2007/07/24号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/07/24号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2007/07/24号◆癌研究ハイライト

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年7月24日号(Volume 4 / Number 22)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

____________________

◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

新規治療薬によって転移性乳癌の生存期間は延長されてきた

Cancer誌オンライン版に7月23日付けで掲載されたカナダ人対象試験から、転移性乳癌(MBC)と診断されたブリティッシュ・コロンビア州内の女性たちの間で過去十年にわたり生存期間が延長したこと、およびこれは1990年代に導入された新しいMBC治療薬に関連することが明らかになった。

ブリティッシュ・コロンビア州癌研究所(BCCA)の研究者らは、カナダ各州の女性2,150名のデータを解析した。当該女性は、1990年代における4つの「時代コホート」のうち、1つのコホートにて診断および治療を受けていた。最初のコホート(1991~1992年)をベースラインとし、その後のコホートは新しいMBC治療薬の導入時期(パクリタキセルおよびビノレルビン[1994~1995年]、アロマターゼ阻害剤およびドセタキセル[1997~1998年]、トラスツマブおよびカペシタビン[1999~2001年])とマッチさせた。

研究者らは、「MBCに罹患した女性について、生存期間が 有意に延長した。」と報告している。さらに、「最初の2つのコホートで差は認められないが、後の2つのコホートでは全生存期間の有意な延長が認められた。」と続けている。コホート1~4の患者における生存期間の中央値はそれぞれ、436日間、450日間、564日間、および661日間であった。「1990年代後期にブリティッシュ・コロンビア州内でMBCの診断を受けた女性の生存期間は、1990年代初期/中期に診断を受けた女性からなる同一コホートと比較して、約30%延長した。」とも述べられている。

さらに「MBCは依然として治癒困難な疾患ではあるが、本試験にて、現在MBCと診断されている女性に対して明るい兆しが示された。また、より効果的な治療法を発見するための継続的研究によって将来的に転帰が改善されるであろうという期待とエビデンスが得られた。」と結論づけられている。

「腫瘍ペイント(Tumor Paint)」によって多くの腫瘍で切除技術向上が可能に

フレッド・ハッチソン癌研究所の研究班とシアトルの共同研究者らは、高い分解度で多種類の腫瘍を標的とする蛍光バイオコンジュゲートを開発した。同研究結果はCancer Research誌7月15日号に詳述されている。

研究者らが「腫瘍ペイント」と名づけた分子は、クロロトキシン(哺乳類には無毒性であり、グリオーマ細胞を標的とするとされるサソリ毒タンパク質)とCy5.5(細胞内での酵素切断を必要とせず、また水やヘモグロビンによる光吸収度が最小の状態で蛍光光を放出する分子)から作られている。

初期バージョンの腫瘍ペイントをマウスに投与したところ、クロロトキシンとCy5.5の結合によって腫瘍標的能が向上することが明らかとなった。研究者らは「手術を模倣した条件下において、数百の細胞のレベルまで正常細胞と癌病巣とをはっきりと区別できる。」と記している。

同研究者チームは、このバイオコンジュゲートを用いて、髄芽腫、肉腫、前立腺癌、および大腸・小腸癌のマウスモデルを対象として試験を実施した。その結果、投与後15日間にもわたってこれらの腫瘍を発光させることができた。

細胞膜表面でクロロトキシンが特異的に標的とするのはマトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP-2)であろうと、研究者らは考えている。MMP2を含むプラスミドを腫瘍ペイントと結合できなかった細胞にトランスフェクション(遺伝子導入)したところ、腫瘍ペイントに簡単に引きつけられることが明らかになった。顕微鏡下にて、トランスフェクション細胞内に腫瘍ペイントとMMP-2が凝集しているのが確認された。しかし、プルダウンアッセイ(免疫沈降法)では、腫瘍ペイントとMMP-2との間の直接的結合は認められず、また、他の実験でも、それらの間の酵素関係を証明できなかった。

アルゴリズムを用いて抗癌剤に対する反応を予測する

シャーロッツビルにあるヴァージニア大学の研究者主導のチームが、相対的マイクロアレイデータおよび米国国立癌研究所(NCI)所有の60ヒト癌細胞株(NCI-60パネル)の抗癌剤に対する反応結果を用いるアルゴリズムを開発し、他の細胞株やヒト腫瘍における反応を予測した。Proceedings of the National Academy of Sciences誌7月24日号にて発表された本研究では、同アルゴリズムを使用し、膀胱癌に対して活性を有すると考えられる薬剤を特定している。

アルゴリズム「COXEN」は、いくつかの段階からなる。まず、1つ目の細胞株群(今回の場合、NCI-60パネル)にて薬物の分子活性を測定する。次に、これらの細胞における基本的な分子特性を評価し、どの分子特性で薬物活性を最も正確に予測できるか特定する。さらに、2つ目の細胞株群でこれらの特性を評価し、両細胞株群において両方が発現のパターンを示す分子特性の一部を特定する。最後に、1つ目の細胞株群での薬物活性および両細胞株群で共通にみられた分子特性を基に、2つ目の細胞株群での薬物活性を予測する。

2つ目の細胞株群として40ヒト膀胱癌細胞株(BLA-40)パネルを用いて試験を実施したところ、COXENにより、シスプラチンおよびパクリタキセルに対するBLA-40の反応を有意に予測できた。その後研究者らは、NCI-60 in vitroデータからヒト腫瘍におけるin vivo反応を同アルゴリズムで予測できるか検討するため、アルゴリズムに修正を加えた。2つの乳癌臨床試験(1つはドセタキセルの試験、もう1つはタモキシフェンの試験)についてNCI-60分子特性およびマイクロアレイデータを比較したところ、両薬剤に対する臨床反応をCOXENで有意に予測できた。

最後に研究者らはCOXENを用いて、NCI-60パネルでスクリーニングした45,545種類の実験化合物に対するBLA-40細胞の化学感受性パターンを予測した。その結果、BLA-40細胞の50%以上が感受性を示すと予測される化合物8種類を特定し、早期相の臨床試験に向けて候補となる化合物を見出した。

NCIの癌研究センターのJohn N. Weinstein氏を含む研究者らは、「COXEN法を臨床で使用するにはさらに検証する必要がある。」と述べている。同アルゴリズムは科学者に向けて、2007年9月にhttp://www.coxen.orgにて閲覧可能となる。NCI-60マイクロアレイデータはhttp://discover.nci.nih.govにてすでに閲覧できる。

SPORE研究者ミーティングにて今後予定されているプログラム変更が話題となる

7月7日~10日に、NCIは特定優良研究プログラム(SPORE)トランスレーショナルリサーチ助成金のための第15回年次研究者ワークショップを開催した。この目的は、基礎研究の成果を研究の場から臨床の場にできる限り速やかに移行させる上で、参加している各癌センターを援助することである。現在NCIは、14種類の癌を網羅する57個のSPORE助成金に資金提供している。

2007年度研究者ワークショップでは、同じ種類の癌に取り組んでいるSPORE研究グループに、結果を共有して共同研究を行うきっかけを作る機会を設けた。土曜日の特別セッションでは、転換研究にてバイオマーカーエビデンスを用いる上での問題点に重点が置かれた。例えば、臨床試験に向けた組織の入手法および被験者数の必要要件、品質保証のための方法、バイオマーカー(候補)の臨床使用におけるバリデーションなどが挙げられる。

今年度、共同研究に関するテーマが重要視されるようになった。なぜならば、SPOREプログラムでは、プログラム上の重大な移行を行う準備が整ったからである。NCIの臓器系ブランチ(Organ Systems Branch)主任を務めるDr. Jorge Gomez氏は、14種類の癌にSPOREの重点を置き続けるのではなく、2008年からは助成金の獲得競争においてあらゆる癌を対象とする予定であると述べている。

Dr. Gomez氏は「本プログラムは非常に広く知られるようになった。多くのグループが競争および参加を望んでいる。」と述べている。さらに同氏は、現在1つの研究所からの申請が多数を占めるが、コンペティションを増やすことで、異なる施設からの研究者たちが1つのSPORE助成金を申請するようになることを期待している。

乳癌サバイバーにおける野菜/果物を多く含む食事についての検討

乳癌治療後に野菜/果物や食物繊維の豊富な低脂肪食を摂取した女性では、1日に野菜/果物を5皿以上摂取した同一条件の女性と比較して、再発リスクの減少が認められなかった。7年後の両女性群では、再発リスク、新たな原発乳癌の発症率、および全体的な死亡リスクは実質的に同等であった。

Journal of the American Medical Association(JAMA)誌7月18日号の記事によると、ベースライン時に野菜/果物や食物繊維が不足したり、高脂肪食を摂取したりしていた女性も、インターベンションによる利益を得られないようであった。本研究結果が得られたWomen’s Healthy Eating and Living(WHEL)ランダム化比較対照試験には初期乳癌の治療を受けた女性3,088名が組入れられた。

研究者らは、本結果を試験対象外の集団に当てはめることに注意を促している。今回の試験対象者には、初期治療を受けた女性が含まれるが、70歳以降に診断を受けた女性は除外されている。今回の結果は、Women’s Intervention Nutrition Study11(WINS)の中間結果とは異なると考えられる。同試験では、低脂肪食が乳癌再発の予防となる女性もいる可能性が示唆されている。

JAMAの論説によると、両試験間における体重増加および体重減少の異なるパターンが、結果をいくらか左右したものと考えられる。WHEL試験の両群の女性では、平均して体重が増加したが、WINSのインターベンション群の女性では、体重が減少した。乳癌生存者を対象として身体的活動およびエネルギー摂取に基いて介入方法を評価する新たな試験が必要であると、論説は締めくくられている。

******
斉藤 芳子 訳
小宮 武文(NCI研究員)監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward