2007/08/07号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/08/07号◆癌研究ハイライト

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2007/08/07号◆癌研究ハイライト

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年8月07日号(Volume 4 / Number 23)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

転移性精巣腫瘍に有効な治療方法

インディアナ大学とワルサー癌研究所の研究者らは、転移性あるいは再発精巣腫瘍に対する有効な治療方法を開発した。この治療方法は、カルボプラチンとエトポシドの高用量化学療法に末梢血管細胞移植を補助として行うものである。New England Journal of Medicine誌 7月26日号に掲載されたDr.Larry Einhorn氏らによる後ろ向き調査では、1996−2004年の間の初回治療に反応しなかった184人の連続した患者を対象とした。(ほとんどの転移性精巣腫瘍の患者は初回治療には反応を示す。)

セミノーマ、非セミノーマのどちらの患者においても、無病生存率で有意義な結果が認められた。中央値48ヶ月の追跡調査では、116人が完全寛解の状態であった。

しかしながら、この好ましい結果はいくつかの重要な予後因子により様々である。第二選択治療として受けた患者は、第三選択治療以降の治療として受けた患者より無病生存の人が多い(70% 対45%)。また良い反応を示したケースは、シスプラチンに感受性があった患者(68%:45%)、初回の化学療法に良い反応を示した患者(73%:55%)、そしてより好ましい予後因子を持つ患者(80%:55%)であった。

研究者らは救済療法の前に、現存する長期生存に関係した関連予後因子を捕らえるための新しいアルゴリズムを開発した。International Germ Cell Cancer Collaborative Groupのステージ分類を含む彼らのモデルは、患者を効果的に、低リスク、中間リスク、高リスクのグループに分類していると説明した。

PET検査でホジキンリンパ腫の再発を予見できる

Journal of Clinical Oncology誌7月23日オンライン版に掲載された研究結果によると、ホジキンリンパ腫の標準化学療法を2サイクル投与した後に行ったポジトロン断層撮影法(PET)検査では、92%の正確さで治療中に病状が進行するか又は治療後直ちに再発するかを予見できる。医師はこの予後データを使い、どのハイリスク患者がさらに集中的化学療法にスイッチすることで利益が得られるかを判断することが出来る。

260人の患者が前向きで単一の臨床試験に参加した。参加患者全員が進行性ホジキンリンパ腫で、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチンとダカルバジンの併用化学療法(ABVD)を6サイクル投与される予定であった。患者は基準となるPET検査と化学療法2サイクル後に2度目のPET検査を受けた。

最低でも2人の専門家がPET検査陽性(残留癌が見られる)あるいはPET検査陰性を判定し、陽性と判定されたものは第3の専門家によってさらに検討された。研究者らは、中央値2年の追跡調査で無増悪生存率と全生存率を記録し、2回目のPET検査と患者の国際予後因子スコア(IPS: International Prognostic Score)のどちらが病状の進行や再発リスクより良く予見することが出来るかどうかを検討した。

50人の患者が2サイクルの化学療法の後にPET検査陽性であり、そのうち86%にあたる43人は化学療法中に病状の進行もしくは治療直後の再発が認められた。化学療法2サイクル後のPET検査が陰性であった210人の患者では、5%以下の10人だけに病状の進行あるいは再発が認められた。多変量解析では、IPSは予後情報を追加することはなかった。

「結論として、初期の中間的なPET検査は進行性ホジキンリンパ腫の最も有益な予後因子要素と思える。この予後測定方法は腫瘍の化学療法感受性テストの代理となり、そして、適切な治療戦略が異なる2つのカテゴリーの患者を識別する。」と著者らは述べた。

不活性化遺伝子は高悪性度肺癌を示唆するかもしれない

ある癌において腫瘍抑制の働きを持つと知られている遺伝子の不活性化は、悪性度が高い肺癌を示すかもしれないと、ダナファーバー癌研究所の研究者らによる報告がNature誌8月5日オンライン版に掲載された。

非小細胞肺癌(NSCLC)の3つの亜系に対するマウスの実験で、研究者らは、LKB1遺伝子の影響を受けなかったマウスと比較して、NSCLCで一般的に見られるKRAS遺伝子の変異体と共にLKB1遺伝子の不活性化があると腫瘍細胞のさらなる分化と転移を導くことを実証した。NSCLC細胞に関するさらなる研究で、非小細胞肺癌の3つの亜系全てにおいてLKB1遺伝子はしばしば不活性化あるいは変異していたことが判明した。

非小細胞肺癌のマウスモデルでは、KRAS遺伝子の変異体は、肺癌では通常不活性化している他の2つの遺伝子p53とInk4/Arfと「協力」して腫瘍や転移を成長させている。しかしながら、主任研究員であるDr Kwok-Kin Wongらは、「最強の協力はLKB1のホモ(両方の遺伝子の)不活性化でみられる」と説明した。KRAS変異体と不活性化したLKB1をもつ腫瘍は、短時間に成長し、非小細胞肺癌の3つの亜系全てに進行し、そして、転移を生じやすいようであった。

マウスモデルの腫瘍サンプルと腫瘍細胞系の遺伝子発現のプロファイリングにより、NEDD9とCD24を含むいくつかの遺伝子の発現レベルはLKB1遺伝子にかなりな影響を受けており、そして、腫瘍の発生、分化、成長に影響を及ぼしていることを特定した。研究者らが、LKB1が不活性化しているNSCLS細胞株のNEDD9レベルを少なくするために短いU字型のRNAを用いた時、腫瘍細胞の転移や浸潤が半分以下に減少した。

「これらの研究は、LKB1遺伝子が肺の腫瘍形成において重要な防御機構であることを立証する」と著者らは結論付けた。

小児癌サバイバーの神経認知問題に対するガイドライン

小児癌と診断された子供の25万人以上が治療5年後生存している。しかし、これら患児の50~60%は、発展途上の脳にとって毒性のある治療のために神経認知機能障害のリスクがある。介護者がこのような影響を認識するのを助け、小児癌の子供への介入、擁護が可能となるように、小児腫瘍グループ(COG: Children’s Oncology Group)の作業部会は最近、長期的で、リスクに基づいた、暴露に応じたガイドラインを出版した。

最大のリスクは、脳腫瘍と最も一般的な小児癌である急性リンパ性白血病の患児サバイバーである。考えることや推理することに対する機能障害は、多分、頭蓋への放射線治療、メトトレキセートやシタラビンのような抗癌剤治療や、プレドニゾロンやデキサメタゾンなどの副腎皮質ホルモンといった、多くの小児癌に対する標準治療が起因している。

これらの問題は微小なものから劇的なものまである。そして、しばしば治療数年後に遅発事象として出現することがある。研究者らは、注意・集中、処理スピード、視覚・知覚能力や記憶といった、主に発展途上にある小児の脳機能に対する手術や治療の影響によるものと思っている。

著者らは、これらの障害は、「適時・適切な方法で認知し解決に取り組まれるべきである。小児サバイバーの治療にあたっているプライマリーケア開業医は、リスクの高い児を知っているべきであり、これらの結果通学問題が生じることを認識可能である必要がある、そして検査、介入および擁護のためのアプローチを持っているべきである。」と主張している。

これらの提言は、COG Long-Term Follow-Up Guidelines Task Force on Neurocognitive/Behavioral Complications After Childhood Cancerから出された。これらはArchives of Pediatrics and Adolescent Medicine誌8月号に掲載されている。このガイドラインは、全ての長期フォローアップガイドラインを含んでいるCOGの基本資料でも見ることができる。

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Nogawa 訳
林 正樹(血液・腫瘍医)監修

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