2007/07/24号◆スポットライト「アフリカ系米国人女性およびヒスパニック系女性に多く発症するトリプルネガティブ乳癌」 | 海外がん医療情報リファレンス

2007/07/24号◆スポットライト「アフリカ系米国人女性およびヒスパニック系女性に多く発症するトリプルネガティブ乳癌」

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2007/07/24号◆スポットライト「アフリカ系米国人女性およびヒスパニック系女性に多く発症するトリプルネガティブ乳癌」

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年7月24日号(Volume 4 / Number 22)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇スポットライト◇◆◇

アフリカ系アメリカ人女性およびヒスパニック系女性に多く発症するトリプルネガティブ乳癌

若いアフリカ系米国人女性に偏って見られるある種類の乳癌の発症頻度の増加が、最近ヒスパニック系女性でも見られるようになってきている。この乳癌は「トリプルネガティブ(三重陰性)」乳癌と呼ばれるが、この癌細胞は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を欠如しているため、これらの受容体を標的とするタモキシフェンまたはトラスツズマブといった薬剤によって制御することができず、通常の乳癌患者に用いられる効果的な治療の選択肢を用いることができない。

トリプルネガティブ乳癌は主として、basal-likeと呼ばれる分子サブタイプによって構成されている。患者が有する乳癌の異なる分子サブタイプは、現在では遺伝子発現プロファイリングによって確認することができる。

乳癌の分子サブタイプに米国民の間で偏りがあるかもしれない、という最初の示唆は数年前に遡り、2006年にカロライナ乳癌試験(CBCS)によって、閉経後のアフリカ系米国人女性の14%、および年齢を問わない非アフリカ系米国人女性の16%と比較すると、乳癌と診断された閉経前のアフリカ系米国人女性の39%が「基底細胞様 (basal-like)」乳癌を有することが示された。公衆衛生研究所カリフォルニアがん登録部門による2007年始めに行われた研究によると、若いアフリカ系米国人女性のトリプルネガティブ乳癌発症率が他の人種より高いこと、およびヒスパニック系女性においても、小規模だが顕著な有病率の増加が確認された。

研究者らは、さまざまな人種および民族集団の中で分子サブタイプがなぜ偏っているのか、という複雑な問題に答えようと現在試みている。ノースカロライナ大学乳癌センターの医長であり、CBCS論文の主執筆者でもあるLisa Carey医師は、「乳癌にサブタイプが存在することを認識したなら」、「乳癌の原因が何かと問うことを止めて、何が異なるサブタイプの原因となっているのか、ということが問題とすべき疑問点である」と言及している。

看護師健康調査(Nurses Health Study)、女性の健康イニシアチブおよび複数の小規模研究による興味深いデータによって、乳癌のサブタイプが異なれば、それらに対する危険因子もそれぞれ異なる可能性があることが示唆されている。CBCSおよびポーランドで実施された大規模な乳癌の集団症例コントロール試験のフォローアップ結果によって、基底細胞様(basal-like)乳癌の潜在的な危険因子として、ウエスト・身長比が高いこと、幼児期から過剰体重であること、妊娠後授乳経験が無いこと、母乳抑制剤の使用およびその他様々な因子が確認された。

シカゴ大学の総合医療格差研究センター(CIHDR)所長であるDr.Sarah Gehlert氏が率いる研究者チームは、ストレスおよび社会的隔離が乳癌発生の原因となるか否かを判断するために、シカゴに住むアフリカ系米国人女性の集団を対象にして、社会環境(犯罪を含む)、社会的隔離の一因となるその他の地域因子、報告されたストレス認識度およびストレスへの反応に関連するホルモンである唾液コルチゾールについて観察する、多くの専門分野にわたる独自の研究を開始したところである。同氏は、「この研究は完全に統合化されたモデルである」、と説明した。

「われわれは自分たちが行った動物実験によって、腫瘍成長において、社会的隔離は非常に重要な機構であると認識した」、とDr.Gehlert氏は述べた。また、「犯罪が多発する地域で不安を抱えて暮らし、そのストレス処理を容易にする多くのサポートを地域から得ることができずにいる女性は、散在的な突然変異をより発生する傾向があり、『予後が悪い』乳癌を発症するかもしれないというのが研究仮説である」と同氏は説明した。

この統合化モデルの重要な部分は、参加者から腫瘍組織を収集したことである。既に、本研究の中間結果によって、高いストレスが報告された女性の腫瘍からは、グルココルチコイド受容体が発見されている。これはストレス反応が変化することによって、アポトーシスが失敗する一因となり、その結果、腫瘍成長につながる可能性があることを示している。

収集された組織は、シカゴ大学の医学・人類遺伝子学講座の教授であり、CIHDRの4人のプロジェクトリーダーの1人であるDr.Olufunmilayo Olopade氏によって分析される予定である。Dr.Olopade氏によるナイジェリアおよびセネガルに住むアフリカ女性を対象とした以前の研究では、アフリカ系米国人女性よりもさらに、エストロゲン(受容体)陰性乳癌の罹患率がが高いことが示されている。同氏の研究室では、CIHDRによって研究されているトリプルネガティブ乳癌で見られる偏りがBRCA1 および BRCA2に類似した遺伝子変異に起因する可能性があるか否かを検討するため、深く研究に関わっている。

ヒスパニック系住民でのトリプルネガティブ乳癌の影響をより理解すべく、米国全域でも現在研究が始められている。テキサス大学MDアンダーソン癌研究所の疫学講座教授であるDr.Melissa Bondy氏は、「このトリプルネガティブ現象およびメキシコ系アメリカ人も同様の『発現率の差』に直面しているのかということを懸念している」と説明した。また、Dr.Bondy氏と同僚らはテキサス州およびアリゾナ州に住むメキシコ系アメリカ人女性およびメキシコ北部およびグアダラハラ州出身のメキシコ女性を対象にして、トリプルネガティブ乳癌の危険因子を調査する研究を始めている。

これらのトリプルネガティブ乳癌の集団でのスクを減少させる手助けする方法を見つけ出すこと、および従来の手術、放射線治療および化学療法に限定されるトリプルネガティブ乳癌に対する新たな治療の選択肢を開発することが、研究者らにとって次のステップである。

「カロライナ乳癌試験の本質は、集団ごとの異なるサブタイプの発現率、およびこれらに対する試験をデザインするために臨床関連性を見つけ出すことであった」、とDr.Carey氏は述べた。

Dr.Carey氏によるチームおよびその他の米国に存在するチームは現在、トリプルネガティブ乳癌の治療法を検討する大規模多施設臨床試験に参加している。これらの試験で検討されている投薬レジメンには、血管新生阻害剤であるベバシズマブの術前投与、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)によって引き起こされるもの以外の細胞内シグナル伝達経路を干渉する標的薬、およびトリプルネガティブに有効と考えられる白金系化学療法薬が含まれる。

— Sharon Reynolds

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佐々木 了子 訳
島村 義樹(薬学)監修

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