2007/07/10号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/07/10号◆癌研究ハイライト

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2007/07/10号◆癌研究ハイライト

同号原文NCI Cancer Bulletin2007年7月10日号(Volume 4 / Number 21)

2007年度エルメス・クリエイティブ賞
Eニュースレター部門金賞受賞

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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

大腸癌リスクに関する遺伝子マーカーを同定

別々に進められていた3つのゲノムワイド相関解析(GWAS)の結果がNature Genetics誌オンライン版の7月8日号に発表された。8番染色体上の遺伝子座(8q24)で、大腸癌(CRC)リスクを有意に増大させるいくつかの一塩基多型(SNPs)-DNAの一塩基が変化していること-が特定されたという。この座位は、以前に発表された研究では 前立腺癌リスクに重要な役割を果たすことが示されている。

一つ目の研究は、カナダの研究チーム主導で、4段階から成るプロセスを経てCRCリスクと関連するSNPsを特定、検証した。第一段階では、オタワ市のCRC患者1,257人と対照1,336人について、50,000個以上の塩基変化を含む3セットのSNPsを評価した。第二段階では、ワシントン州シアトル市と、ニューファンドランド島の2つの症例群および対照群を対象として、第一段階で特定された有望なリスクマーカー1,143個を検討した。第三段階では、スコットランドの初期のCRCの症例群および対照群を対象として、これまでの3集団で再現性がみられたリスクマーカー76個を検討した。この集団でさらに検証を重ねたリスクマーカー9個が、その後、第四段階としてスコットランドの別の症例群および対照群で検討された。

第三段階で確認されたリスク関連因子のうち2つが第四段階でも同様にみられたことから、研究者らが、ヨーロッパでの数件の研究結果と合わせて2つの遺伝子座8q24および9q24を比較したところ、CRCリスクを有意に増大させる8q24のSNPs 2個を検証するに至った。この多段階にわたる再現プロセスは、相関解析での再現性に関するNCI-NHGRIワーキンググループ(NCI-NHGRI Working Group on Replication in Association Studies)によってネイチャー誌に発表された最新のガイドラインに準拠したものである。

二つ目の研究は、南カリフォルニア大学によるもので、浸潤性CRC患者1,124人および対照群4,573人を対象として、過去に前立腺癌リスクに関する遺伝子マーカーとして特定された6個の変異について検討した。被験者はいずれも多民族集団から選ばれたアフリカ系アメリカ人、日系アメリカ人、ハワイ原住民、ラテン系アメリカ人およびヨーロッパ人の子孫であった。

その後、このグループでCRCリスクと有意に相関するものとして特定された8q24遺伝子座上の変異の1つについて、日系アメリカ人とヨーロッパ人の子孫を対象とした2つのサブ研究で、新たにCRC患者683人及び対照938人を追加し、さらに検討した。この変異は、一方の試験ではCRCのリスクマーカーとして再現性がみられたが、もう一方の試験ではみられなかった。しかし、この3つの試験の総合解析では、依然としてCRCリスクとの有意な相関を示した。

第三の試験は英国で実施されたもので、この試験で集団Aとしている家族性CRC患者930人と対照960人について、SNPs 550,000個以上をゲノタイピングすることに成功した。また、CRCリスクと相関する8q24のSNPsが特定された。その後、研究者らは、CRCリスクと最も強い相関を示したSNPsを3つの症例群および対照群で検討した(CRC患者4,361人と対照3,752人から成る集団B、CRC患者1,901人と対照1,079人の集団C、CRC患者1,072人と対照415人の集団D)。集団Dの患者に限り、CRCの家族歴があった。

最初の集団Aと3つの検証集団B、C、Dから収集したデータにより、「[このSNP]とCRCリスクとの関係を示す決定的な証拠が得られた」と著者らは話した。データをさらに解析すると、このSNPが、結腸および直腸の腺腫-非癌性腫瘍-発現リスクの上昇とも相関していることを示す証拠が得られた。研究者らはこの観察から、8番染色体のこの遺伝子座は、腫瘍の進行よりむしろ形成開始に関与しているのではないかとの考えを示している。

前立腺癌リスクの増大および糖尿病リスクの低下にかかわる遺伝子変異

前立腺癌に罹患しているアイスランド人男性および複数の健康な男性集団を対象とした遺伝子研究により、前立腺癌リスクを穏やかに増大させる2つの遺伝子変異が発見された。そのうちの1つの変異は、II型糖尿病(T2D)の予防作用を併せもつことがNature Genetics誌オンライン版の7月1日号に発表された。

この研究では、前立腺癌リスクをもたらす遺伝子配列の変異を探索するため、前立腺癌に罹患しているアイスランド人男性1,501人および対照11,290人についてゲノムワイド相関解析(GWAS)を実施した。このほか、3つの症例群および対照群を対象としたフォローアップ試験では、17番染色体上の2つの変異と前立腺癌との相関が確認された。そのうちの1つはTCF2遺伝子における変異で、この研究を行った研究者らによって、これがT2Dに対して予防作用をもつことが明らかになった。

この2つの遺伝子変異が、個人における前立腺癌リスクを増大させる作用は比較的小さなものにすぎない。しかし、これらの変異はきわめて頻度が高いために、2つを合わせると前立腺癌の人口寄与危険度(PAR)が36%におよぶと推定され、「公衆衛生学的観点からは重大である」と研究者らは言う。

研究者らが「最も興味をそそられること」は、TCF2の変異によって前立腺癌リスクとT2Dリスクとが相殺されることである。「少なくとも部分的には両疾患の逆相関の原因となるTCF2遺伝子の配列変異が発見されたことによって、個々の遺伝子変異がもつ多面的な[複数の作用の]影響による複雑な生化学的均衡を理解する一歩がもたらされた」と同研究者らは語っている。前立腺癌とT2Dとの間の逆相関は十分に確立されているが、これまでは、糖尿病男性の代謝環境、ホルモン環境の影響を中心として説明されていた。

有望な初期成績を示した第二のHPVワクチン

ヒトパピローマウイルス(HPV)16型および18型による感染を予防するワクチンの一つが中間解析で有望な結果を示したことが、Lancet誌オンライン版の6月28日号に発表された。このワクチンCervarix(サーバリクス)は、グレード2~3の子宮頸部上皮内癌(CIN2+)がいずれかのウイルス型のDNAを含んでいる場合でも90%の予防効果を示した。

この結果は、ワクチンの製造会社グラクソスミスクライン・バイオロジカルズ社の出資を受けて15~25歳の女性18,644人を対象に実施された大規模国際協同試験で得られたものである。この試験のデザインでは、CIN2+が23症例検出された後、初期結果を解析することになっていた。このうち2症例がワクチン投与を受けた女性9,258人から検出され、21症例がA型肝炎ワクチンの投与を受けた対照9,267人から検出された。平均フォローアップ期間は14.8ヵ月であった。

シンシナチ大学のDr. Jessica A. Kahn氏とアルバート・アインシュタイン医科大学のDr. Robert D. Burk氏は論説で、「この中間解析データは希望を与えてくれる」と記載した。しかし、報告にはCIN2+全体の低下率に関する推定値が提示されていないため、ワクチン投与が「現実に」公衆衛生に及ぼす影響について情報が提供されていないことも指摘している。この著者らは、若年者にワクチンを投与すれば公衆衛生面で最も有益であると考えられるが、ワクチン投与後も継続的なスクリーニングが必要であることに変わりはないと力説している。

この試験とは別に、NCIが共同出資し、NIH女性の健康研究オフィス(Office for Research on Women’s Health)およびコスタリカ保健省が支援してCervarixを検討する第3相臨床試験が、現在コスタリカで進められている。この試験により、本ワクチンが公衆衛生に及ぼす影響および本ワクチンの効果に関する情報がさらに得られるはずである。

国際的プログラムへの応募受付け

NCI国際事業オフィス(Office of International Affairs)では、2件のプロジェクトへの応募を受け付けている。

米国-日本共同癌研究プログラム(U.S.-Japan Cooperative Cancer Research Program (USJCCRP))は、NCIおよび日本学術振興会(Japan Society for the Promotion of Science)が1974年に開始し、連携を図っているプログラムである。USJCCRPはOIAの協力を受けて、癌の研究および治療を支えるための基礎科学、臨床科学、疫学/行動科学に関するワークショップを毎年設けている。

ワークショップは日本とアメリカで交互に開催される。USJCCRPは2007年および2008年、基礎科学に関する癌ワークショップを後援する。参加者は日米両国で各20名までとし、他国から少人数でも参加できるようにしている。提案要請(RFP)は毎年6月に公募形式で実施する。最終締め切り期限は9月とし、10月に選抜し、11月から翌年3月にかけてワークショップが開催される。

2007-2008年会議のRFPは6月29日に発表された。提案するワークショップを企画、実施する技能、知識、資源をもつ人物は、支援申込書を作成されたい。最初のワークショップは、基礎科学であればどの領域に焦点を当てたものでもよいが、USJCCRPは特に1)癌細胞における血管新生およびリンパ管新生の制御、2)細胞イメージング、診断および治療へのナノテクノロジーの応用、3)癌細胞に関するゲノム学およびプロテオミクスに関する提案をお待ちしている。その他の情報および申込書のフォームはhttp://www.cancer.gov/oia/US-JAPAN-CCRPに掲載している。

アイルランド-北アイルランド-NCIキャンサー・コンソーシアムは最近、2007年癌合同研究プロジェクトへの応募を呼びかけた。

このプロジェクトは、両国の博士研究者が共同で相互に関心をもつ研究プロジェクトに取り組めるよう支援することによって、アイルランドおよび米国の癌研究者、研究施設が強く持続的な関係を構築することを目指している。プロジェクトには3年間常勤ベースで資金が提供され、アイルランド島およびNCI内外のプログラムの癌研究者に公開される。

申込み締切日は8月17日午後5時とする。全詳細および申込みの手引きはhttp://www.allirelandnci.com/fellowships_and_training/joint_research_fellowships.shtmlに掲載されている。

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Nobara 訳
大藪 友利子(生物工学)、
島村 義樹(薬学)  監修

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