2007/09/11号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/09/11号◆癌研究ハイライト

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2007/09/11号◆癌研究ハイライト

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年9月11日号(Volume 4 / Number 25)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

フィナステリドは高グレードの前立腺癌と関連しない

Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌に本日付で公表された2つの試験によると、前立腺癌予防としてフィナステリドを服用している男性において、フィナステリドは高グレードの前立腺癌を誘発する可能性は低い。

2003年、NCIがスポンサーを務めた前立腺癌予防試験(Prostate Cancer Prevention Trial:PCPT)にて、フィナステリドにより前立腺癌の全発症率が25%減少したが、多くの場合急速進行性である高グレード癌の発症件数はわずかに増加した。同薬がより高グレードの前立腺癌を引き起こしたのか、または単に発見が容易になったのかは不明である。新たな試験では後者を支持している。

1件目の試験では、エルサレムにあるGamida Cell社のDr.Yael Cohen氏らは、フィナステリドが前立腺の容積を減少させたために生検で高グレードの癌細胞を発見する可能性が高まったと結論を下した。フィナステリドは高グレード癌の検出を促すものであるが、癌の発達を促進させるものではないと、同氏らは述べている。

2件目の試験ではPCPTの前立腺癌摘出術について分析したところ、フィナステリド投与群において高グレード腫瘍が相対的に増加することは元来考えられていたよりも少ないと判明した。さらにこの所見から、検出率の上昇がフィナステリド投与群における高グレード腫瘍増加の一因となったことが示唆される。この見解は、コロラド大学健康科学センターのDr.M.Scott Lucia氏率いる研究チームが報告した。

インターネットを介して癌情報を入手している米国人が増加

政府の研究報告によると、インターネット上の情報に対する人々の信頼度は低下しているものの、癌情報を求める米国人の数は増加しており、インターネットは高頻度に使用される主要な情報源となっている。

本報告(「Cancer Communication: Health Information National Trends Survey 2003 and 2005」)は、Health Information National Trends Survey(HINTS)からのデータに基づいている。HINTSは、NCIの癌制御・人口学部門(DCCPS)がスポンサーを務める2年に1回の調査である。HINTSが最初に実施されたのは2003年であり、米国市民の成人集団を対象として、健康情報に関する経時的な利用傾向を評価し、また癌関連の情報源、知識、態度、行動の関連性を調査する。

インターネット上にて自分で癌情報を検索すると報告しているHINTS回答者は、2003年では44.9%であるが、2005年では48.7%となっている。さらに、インターネットからの健康情報を「非常に」信頼していると報告した回答者は、2003年で23.9%であるが、2005年では幾分減少して18.9%となっている。また、2003年および2005年の双方において、医療の専門家は非常に高い割合(それぞれ62.4%および67.2%)で信用できる情報源と考えられている。

「この調査は、監視ツールとしてだけではなく、健康管理についての知識と情報源との関連性を調べる上で利用できる。」と、NCI研究者であるDr. Bradford Hesse氏は述べている。また、同研究者らは、癌についての知識と観念に関する母集団推定に着目し、統計学者や地理情報システムの専門家と協力して地域的地理変動を表すマップ(天気図のようなもの)を作成している。

HINTS報告はhttp://hints.cancergov/hint/にて閲覧できる。

乳癌における人種間の差は生物学的相違を反映

アフリカ系アメリカ人女性は白人女性よりもエストロゲン受容体(ER)陰性の乳癌に罹患する可能性が高いという最新報告が大規模試験において裏付けられた。ER陰性乳癌は、急速進行性である場合が多く、またタモキシフェンなどの抗エストロゲン療法に反応しない。サンフランシスコで開催された2007年度乳癌シンポジウムにおいて、人種間の差に関する主因は生物学的なものであると研究者らは報告した。

アフリカ系アメリカ人女性では、白人女性と比較して乳癌を発症する可能性が低いものの同疾患で死亡する可能性は高い。治療を受ける機会の欠如やその他の要因が、このような格差の原因であると考えられる。この新しい試験は、生物学的相違の役割を示唆している。すなわち、より急速進行性の腫瘍は、全病期および各年代(80歳以上も含め)において、白人女性よりも黒人女性で高頻度に認められた。

今回の試験は、大規模であるという点でこれまでの報告とは異なる。ミシガン大学総合癌センターのDr.M.Catherine Lee氏らは、国立癌データベースにおける乳癌の170,000症例について解析した。同データベースは、腫瘍に関する登録機関であり、全50州およびプエルトリコの病院1,400施設以上からの癌データが収められている。

浸潤性癌を有する女性について、ER陰性腫瘍はアフリカ系アメリカ人女性において非常に高頻度に認められる。内訳は、黒人女性で39%、白人女性で22%である。また黒人女性の場合、白人女性と比較して、平均年齢がより若い段階(黒人女性57歳に対して白人女性62歳)かつより後期の病期で診断されている。

乳癌手術前の催眠術は疼痛および費用を軽減させる

乳癌手術前に短い催眠術インターベンションを受けた女性では、催眠術を受けていない女性と比較して手術室で費やす時間がより短く、また術後の疼痛や不快感を訴える件数が顕著に少なくなった。この試験報告は、JNCI誌の9月5日号に掲載されている。

マウントサイナイ医科大学の臨床試験責任医師らは、外科的乳房生検または乳腺腫瘤切除術を受ける予定の女性200名を催眠術施行群または対照群にランダムに割り付けた。催眠術施行群の女性は、医療現場で催眠術を扱う訓練を受けた精神科医から、術前1時間以内に15分間の催眠術を受けた。対照群の女性は、術前1時間以内に同精神科医と同等の時間を過ごし、精神的なサポートを得た。

対象女性は自身の群割付けを知っていたため、試験責任医師らはバイアスの可能性を低めるためにいくつかの予防策を講じた。例えば、群割付けについて麻酔科医および外科医を盲検化すること、群割付けを知らない研究助手に疼痛や不快感に関する女性の認識度を調べさせることなどが挙げられる。

催眠術施行群の女性では、麻酔剤プロポフォールおよび鎮痛剤リドカインの必要量(手術中個別に用量調整)は顕著に少なかった。鎮痛薬の術後使用量に群間差は認められなかったが、同群の女性は、疼痛強度、疼痛による不愉快感、悪心、疲労、不快感、および感情の起伏について、その程度が非常に低いことを報告した。

また、催眠術施行群の女性では、手術時間が約10.5分短縮した。平均して、手術費用は同群の女性で1名につき約770ドル低価となった。その理由は大半の場合、手術時間の短縮であった。

マイクロRNAが担う腫瘍抑制の役割

腫瘍抑制にマイクロRNAが関与していることが、最近報告された数多くの研究によって示唆された。同義遺伝子の活性を制御しているこの小さなRNA分子が細胞シグナリングにおいて重要な役割を担っているとの認識が高まっている。

3つのマイクロRNA遺伝子のファミリー(miR-34ファミリー)が、DNA損傷および細胞ストレスに応答し、腫瘍抑制因子p53によってオンの状態になることがこれらの試験によって明らかになった。これらの試験は、マイクロRNAがp53ネットワークの重要な成分であり、その欠失が一部の癌の原因になる可能性があるという、同一の結論を導いている。

Current Biology誌の8月7日号に掲載された最も新しい試験では、ヒトの肺癌で2つのmiR-34遺伝子活性に損傷がみられることが多いという報告がなされた。研究者らが調査した非小細胞肺癌14検体のうち6検体では、これらの遺伝子活性が正常な場合と比較してかなり低かった。細胞レベルおよびマウスでの実験において失われた遺伝子活性を修復すると、異常な細胞増殖が妨げられることが示された。

「これらの知見はp53に関する疑問に、新たな情報を提供している」と、筆頭研究者であるミシガン医科大学のDr.Guido Bommer氏は語る。「p53はDNA損傷ならびに他の有害な細胞ストレスに対する応答において大きな役割を担っており、これらのマイクロRNAがp53の機能に関して重要な役割を果たしているとわれわれは考えている。」

Molecular Cell誌の6月8日号に掲載された2試験を含め、この結果は最近発表された他の試験結果を裏付けている。ある研究チームは、miR-34aがヒトの癌では通常消失しており、膵癌の細胞では存在しないことが多いと報告した。一方他の研究チームは、miR-34aが欠損していると、細胞がp53による細胞死を開始せず、癌の進行が回避されないことを明らかにした。

最後に、Nature誌の6月28日号に掲載された報告によって、miR-34遺伝子は、癌遺伝子が偶然活性化された時に通常おこる増殖停止において役割を果たしているだけではなく、細胞死においても役割を果たしている可能性があることが明らかにされた。

卵巣摘出は認知症と関連する

新たな試験によると、癌以外の理由で一側あるいは両側の卵巣を閉経前に摘出した女性では、高齢期に認知機能の問題を抱えたり認知症の発症リスクが増大するという。しかし卵巣摘出を受けた後、少なくとも50歳までエストロゲン補充療法を受けた女性ではリスク増大がみられなかった。この研究は「エストロゲンによる脳保護効果には一定の期間枠」があるという仮説を裏付けていると、Neurology誌の9月11日号に研究者らは記している。

この研究は25年以上追跡した約3000例の女性を組み入れている。メイヨー・クリニックのDr.Walter Rocca氏らは片側卵巣を摘出した813人の女性と両側卵巣を摘出した676人の女性、および試験開始時に卵巣を摘出していなかった比較群の女性を研究した。女性の約半数が卵巣嚢腫や炎症などの良性疾患により卵巣摘出を行っており、別の女性達は卵巣癌予防のため卵巣摘出を行っていた。卵巣癌やエストロゲンが関与する別の癌(乳癌が多い)で手術を受けた女性は、術後まもなく死亡するリスクが高いため除外した。

研究者らは、この関連性を説明できる可能性のある3つのメカニズムを挙げている。1つ目は卵巣摘出によってエストロゲン不足がおこり、生物学的変化が開始されリスク上昇の原因となった可能性があること。2つ目は、卵巣から分泌されるエストロゲンよりも、むしろプロゲステロンやテストステロン不足が関与している可能性があること。3つ目は卵巣摘出のリスクと、認知機能障害および認知症のリスクの両方を独立して増大させる感受性遺伝子が原因である可能性があること、である。

この試験の長所は追跡期間が長期であることと、研究対象となった女性が一般集団の代表であることなどである。マイナス面は認知機能の評価に電話によるインタビューを用いたこととインタビュー実施率が62%であったこと。さらに手術実施期間が1950~1987年であり、術式やエストロゲンの使用法が今日と異なっている可能性がある。

それでもなお、この知見によって閉経前の女性に対する予防的卵巣摘出や、卵巣摘出術後のエストロゲン治療の使用が再評価されるべきである、と研究者らは語る。「本試験結果は卵巣癌に対し高リスクにない多くの女性において重要である。女性たちは、予防的卵巣摘出のリスクとベネフィットを考慮したり、手術後の治療を考える場合には担当医に助言を求めるべきである。」と、Dr.Rocca氏は語る。

遺伝子、環境、衛生イニシチアチブは最初の助成金交付先を発表

遺伝子学者と環境科学者との例のない共同作業である遺伝子、環境、衛生イニシチアチブ(Genes, Environment and Health Initiative:GEI)の一環として、NIHは資金援助を行う最初のプロジェクトの選択をおこなった。研究者らは、虫歯や心疾患、癌、糖尿病などの一般的な疾患に取り組むため、全ゲノム関連研究で用いられている急速に進歩中の技術を、遺伝的リスク同定のために用いる予定である。環境に関する研究は、環境要因の評価に使用可能な、個人曝露量を正確に測定する小型の装着型センサーに関する新技術の開発から開始する予定である。最後の研究戦略としては、疾患リスクを増大させる遺伝的変異が環境曝露によって異なるかどうかを検証する。

NIHは初年度に、全ゲノム関連の8試験、遺伝子型の研究センター2ヵ所、コーディネートセンター1ヵ所、30以上の環境技術プロジェクトに対して資金提供する予定である。NCIのDCCPSが、同イニチアチブの研究の一部である「食事と運動に関する改善策:Improved Measures of Diet and Physical Activity」の主導機関である。

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斉藤 芳子、Okura  訳
林 正樹 (血液・腫瘍科) 監修

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