2007/08/21号◆スポットライト「乳癌の減少を考察する」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/08/21号◆スポットライト「乳癌の減少を考察する」

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2007/08/21号◆スポットライト「乳癌の減少を考察する」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年8月21日号(Volume 4 / Number 24)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇スポットライト◇◆◇

乳癌の減少を考察する

米国の大規模健康保険に加入している女性を対象とした新規研究によって、1980年初頭からホルモン療法の使用がこの集団における乳癌発症率上昇および低下に重要な役割を占めていることが示唆された。

この研究では、1980年から2006年までの期間において、カイザーパーマネンテ・ノースウエスト健康保険に加入している女性のマンモグラフィーによるスクリーニング、ホルモン療法および乳癌罹患率の変化について述べられている。

この研究結果によって、マンモグラフィーによるスクリーニングおよびホルモン療法が乳癌発症率の変化に関連していることが示されている。しかし、スクリーニング率は1991年から2006年にかけて事実上変化がなかった。このため研究者らは、ホルモン療法が1990年初頭からの乳癌発症率の増加と減少の原因であろうと示唆している。

「ホルモン使用の傾向は、研究者らが長年問題としてきた乳癌発症率の変動を説明するのに長い経緯を辿った。」と、カイザーパーマネンテセンター・ヘルスリサーチ部門のDr.Glass氏は述べている。同氏は国立癌研究所(NCI)による癌疫学・遺伝子学部門(DCEG)のDr.Hoover 氏およびDr. Lacey氏らと共に本研究の共同責任者であった。
8月1日発行のJournal of National Cancer Institute(JNCI)誌によると、女性のマンモグラフィー検診率は2000年から2001にかけて若干減少したが、2005年および2006年には再び増加に転じた。

本研究結果は単独の母集団から得られたものではあるが、カイザーパーマネンテ健康保険の加入者の乳癌罹患率は米国人口を対象とした統計結果とほぼ一致している。

「この研究によって、米国において乳癌に一体何が起きているのかということについて、最も包括的で最新の状況が把握できる」、とDr. Lacey氏は述べている。

カイザーパーマネンテ健康保険の加入者において、1980年代初頭から1990年代初頭にかけて乳癌発症率は26%上昇しているが、これは、マンモグラフィーによるスクリーニングおよびホルモン使用の増加と並行している。発症率はその後10年間緩やかに上昇し続けた。この第2回目の乳癌発症率の上昇は、マンモグラフィーのスクリーニング率が一定であった時期に、ホルモン使用の増加に並行して上昇した。

2002年7月に女性の健康イニシアチブ(WHI)試験によって、エストロゲンとプロゲスチンを併用することの健康リスクが示された後、多くのカイザーパーマネンテ健康保険の加入者やその他何百万人もの女性たちはホルモン使用を止めた。2003年以降のカイザーパーマネンテ健康保険の加入者における乳癌発症率の急激な減少は、この集団においてホルモン療法を受ける者が75%減少したことに伴い下降した。

「ホルモン療法の使用はWHIによる上記の結果が発表される以前から次第に減少していた」と、Dr.Lacey氏は述べている。また同氏は、「2003年の劇的なホルモン療法の使用減少が注目されてきたが、この減少に導いた原因は既にそれより以前に存在していた」とも述べている。

本研究者らによる観察結果は、既に刊行されているもの、および刊行準備中のものを含めたその他の研究結果と一致していると、テキサス大学M.Dアンダーソンがんセンター所属のDr.Berry氏およびDr.Ravdin氏は同JNCIの論説で述べている。

「ホルモンの使用は依然重要な公衆衛生の問題の一つとして残っている」とDr.Glass氏は述べている。また同氏は、「何百万人もの女性が今もなおホルモンを使用しており、なかにはこうした研究結果にも関らず、ホルモンは安全で効果があり、女性になんら害はないと信じている医師もいる。」とも述べている。

本研究では、カイザーパーマネンテ健康保険の加入者全体における診療・治療、および罹患率の経時的推移について調査した。Dr.Glass氏とそのグループは、カイザーパーマネンテのデータベースを利用して各加入女性の薬局、スクリーニングおよび疾病記録をリンクさせる計画を立案中である。この研究結果によって、ホルモン治療を中止した女性がスクリーニングを受けなくなったり、癌の診断がなされる可能性が減少するかどうかを明らかにすることができるかもしれない。

Dr.Glass氏およびDr.Hoover氏による1990年に行われた研究のフォローアップである本カイザーパーマネンテの研究によって、複雑なパズルを解く鍵がそれが必要とされているときに得られた。

「ここで得られたものは、成り行き的実験が長期間かけて結果が現れるという良い例である。」と、Dr Glass氏は述べている。また同氏は、「異なる影響力の役割をそれらが確立されるにつれて見ることができるだろう」とも述べている。

 

2003年に何が起きたのか?2002年から2003年の間に、米国では乳癌発病率が7%近く減少し、2004年度を通じて発病率は低いままであった。この急激な減少は昨年12月に報告され、そのときから研究者らはこの良いニュースの説明を試みてきた。原因についてコンセンサスや証拠となるものは存在しないが、ホルモン療法の役割に多くの注目が寄せられている。昨年5月に掲載されたDr.Berry氏およびDr.Ravdin氏による2003年の乳癌発症率低下に関する分析について、8月2日付発行のNew England Journal of Medicine誌に編集者へ寄せられた7通のレターが掲載された。乳癌発症率低下の大半は、ホルモン使用の急激な減少に起因しているとした上記報告の結論を支持するレターもあったが、一方ではこの説に異議を唱えるレターもあった。

1997年から2003年に実施された60万人を超える女性を対象としたスクリーニングおよびホルモン使用に関する前向き研究はさらにこの説を支持している。ホルモン使用の減少は「より可能性がある因子」と考えることはできるが、マンモグラフィー検診率の減少をもって米国における最近の乳癌減少率を説明できるとすることは疑わしい、とBreast Cancer Surveillance Consortium(乳癌サーベイランス協会)の研究者らは8月14日付のJNCIオンライン版に報告した。さらに理解を深めるためには、ホルモン補充療法が乳癌進行に与える影響および女性がこの療法を中止したときにリスクがどのように変化するかをモデリングしている、Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network(キャンサー・インターベンション・アンド・サーベイランス・モデリング・ネットワーク)でさらに詳細な情報が提供されている。

 

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佐々木 了子 訳
島村 義樹(薬学)監修

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