2007/09/11号◆特集記事「HIV治療薬が非臨床試験で抗癌作用を示す」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/09/11号◆特集記事「HIV治療薬が非臨床試験で抗癌作用を示す」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2007/09/11号◆特集記事「HIV治療薬が非臨床試験で抗癌作用を示す」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年9月11日号(Volume 4 / Number 25)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

____________________

◇◆◇特集記事◇◆◇

HIV治療薬が非臨床試験で抗癌作用を示す

米国国立癌研究所(NCI)の臨床試験担当医師らは、抗HIV感染薬として開発・承認された、ネルフィナビル(nelfinavir、商品名:Viraceptビラセプト)およびその他2つのプロテアーゼ阻害剤に抗癌作用がある可能性を明らかにした。今回の研究では、HIV/エイズに対する有効性がすでに明らかにされているこれらの阻害剤の使用範囲を広げて、癌の治療にも使用する有望な戦略が示されている。

Clinical Cancer Research誌9月1日号に掲載された試験結果から、HIV/エイズの治療に使用する6つの薬剤のうち3つは、in vitro(試験管内)だけでなくマウスに細胞を移植した場合でも、癌の重要な標的であるAktを阻害して癌細胞の増殖を止めることが明らかになった。

今回の試験はNCIの癌研究センター(CCR)の腫瘍内科学支部(Medical Oncology Branch)にあるDr. Phillip Dennis氏の研究室で実施されたものであるが、同氏はこの結果を受けて第1相試験を開始し、標準療法による治療後に進行した広範囲にわたる固形腫瘍の患者を対象にネルフィナビルを投与している。

「in vitroでの作業結果を基に、HIV治療時よりも多い量のネルフィナビルを患者に投与することで抗癌作用がもたらされることを期待しています」とDr. Dennis氏は述べる。研究者らは、第1相試験で、安全に投与できる薬剤用量-最大耐量-および体内における実際の効果を測定している。

同時に、脂肪肉腫患者を対象にネルフィナビルを投与する第1/2相試験も進行中である。

Dr. Dennis氏のチームは、HIV/エイズ治療薬として現在FDAの承認を受けているプロテアーゼ阻害剤群も癌に応用できるかどうかを判断するために、細胞培養および担癌マウスを用いた実験を数多く行った。研究者らは、まず、ネルフィナビルが非小細胞肺癌細胞株パネルに対して最も効果があることを突き止めた。さらに、タイプの異なる9種類の癌から取り出した細胞株のNCI60パネルでは、3つのHIVプロテアーゼ阻害剤が細胞の増殖を阻止したことを見いだした。この場合もネルフィナビルが最も有効であり、試験を実施したすべての種類の癌に対して活性を示した。マウスでは、ネルフィナビルが2種類の肺癌の増殖を阻止した。

「その経路に及ぼす影響は一時的であることから、Aktがネルフィナビルによる治療の重要標的であるという確信はありません。」と、Dr.Dennis氏は言う。「しかし、部分的にアポトーシスを誘導することによって、この治療が腫瘍の増殖に影響を与えていることはバイオマーカーを用いて明らかにすることができました。」と続けた。アポトーシスとは、老化もしくは損傷した細胞を排除するようにプログラムされた正常過程の細胞死のことである。

科学者らによってネルフィナビルに関する興味深い発見がなされた。マウス内の腫瘍細胞をこのプロテアーゼ阻害剤で治療した際に、アポトーシスでは死ななかったいくつかの細胞も非アポトーシス過程により死に至った。薬剤治療によって、細胞内のタンパク質が作られる場所である小胞体にストレスがかかり、オートファジー(自食作用)として知られている、ストレスを受けた細胞が細胞自体を分解するプロセスが誘発されたのである。

研究者らはオートファジー欠損が癌の成長の一因となっているのではないかとの疑念を抱いていることから、小胞体ストレスおよびオートファジーは、癌の研究において重要性が注目されている細胞プロセスである。癌患者を対象とした臨床試験でネルフィナビルを試験する際には、小胞体ストレスおよびオートファジーのマーカーが役に立つであろう。

「有効な癌治療法を迅速に開発することが緊急に必要とされています」とDr. Dennis氏は述べる。「患者への使用がすでにFDAから承認されている薬剤をその治療対象を変えて使用することで、新たな癌治療法の開発速度を大幅に上げることができるでしょう。われわれのデータによれば、ネルフィナビルの広範囲に及ぶ有効性を考えると、癌の治療薬として十分に使用できることが示されています。」

— Addison Greenwood

******
豊 訳
平 栄 (放射線腫瘍科)  監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

お勧め出版物

一覧

arrow_upward