2007/08/21号◆特別レポート「癌バイオマーカーとしての糖鎖の研究」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/08/21号◆特別レポート「癌バイオマーカーとしての糖鎖の研究」

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2007/08/21号◆特別レポート「癌バイオマーカーとしての糖鎖の研究」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年8月21日号(Volume 4 / Number 24)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇特別レポート◇◆◇

癌バイオマーカーとしての糖鎖の研究

癌を検出し、癌のリスクを評価する生物学的マーカーとして糖鎖を用いることができるかどうかを明らかにするため、NCIは新たなイニシアチブ(先導的な試み)に着手した。この1560万ドルの拠出を受けた5年計画のイニシアチブは、重要な分子クラスでありながら研究が進んでいないのであればその分子に焦点を当てることによって、遺伝子バイオマーカーおよびタンパク質バイオマーカーを特定しようとする取り組みを補完するものになる。

グリカンとしても知られる複合糖鎖は、遺伝子およびタンパク質と同じく、癌が発達するにつれて変化すると考えられる。新たなイニシアチブの目標は、早期癌にかかわる一連のグリカンベースのバイオマーカーを特定し、特定したバイオマーカー集団を臨床検体で検証することにある。

「グリカンは、最も多くの癌バイオマーカーを発見できるのではないかと期待されている物質のひとつである」と、NCIの癌予防部門(DCP)のDr.Karl Kruegar氏は言う。同氏は、「癌および癌リスク検出のための糖鎖生物学者の研究提携(Alliance of Glycobiologists for Detection of Cancer and Cancer Risk)」と呼ばれるプロジェクトを率いている。

グリカンはいくつかの糖が相互に連結したものであり、多くの場合、複雑な分枝鎖状の構造体を形成してタンパク質や脂質に結合し、これらの分子機能を変化させている。何十億年も前から、グリカンは細胞表面にきわめて多く存在し、多くの生物学的プロセスを仲介していると広く考えられている。

現在、開発途上にある最も有望な癌バイオマーカーのひとつは、GP73として知られる「糖タンパク質」である。このマーカーは肝臓癌に向けたものであり、NCI早期発見研究ネットワーク(Early Detection Research Network、EDRN)によって今後数ヵ月のうちに検証試験を受ける予定である。

EDRNはDr. Karl Kruegar氏らのプロジェクトに参加している研究者に、きわめて重要な検証プロセスで専門的技能を提供しているが、多くの有望なバイオマーカーがこのプロセスを突破できずに終わっている。

NIHの枠を超えて同盟に加入しているのは、国立総合医科学研究所(National Institute of General Medical Sciences、NIGMS)の出資を受けた機能グライコミクス・コンソーシアム(Consortium for Functional Glycomics)のほか、国立研究資源センター(National Center for Research Resource、NCRR)の出資を受けたいくつかのグライコミクス・糖鎖工学資源センター(Glycomics and Glycotechnology Resource Center)である。

グリカンは構造的にDNAやタンパク質より複雑であるため、大規模な糖鎖研究への取り組みが遅々として進まない状況が続いてきた。しかし、糖鎖チップの開発など近年の技術の進展により、今回のイニシアチブが実施可能となった。

「中核となる技術が整備されたことは、研究者がインフラ構築よりバイオマーカーの発見に集中できるようになったことを意味している」と、イニシアチブを後援するNCI癌バイオマーカー研究グループの主任、Dr.Sudhir Srivastava氏は語る。

同氏は、このイニシアチブは、バイオマーカー開発に向けたNCIの取り組みのなかでもきわめて重要な一端を担うものであると付け加える。「DNAやタンパク質を解析する従来の方法では、グリカンが関わる癌関連の変化を検出することができない」という。

グリカンに関する情報が得られれば、前立腺癌の前立腺特異抗原および卵巣癌のCA-125など、現在用いられているタンパク質マーカーの利用性を改善することができると思われる。この2つの蛋白質はいずれもグリカンを構成要素としており、その分子的特徴を解析することで医師および患者にとって有用な情報が得られるようになると研究者らは言う。

提携のメンバーは先週、第1回会議のためNCIを来訪した。糖鎖生物学者が、この分野の新しい技術や識見を応用して癌バイオマーカーの検出という難題に取り組むことを目標として一堂に会するのは初めてのことであった。

イニシアチブが成功すれば、糖鎖生物学への関心が高まり、遺伝子およびタンパク質の影にいた糖鎖が一躍注目されることになろうというのが、一部参加者の見解であった。

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Nobara 訳
大藪 友利子(生物工学)監修

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