◆癌研究ハイライト

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年10月09日号(Volume 4 / Number 27)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

子宮頸癌スクリーニングに関する新ガイドラインが発表 

The American Journal of Obstetrics and Gynecologyは10月号で、2006年度American Society for Colposcopy and Cervical Pathology(ASCCP)が主催するコンセンサス会議の結果を特集した。この会議は、異常な子宮頸癌のスクリーニング検査、頸部上皮内癌(前癌状態)もしくは上皮内腺癌に関して医師が女性患者を管理していく際の指針を更新するために開かれたものである。今回の提案事項について、医師および一般の人々はASCCP Web site上で閲覧することも可能である。

専門家らは、子宮頸部前癌および世界中で子宮頸癌の主な原因となっているHPV感染の自然史に関する新たなエビデンスを、2001年に発表されたこれまでのガイドラインに組み入れるために2006年度会議を招集した。例えば、米国立癌研究所(NCI)癌予防部門に所属し今回の新ガイドライン著者の一人であるDr.Diane Solomon氏は、「若い女性はHPVに感染するリスクが高いという(新しい)認識がありますが、HPVおよび付随するいかなる細胞変化も時間の経過と共に消えてなくなる可能性も非常に高いのです。また、これらの若年女性が子宮頸癌になるリスクは極めて低くなっています。したがって、今回のガイドラインの一つの大きな変更点は、重度の前癌状態についてのエビデンスがなければ、異常のある若年女性には保守的に経過を見守っていくということです」と説明する。

付随する臨床的見解に関する記事では、今回の新ガイドラインをリスク管理に照らして説明している。つまり、どのような検査においてもその結果を、子宮頸部異常と診断された女性の次の治療段階を決める際に単独で用いるのではなく、子宮頸部前癌病変もしくは子宮頸癌がある可能性についてより正確な推定値を得るために追加情報と統合して用いるのである。「今回のガイドラインは、リスク層に応じた管理概念に向けての重要な第一歩を象徴していると思います」とDr. Mark Schiffman氏は述べている。同氏は、NCI癌疫学・遺伝子学部門(DCEG)の疫学者であり、同じくDCEGのDr. Philip Castle氏が執筆した臨床的見解に関する記事の共著者である。

幹細胞、およびmiRNAはマウスの乳癌転移に影響を及ぼす

マサチューセッツ工科大学の研究者らによる2つの研究において、マウスの乳癌細胞転移能獲得の機序が特定された。

1つは10月4日号のNature誌で発表されたもので、通常は主に骨髄に存在する間葉系幹細胞(MSCs)がマウスの乳房腫瘍へ移動できるということを明らかにした。おそらく、損傷した正常組織のシグナルに類似する癌細胞シグナルに応答することによるものと思われる。一旦腫瘍内微小環境に入ると、MSCsはCCL5と呼ばれるタンパク質を放出し、これが血流から隣接組織への癌細胞の移動を含む、転移の後期段階に影響を及ぼすようである。

CCL5タンパク質が影響するためには、MSCsは癌細胞が転移する前に癌細胞の極めて近くにいる必要があった。研究者らがマウスにMSCsとヒト乳癌細胞の混合物を注入すると、マウスは肺および他の組織部位に広がる腫瘍を発症した。しかし、MSCsが癌細胞と共に転移することはなく、また肺結節から採取した癌細胞が、元の原発腫瘍から採取した細胞よりも高転移能の腫瘍を形成することはなかった。

もう1つはNature誌が9月26日にオンライン上で発表したもので、乳癌転移におけるマイクロRNA(miRNA)の役割を示唆している。研究者らはmiR-10bと呼ばれる特異的なmiRNAに着目し、マイクロアレイ解析によってそれが転移性癌細胞にのみ発現されることを明らかにした。

研究者らがマウスに注入した他に転移性の特徴を持たないヒト乳癌細胞にこのmiRNAを強制発現させたところ、癌細胞は非常に局所浸潤性かつ転移性の強い腫瘍を形成した。それに対して、miR-10bを強制的に発現させなかった対照癌細胞においては、局所組織への浸潤もしくは血流への侵入はなかった。

「私は、腫瘍の間質微小環境がどのように癌細胞転移を調節するのか注目するようになりました。そしてDr.Ma氏(miRNA論文の著者)は、転移を促進する癌細胞内遺伝物質に注目するようになったのです。」と、幹細胞論文の主著者であるDr. Antoine Karnoub氏は説明する。「転移は必ずしもどちらか一方(だけでもたらされる)ということではないのです。両方が結び付いている可能性が十分にあります。」

新標的薬剤は進行腎癌に有効性を示す

実験段階の複数標的血管新生阻害剤は、類似の標的薬剤による効果が認められなかった進行腎癌患者に対して期待できる効果を示した。クリーブランド・クリニック・タウシッグがんセンター のDr.Brian Rini氏は、先月末に欧州の癌研究会議、第14回ECCOで講演し、第2相臨床試験において、その実験段階のチロシンキナーゼ阻害薬axitinib(アキシチニブ)により試験参加者62名の半数以上で腫瘍の縮小が認められたことを報告した。

「予備的分析では、無増悪生存期間が平均で7.7ヶ月を上回っていました」とDr. Rini氏は新聞発表で述べた。「Axitinibと同類と考えられていた薬剤でかなりの前治療が患者に施されていましたので、今回の結果は素晴らしいものだと思います。」

試験の参加者は全員、転移性腎細胞癌(RCC)患者であり、転移性RCCの治療用として2005年12月にFDAの承認を受けたソラフェニブ〔sorafenib〕(商品名:ネクサバール〔Nexavar〕)に反応を示さなかった。その後、進行性RCCの治療用としてFDAに承認されたもう一つのチロシンキナーゼ阻害薬sunitinib(スニチニブ、商品名:Sutentスーテント)でも治療を受けた14名のうち、部分奏効が認められたのは1名のみであった、とDr.Rini氏は報告した。

Axitinibは、VHLとして知られる遺伝子によって調節される細胞内シグナル伝達経路で血管内皮増殖因子1、2および3を阻害するもので、進行性の膵癌、肺癌および甲状腺癌の患者に対しても期待できる効果を示した。

「淡明細胞型腎癌のVHL経路を標的とする新規薬剤に関する今回の結果は、確かに興味深いものです」と、NCI癌研究センター泌尿器腫瘍支部の主任であり、Dr.Berton Zbar氏と共にVHL遺伝子を発見したDr.Marston Linehan氏は述べている。「現在のところ、進行性淡明細胞型腎癌の二次治療に対する明確な選択肢はなく、この薬剤がその役割を果たす可能性を秘めています。」

試験的薬剤が初期臨床試験でホルモン抵抗性前立腺癌の生存期間を改善

最近終了した第2相臨床試験の二次分析において、治療困難な前立腺癌患者の治療を対象とする試験薬は、試験の主要評価項目である無増悪生存期間に改善は認められなかったものの、プラセボと比較して全生存期間を改善した。

「第2相臨床試験の評価項目として“無増悪生存期間”を用いるのが通例ですが、転移性のホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)患者でそれを正確に測定することは困難な場合があります。」と、臨床試験責任医師で英国のInstitute for Cancer StudiesのDr.Nick James氏は述べ、「全生存期間は、明確な評価項目であり患者にとって明らかに重要な転帰となります」と続けた。

ランダム化二重盲検臨床試験の結果は、バルセロナで開催された第14回ECCO会議で先月末に発表された。試験参加者は転移性HRPCの患者で、この疾患に対して現在承認されている化学療法薬剤はドセタキセルのみである。今回の試験で使用された薬剤第3相臨床試験を開始する予定である。1つの第3相臨床試験は同様の対象患者に対して別のエンドセリンA受容体拮抗薬を用いるもので、NCIがスポンサーとなりSouthwest Oncology Groupが主導する予定である。

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豊 訳
林 正樹(血液、腫瘍科)、九鬼貴美(腎臓内科) 監修

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