[ 記事 ]
スーテント治療中は甲状腺に注意-使用者の半数で甲状腺に異常/米国がん協会
- 2007年2月22日
原文
スーテント治療中は甲状腺に注意
使用者の半数で甲状腺に異常、との試験結果
米国がん協会 (ACS) 2006/11/24
◆要旨
ハーバード大学医学部、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ダナ・ファーバーがん研究所の医師らによると、分子標的薬スーテント[sutent](スニチニブ[sunutinib])の投与を受けている患者は、定期的に甲状腺をモニターする必要がある。本治療薬を服薬している患者の半数以上が、治療中になんらかの甲状腺異常をきたした、との新規試験の結果が報告された。
◆このことが重要な理由
スーテントは、進行性の腎癌患者や、グリベック(イマチニブ)を服用できないかもしくはグリベックに反応を示さなくなった消化管間質腫瘍(GIST)患者の治療に承認されている。どちらの疾患でも、患者に残された治療の選択肢は多くない。スーテントは比較的新しい治療薬のため、医師らはまだその副作用を把握しきってはいない。スーテントに関連して起こる甲状腺異常は治療が可能なため、本治療薬を服薬している患者は、最終的には生活の質(QOL)が改善される。
◆すでにわかっていること
スーテントのGISTに対する初期臨床試験において、2人の患者が、甲状腺機能が低下する甲状腺機能低下症という症状を発症した。機能が低下した甲状腺が産生する甲状腺ホルモンは、極度に少ない。倦怠感、冷え性、便秘、嗄声{させい}、乾燥肌などの症状が出る。倦怠感を訴える試験参加者が多かったため、研究者らは、スーテントが甲状腺異常の原因であるのかどうか調べることを決めた。
試験の実施方法:臨床試験の一環としてスーテントによる治療を開始する直前のGIST患者における、血中の甲状腺ホルモンレベルが計測された。患者が治療を受けている間は、甲状腺ホルモンレベルの計測が継続された。試験結果は、Annals of Internal Medicine誌に発表された。
◆今回わかったこと
試験に参加した79人の患者のうち42人が、スーテント治療を始める前には正常な甲状腺機能を維持しており、分析対象に組み込まれた。平均約9ヶ月のスーテント治療の後、42人中15人(36%)が甲状腺機能の低下をきたし、26人(62%)が何らかの甲状腺異常をおこした。スーテントを長期間服薬した患者ほど、甲状腺機能の低下をきたす可能性が高かった。
甲状腺機能低下をきたした患者は、本症状の標準治療薬であるレボチロキシンの投与を受け、甲状腺レベルは正常化された。
◆結論
研究者らは、スーテントによる治療を受けている患者は、2、3ヶ月ごとに甲状腺異常のチェックを受けるべきである、と提言している。検査の結果が異常であった患者は、さらに詳しい検査を受け、甲状腺機能低下が見つかった患者はレボチロキシンによる治療を受ける必要がある。
スーテントが甲状腺機能に影響を与える機序を解明するために、さらなる試験が必要である、と研究者らは言う。しかし、甲状腺機能低下は容易に治療できるため、本副作用が、効果を示しているスーテント治療を中止する原因とはならない、と付け加えた。
Citation: “Hypothyroidism After Sunitinib Treatment for Patients Wth Gastrointestinal Stromal Tumors.” Published in the Nov. 7, 2006, Annals of Internal Medicine (Vol. 145, No. 9: 660-664). First author: Jayesh Desai, MD, Austin Medical Centre, Heidelberg, Victoria, Australia.
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(Oonishi 訳・瀬戸山修(薬学) 監修)
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