細菌と化学療法の組み合わせで癌を攻撃/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

細菌と化学療法の組み合わせで癌を攻撃/ジョンズホプキンス大学

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

細菌と化学療法の組み合わせで癌を攻撃/ジョンズホプキンス大学

原文
細菌と化学療法の組み合わせで癌を攻撃
ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター*
2006年11月23日

ヒトや動物に感染して死に至らしめることもある細菌が、腫瘍を徹底的に「貪食する」ことが確認され、癌治療に有望であることが示された。今回、ジョンズホプキンス・キンメル がんセンターで行われた2つの新規の試験が、特殊内包された抗癌剤との併用により、細菌療法で癌を根絶できる可能性が劇的に高くなったことを示した。

Science誌の11月24日号で報告されたマウスの実験で、ホプキンスセンターの研究者らは、Clostridium(クリストリジウム)novyi-NT(C.novyi-NT)という遺伝子組み換え細菌が、癌細胞集団の中心部によくみられるような酸素が欠乏した環境を特に好む傾向があること示した。遺伝子組み換え細菌自体は比較的無害だが、遺伝子組み換えされていないものは、ヒトや牛の血流に入ると致死的な毒物を産生する。

「癌細胞を殺すことは難しくありません。大変なのは、正常細胞は残したまま癌細胞を殺すことです。」と、ジョンズホプキンス・キンメル がんセンター内のLudwigセンターおよびハワード・ヒューズ医療研究所の教授であり、共同ディレクターであるバート・フォーゲルシュタイン医師は言う。

この細菌には、マウス腫瘍内の酸素が欠乏した中心部において増殖、拡散する能力があること、そして黒く変色した跡が癌細胞の破壊された合図であることをホプキンスセンターのチームが5年前に特定し、それによって細菌の癌障害作用が初めて発見された。正常な周囲の細胞は、ほとんど影響を受けなかった。しかし、この細菌では、腫瘍内の酸素が豊富な端の部分の癌細胞を障害することはできなかった。

ジョンズホプキンス・キンメル がんセンター腫瘍学部門の助教授であるShibin Zhou博士によると、これを受けて、ホプキンスセンターのチームは、この細菌の特性が薬剤の有効性を高めることを期待して、細菌攻撃に、特殊内包化された化学療法剤を加えた。

この併用療法により、ほぼ100匹のマウスの大小併せた腫瘍が一時的に排除され、それらのうち3分の2以上は、完全に治癒した。

この組み合わせにより障害される癌細胞が増加する理由としては、細菌が、腫瘍部位において化学療法剤を包んでいる脂肪の分解や分散を促進し、腫瘍は通常の場合より6倍多い量の化学療法剤に曝されるためということが考えられる。

医師らは、2種類の内包化された化学療法剤、ドキソルビシンとイリノテカンを用いて実験を繰り返し、両薬剤とも細菌との併用療法では、同様の腫瘍障害作用がみられた。

「内包された」抗癌剤は、現在リポソームという微小脂肪カプセルの形で入手可能である。リポソームは、正常組織の周囲にある皮膚の細かく張り巡らされた血管を通り抜けるには大き過ぎるが、腫瘍の血管に到達するには十分小さいため、腫瘍に自然と引き寄せられる。

C.novyi-NTとリポソーム内包化学療法剤との組み合わせは、C.novyi-NT培養物中に発見された酵素の存在により、腫瘍に対して相乗効果があるようだ。フォーゲルシュタイン研究室のIan Cheong博士はその酵素をリポソマーゼと名づけた。それは脂質膜を破壊し、薬剤の中身を放出するリポソームの外層をも分解するのかもしれない。

「“トロイの木馬”のような容器に入っているこれらの薬剤は、この治療法の有効性と安全性を高める可能性のあるC.novyi-NT細菌により、腫瘍部位で特異的に放出されます。」と本試験の筆頭著者であるCheong博士は述べた。

科学者らによると、リポソマーゼは、細菌との併用療法以外にもさまざまな標的療法において使用することができる。そのような治療法には、リポソマーゼを特定の腫瘍に親和性のある抗体に貼り付けたり、遺伝子治療のためDNAコードを加える方法などがある。多くの薬剤はリポソームで内包することが可能であるため、この方法は一般的に利用できる、と医師らは言う。

11月19日にオンラインでNature Biotechnology誌に発表された関連試験において、ホプキンスセンターのチームは、C.novyi-NTの全ゲノムを解読した。このことはZhou氏によると「リポソマーゼを同定する助けになり、細菌を使った治療法の改善に役立った。」

C.novyi-NTのみを注入する予備的な安全性試験が、少数の癌患者において実施中である。

本研究は、Virginia and D.K. Ludwig癌研究基金、連邦基金(Commonwealth Foundation)、Miracle基金(Miracle Foundation)、国立衛生研究所(NIH)により資金提供を受けた。

共著者は、ジョンズホプキンス・キンメルがんセンターのXin Huang氏、Chetan Bettegowda氏、Luis A. Diaz., Jr.氏、Kenneth W. Kinzler氏らである。

1 Cheong, I., et al. A C.novyi Protein Enhances the Release and Efficacy of Liposomal Cancer Drugs. Science online, November 24, 2006.

2 Bettegowda, C., et al. The Genome and Transcriptomes of the Anti-Tumor Agent Clostridium novyi-NT. Nature Biotechnology online, Nov 17, 2006.

******

(Oonishi 訳・大藪友利子(生物工学) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  3. 3免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要
  4. 4ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  5. 5FDAがHER2陽性早期乳がんの延長補助療法にネラチ...
  6. 6血中循環腫瘍DNAに基づくリキットバイオプシーの可能...
  7. 7リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  8. 8FDAが皮膚未分化大細胞リンパ腫にブレンツキシマブ・...
  9. 9アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  10. 10若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い

お勧め出版物

一覧

arrow_upward