2010/02/09号◆特別リポート「プライマリ・ケアにおける大腸癌検診普及のためのステップを専門家委員会が推奨」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/02/09号◆特別リポート「プライマリ・ケアにおける大腸癌検診普及のためのステップを専門家委員会が推奨」

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2010/02/09号◆特別リポート「プライマリ・ケアにおける大腸癌検診普及のためのステップを専門家委員会が推奨」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年2月9日号(Volume 7 / Number 3)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇
プライマリ・ケアにおける大腸癌検診普及のためのステップを専門家委員会が推奨

専門家委員会は介入のターゲットを絞り、その障壁を取り除くための研究に重点を置くと発表

米国では、毎年約5万人が大腸癌(CRC)により死亡しており、肺癌に次いで第二位である。大腸癌検診により死亡率が低下することと、腺腫様ポリープという前癌性病変が検出され、切除することで大腸癌が予防できることはすでに証明されている。ガイドラインは平均的リスクのある50歳以上に定期検診を推奨しているが、先週行われた米国国立衛生研究所(NIH)先端科学会議(State-of-the-Science conference)において、独立専門家委員会は、未だに”検診は十分には行われていない”と結論した。
13人からなる専門家委員会の委員長であるジョンズホプキンス大学のDr. Donald Steinwachs氏は「大腸癌検診の受診は患者にとって不快で、時間もかかると考える人がいることはわかっていますが、この重要な検診をもっと多くの人に促す方法を模索する必要があります」と述べた。

この対象群における大腸癌検診率は、2008年終了時点で10年前と比較しおおよそ2倍、約55%に達したが、専門家委員会は会議の声明案の中で「何百万という検診対象者がいまだにどの方法による検診も受けていません」と強調した。会議に参加した研究者らの多くが、米国での受診率を80%にすべきであると考えており、専門家委員13人はこの目標を達成すべく6つの戦略を明らかにした。

会議計画委員長でありNCI癌制御・人口学部門の医療サービス・経済学部門所属の疫学者であるDr.Carrie Klabunde氏は「大腸癌検診の強みは、選択肢があることです」としている。最近の受診率増加のほとんどすべては、メディケア(※米国の公的医療保険制度で日本の高齢者医療に相当)が大腸内視鏡の費用をまかなうようになった2001年以後に大腸内視鏡検査の利用が増加したことによる。

同会議では、大腸内視鏡検査と、バーチャルな同手段であるCTコロノグラフィの支持者は両選択肢を推奨したが、現状での訓練された医師の数や受け入れ能力不足から、内視鏡あるいはCTコロノグラフィ単独でも、検診の高受診率はとうてい達成困難であるという事実がある。CTコロノグラフィはメディケアでカバーされていないうえ、大腸癌検診のガイドラインを発行する2つの大きな組織のうちの1つである予防医療作業部会(USPSTF)で現在推奨されていない。USPSTFは、大腸内視鏡検査をそれ以外の検診選択肢(便潜血検査:FOBT、S状結腸鏡検査、注腸バリウム検査など)以上には推奨していないが、アメリカ癌協会(ACS)および米国大腸癌関連学会専門委員会(U.S. Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer)のガイドラインでは、大腸全体の内腔観察可能な検診のほうが他のものよりも好ましいと述べている。

「このような推奨を支持するランダム化比較試験データは存在しません。しかし、2次検査として大腸内視鏡検査を用いることになる他の検診選択肢が、高受診率を得るうえで意義を示したエビデンスはあります」とKlabunde氏は説明した。専門家委員会は、これらの証拠のいくつかを退役軍人健康庁、カイザー・パーマネント社北カリフォルニア、英国国民保健局による会議発表により得ている。FOBTの新版となる免疫学的便潜血検査(※サイト注:日本では古くから導入されている)は、大腸癌の検出に有望であると同時に、検診前の食事制限や投薬制限を必要としないため患者負担を最小に留められる。

各検診方法は、受診者の嗜好、医療提供側の引受能力、サービスが利用可能であることやサービスの有無によって決定され実施されると考えられる。これらの問題は、専門家委員会の6つの勧告のうちの2つで言及されている。
・大腸癌検診および適切な経過観察への経済的な障壁を排除すること。
・大腸癌検診の受診率を高めるため、対象患者集団の特性および嗜好をマッチさせた個別化プログラムによって有効性を評価することを目的とした研究を実施すること。

専門家委員会は、検診に関連する最も重大な要因は、医療保険へ加入およびかかりつけの医療機関を利用できることにあるとした。また、受診率が平均以下の特定グループをターゲットにした戦略の必要性も強調している。例えば、ラテンアメリカ系は、非ラテン系白人よりも受診率が低い傾向にある。

Klabunde氏はプライマリケア医の診療業務を引き合いに出して「米国において、大半の人がどこで検診を受けるのかについて、もっと慎重に調査する必要があります」と述べた。専門家委員会の勧告のうちの2つはその部分に焦点を当てている。
・一般の医療環境における種々の大腸癌検診の有効性を比較検討する研究を実施すること。
・大腸癌の受診率向上に有効であることが証明された介入(患者への通知システム、あるいは医療提供者、教育担当者、案内担当者とのマンツーマンでのやりとり)を広範に実施すること。

今回の会議は、国立衛生研究所(NIH)の米医療調査局(Office of Medical Applications of Research)およびNCIに加え、その他のNIHの組織および米国保険社会福祉省の助成により行われた。独立専門家委員会は以下の専門家より構成される。癌サーベイランス、医療制度研究、地域密着型の調査、十分な情報を得た上での意思決定、医療の利用、医療方針、健康に関する情報提供、医療経済学、医療格差、疫学、統計学、胸部放射線科学、内科学、消化器病学、公衆衛生、末期医療ケアおよび市民の代表。

専門家委員会のために用意された大腸癌検診の使用と質の向上に関するエビデンスレポートは、オンラインで閲覧可能である。

—Addison Greenwood

米国のプライマリ・ケアに向けたキャンペーンKlabunde氏は「専門家委員会で確認された検診における多くの問題、そして米国で行われている予防医療のほとんどは、プライマリ・ケア医の日常診療の範疇です」と述べている。また、「彼らは、米国内の医師の3分の1未満しかおらず、その数は減少傾向にあり、不足するのも時間の問題です」と補足した。大腸癌検診以外でも「提供を予定している予防医療のリストが膨らむなか、プライマリ・ケア医はこのリストをこなすための十分な時間が全くとれないという状況に直面しています。検診対象となる成人に、推奨大腸癌検診の効果的かつ効率的方法を明らかにすることの重要性は、こうした理由によるものです」と同氏は説明している。

過去5年間、NCIは米国医療研究品質局と協力し、予防医療の提供を改善する可能性についての調査を助成してきた。多くの異なるプロジェクトや既報研究から、「プライマリ・ケアを提供するための新規モデル」を大腸癌検診に適用した。このモデルを解説した記事を2007年のJournal of General Internal Medicine誌に掲載しプライマリ・ケアにおける大腸癌検診の実施強化のための戦略を概説しており、これにはチームアプローチの促進、関連する情報システムの開発、患者を交えた選択、診療能力の監視、償還の増額、訓練の提供が含まれる。これらのテーマの多くは、先週開催された先端科学会議で議論された。

[※用語解説は(財)先端医療振興財団がん情報サイトにリンクしています]

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遠藤 香利 訳
鵜川 邦夫(消化器内科医/鵜川病院) 監修

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