2007/09/25号◆特集記事「多標的療法の可能性を探る脳腫瘍研究」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/09/25号◆特集記事「多標的療法の可能性を探る脳腫瘍研究」

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2007/09/25号◆特集記事「多標的療法の可能性を探る脳腫瘍研究」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年9月25日号(Volume 4 / Number 26)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇特集記事◇◆◇

多標的療法の可能性を探る脳腫瘍試験

イマチニブ(グリベック)やエルロチニブ(タルセバ)などの標的薬は、脳腫瘍を対象として試験されてきたが、ベネフィットを得る患者はほとんどいなかった。新しい試験にて、このような残念な結果に対して考え得る理由が示され、また併用薬の使用は致死的疾患に対するより効果的な方法である可能性が示唆された。

研究者らは、細胞表面上にて受容体チロシンキナーゼ(RTK)と呼ばれるいくつかのタンパク質を脳腫瘍細胞が同時に活性化させることを見出した。これらのタンパク質は、成長促進シグナルを細胞内に供給して細胞の生存を持続させる。RTKは過剰活性化を示したり、変異したりすることが多いため、一般的な薬剤標的となっている。

癌細胞はいくつかのRTKを同時に活性化させることによって、1つのRTKに対する依存性を減少させ、さらに生存し続けると考えられる。この報告内容は、オンライン版Science誌に9月13日付けで掲載されている。研究者らがこのような事象を初めて観察したのは、神経膠芽腫(GBM)患者の細胞であり、その後は他の主な癌でも観察された。

本試験を主導するダナファーバー癌研究所のDr. Ronald DePinho氏は、「われわれが検討したあらゆる癌細胞において、いくつかのRTKが同時に活性化するのを発見した。1つのRTKが阻害されると、他のRTKが介入して、生存シグナルを持続させる。」と述べている。

さらに同氏は、疾患を治療する際に最も重要と考えられるのはこのような細胞内の全異常シグナルを減少させることであると付け加えている。

今回の発見は、いくつかのRTKには事実上互換性があるという見解を裏付けるものであり、また、RTK阻害剤を固形腫瘍に対して用いた場合の臨床効果の弱さを説明する上で役立つであろう。薬剤によって最初の効果がみられたとしても、大半の癌は最終的に進行し、患者には追加療法が必要となる。

神経膠芽腫は通常、診断後1年以内に死に至る。ここ10年にわたって100件以上の臨床試験が行われてきたが、脳腫瘍患者の生存率が改善されることはなかった。ただし、一部の膠芽腫患者にテモゾロミド(テモダール)を用いた場合では、注目すべき結果が得られた。良好な結果が得られない原因は、同疾患に関与する遺伝子が不明であることにある。

Dr. DePinho氏および共同研究者のDr. Jayne Stommel氏は、神経膠芽腫の原因となるRTKについて研究していたところ、複数で同時に活性化するTRKを発見した。数種類のキナーゼ(EGFRやMetなど)は、同疾患において役割を担っていることが知られていたが、それ以外については知られていなかった。

ジョンズホプキンス大学医学部の脳腫瘍研究者であるDr. John Laterra氏は、EGFRなどの既知の因子と共に作用するRTKについて研究者らはさらに包括的に検討する必要があろう、と述べている。

さらに同氏は、「今回の試験は時期を得たものである。なぜならば、多くの科学者がRTKのネットワークやその制御経路に着目しており、経路間の綿密なクロストークや相互作用のエビデンスを発見しているからである。」と続けている。

本試験では、異常な細胞増殖を制御する上で3種類以上の標的薬が全般的に必要であった。当該研究者らは、実験的なMet阻害剤をイマチニブやエルロチニブと併用し、細胞内への成長シグナルの流れを阻害して細胞を死に至らせた。同研究者らは、RNA干渉を用いた結果、RTKが阻害されたと確信している。

このような分野で多く考えられているように、研究者らは各個人に対応させた癌療法を構想している。患者は自身の腫瘍についてプロファイリングを受け、いずれのTRKが活性化しているのか知ることができるであろう。また、投与方法はそのような結果に基づいて計画されるであろう。

多くのRTK阻害剤が癌に対して承認されており、その他の薬剤も開発中である。しかし、最初のMet阻害剤などはまだ臨床試験の初期段階にすぎない。複数標的剤の使用に伴うリスクや毒性は、臨床試験開始前に検討する必要がある。

それでもなお、ピティエ・サルペトリエール病院(パリ)のDr. Antonio Omuro氏は、基本的仮説が他の試験で確証された場合、研究者らは膠芽腫や他の固形腫瘍に関する試験のデザイン方法について再度検討する必要があろう、と述べている。同氏は、最近脳腫瘍に対する標的療法についての論文を共著した。

同氏はまた、「われわれは臨床試験の全登録患者について分子学的にプロファイリングするという方針を強化すべきである。このようなことを常に行ってきたわけではないが、同分野で進歩を遂げる必要があることは周知である。」と述べている。

— Edward R. Winstead

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齋藤 芳子 訳
小宮 武文(NCI研究員)監修

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