2007/09/25号◆スポットライト「新しい化学療法は紆余曲折の途上にある」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/09/25号◆スポットライト「新しい化学療法は紆余曲折の途上にある」

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2007/09/25号◆スポットライト「新しい化学療法は紆余曲折の途上にある」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年9月25日号(Volume 4 / Number 26)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇スポットライト◇◆◇

新しい化学療法剤は紆余曲折の途上にある

新しい癌治療のための可能性ある分子標的を特定する研究にこと欠くことがなく、また、多くの製薬会社やバイオテクノロジー企業が癌治療薬に将来の成功を委ねている今の時代でさえ、細胞毒性を有する化学療法がいまだ圧倒的多数の癌に対する治療の基盤となっている。事実、数多くの製薬会社が新しい化学療法剤の開発に奔走している。

開発中の化学療法剤の中で、epothilones(エポチロン系)として知られている薬剤は、前臨床試験や初期の臨床試験段階において有望な結果が示されており、そして、タキサン系薬剤のように高い効果のある化学療法剤と同様な働きをするにもかかわらずアレルギー反応を抑えるステロイドによる前投与を必要としないため、強い関心を持たれている。6月に米国食品医薬品局(FDA)は、エポチロン系では最も臨床試験の遅かった、転移性乳癌に対するブリストル・マイヤーズ・スクイブ社のixabepilone〔イキサベピロン〕の新薬申請に対して優先審査を認めた。優先審査とは、FDAが6ヶ月以内に審査を完了するということである。

もっとも現時点では、FDAによるイキサベピロンの承認が、エポチロン系薬剤の長期の見通しにとって何を意味するかは不明である。エポチロン系薬剤の臨床試験がおこなわれている癌に対する治療の選択肢は劇的に拡大している。しかし、一握りの研究者たちが主張しているように、どの患者がどのような治療に最も適しているかを示す試験がない状況では、いかなる新しい化学療法剤も、他の既存の薬剤よりも明らかな優位性を証明できない場合、臨床現場での足場を確立する事は難しいかもしれない。

8月にイキサベピロンの5つの第2相臨床試験結果がJournal of Clinical Oncology(JCO)誌に掲載された。4つの試験は転移性乳癌に対するもので、残り1つは進行非小細胞肺癌に対するものであった。5つの試験全てにおいて、この薬剤は転移性乳癌治療の要であるパクリタキセルやドセタキセルといったタキサン系薬剤を含む標準治療薬で見られたのと同程度の効果を示した。

そして重要なことは、この薬剤は「忍容可能な」毒性プロフィールを有すると考えられることである。無視できるほど軽微なものではないが、この薬の毒性は管理可能であり、ほとんどの患者において。臨床的恩恵を得ることが出来る十分な期間の使用を妨げるものではなかった。

「転移性乳癌に対して今日まで得られているイキサベピロンの臨床試験結果は、第一次治療薬として、又は、複数の治療、特にアンスラサイクリンやタキサン系薬剤での治療を受けた後の患者のどちらの場合にも非常に効果的であることを示している。」とイキサベピロンを含むいくつかの第2相臨床試験を統括したワシントンDCにあるワシントン癌研究所医長であるDr. Sandra Swain氏は説明する。

現在進行中の、標準治療後に病状が進行した転移性乳癌患者における、カペシタビンと本剤との併用療法をカペシタビン単独療法と比較する2つの第3相臨床試験のうちの1つでもイキサベピロンは好ましい結果をもたらした。6月に開催された米国臨床腫瘍学会の年次総会で公表された試験結果は、無増悪生存期間の1.5ヶ月の改善と全奏効率が2.5倍になったという程度で、驚くべきものではなかったが、これらの改善は、現在の標準療法と比較してFDAでの優先審査を得るのに十分なものであった。

これらは一般的に「分子標的」薬とは考えられていないが、多くの化学療法剤は活発に分裂する細胞を標的にしている。エポチロン系薬剤の場合は、別な種類の化学療法剤であるタキサン系や植物アルカロイド系薬剤と同様に、細胞分裂にきわめて重要な、微小管として知られている細胞骨格の構成要素を標的にしている。3種類の薬剤全てが微小管を安定化させることで作用する。つまり、細胞分裂(そして更なる増殖)のプロセスを中断させ、結果的に癌細胞を死滅へと導くものである。

「われわれは、チューブリンが格好の標的であることを知っている」と、メイヨークリニック・ジャクソンビル分院の乳癌プログラムのディレクターでありJCO誌に掲載されたイキサベピロンの試験の中の1つの試験責任医師であるDr. Edith Perez氏は述べる。

しかし、エポチロン系薬剤の4つの第2 / 3相臨床試験(下記表参照)から、「他のチューブリンを標的とする薬剤と比較して、異なる箇所に結合しているように思える」とDr. Perez氏は付け加える。これが、タキサン系のような他のチューブリン標的薬に耐性が生じた患者においても、これらの薬剤が活性を示す理由かもしれない。

薬剤(製薬会社) 臨床試験(第2相以上)* 
Ixabepilone[イキサベピロン]
(BMS:ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社)
乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌、腎癌、
非ホジキンリンパ腫
KOS-862
(Kosan:コーサンバイオサイエンシズ社)
乳癌
Patupilone
(Novartis:ノバルティスファーマ社)
卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌
ZK-EPO
(Bayer:バイエル社)
卵巣癌、前立腺癌、乳癌
  *注:この表は全ての試験を網羅することを目的とはしていない。

上記は先月のJCO誌に掲載された5つの臨床試験のうちの4つである(5番目の試験はイキサベピロンを第一次治療薬として使用した)。進行非小細胞肺癌の試験では、イキサベピロンは、第一次治療にもはや奏効を示さなくなった患者に対してFDAが既に承認している他の3剤に匹敵する結果を示した。

そして、そこには、どのような新しい化学療法剤にとっても困難な部分があると、ヴァンダービルト大学胸部腫瘍科の医長であり、本試験の共同研究者であるDr. Alan Sandler氏は記す。

「このような患者に対して何もなかった昔とは違う」とDr. Sandler氏は述べる。「現在は、2つの化学療法剤と1つの分子標的薬という3剤が第二次治療薬として存在する。」

非小細胞肺癌の治療薬としてのイキサベピロンの場合は、この先どこに行きつくかは明らかではないと彼は述べる。例えば、ペメトレキセド、ドセタキセルの2剤は第二次治療薬として認可されているが、現在第一次治療薬として検討されているので、その場合の第二次治療薬としての可能性がある。もしこの2剤が第一次治療薬となれば、既に似た効果を示しているイキサベピロンのような薬剤が第二次治療の武器となるかもしれない。

FDAによって承認されれば、イキサベピロンはあたかも少なくとも新しい選択肢を提示するようになるだろうとDr. Perez氏は述べる。例えば、彼女が関与している第2相臨床試験の場合は、参加している患者全員がアンスラサイクリン系、タキサン系薬剤およびカペシタビンに耐性を示しているが、その場合の承認された治療法がない。

「このような患者は、現在、未承認薬での治療を受けている」と彼女は記し、「そのため、イキサベピロンが明らかな効果を示したことは喜ばしいことであり、満たされていない患者の要求に応えるものである」と述べた。

エポチロンの臨床試験に関する情報は、次の米国国立癌研究所のPDQ癌臨床試験登録より得ることが出来る:
Ixabepilone臨床試験http://www.cancer.gov/search/ResultsClinicalTrialsAdvanced.aspx?protocolsearchid=3725509
Patupilone臨床試験
http://www.cancer.gov/search/ResultsClinicalTrialsAdvanced.aspx?protocolsearchid=3727495
ZK-EPO臨床試験
http://www.cancer.gov/search/ResultsClinicalTrialsAdvanced.aspx?protocolsearchid=3728785
—Carmen Phillips

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Nogawa 訳
島村 義樹(薬学)監修
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