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「勃起不全」治療薬が癌の自然治癒力を高める/ジョンズホプキンス・キンメルがんセンター

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「勃起不全」治療薬が癌の自然治癒力を高める/ジョンズホプキンス・キンメルがんセンター

原文
「勃起不全」治療薬が癌の自然治癒力を高める
ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター*
2006年12月5日

シルデナフィル(バイアグラの成分名)と、他の「性的不全治療薬」は、ガス状化学伝達物質を増産させて血管を拡張させて勃起を起こすが、今回、この薬が、隠れている癌細胞をあらわにするのに有望であることが示された。それによって、免疫システムがそれらを認識し、攻撃することが可能になると期待されていることをジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らは述べた。

大腸癌、乳癌腫瘍を移植されたマウスの試験では、シルデナフィルを投与したマウスは、投与しないマウスに比べて2~3倍腫瘍サイズが縮小した。免疫システムを欠落させたマウスにおいても、原則的に、腫瘍はその影響を受けないことがわかっているため、この薬が、癌に対する免疫システム細胞の反応をほう助しているのだと、研究者らは語る。

Journal of Experimental Medicine誌11月27日号の発表の中で、ホプキンスのチームは、化学伝達物質である一酸化窒素値が上昇すると、腫瘍を免疫システムから逃れさせるという細胞の特殊な作用が無効になるため、T細胞が一丸となってマウスの腫瘍に集積して癌を攻撃するのを可能にする。

14人の頭頚部癌と多発性骨髄腫患者から採取した組織サンプルを用いた実験で、それらの癌細胞を増殖させてシルデナフィルで処理すると、同様の結果がみられた。

バイアグラの商品名で知られるシルデナフィルは、数百万人ともみられる勃起不能の男性の治療に用いられる薬であり、近年では、その一酸化窒素の産生を刺激する効力は、血管や血液成分の作用と関連する疾病において専門家らの研究の対象となっている。

ジョンズホプキンスの新たな研究の狙いは、免疫システムの性質を自らの利点に代えて、免疫システムの感知を免れる癌の増殖機序に着目することであると、ジョンズホプキンス・キンメルがんセンターの助教授アイヴァン・ボレロ医師は述べた。

ボレロ氏とそのグループは、腫瘍への攻撃を開始する白血球細胞(T細胞)から、腫瘍が身を隠すために、一種の「霧」を作り出す一酸化窒素産生免疫細胞を利用することを発見した。

この一酸化窒素産生細胞(または、骨髄由来抑制細胞:MDSCs)は、通常、免疫システムが侵入物に対して‘攻撃モード’で反応した後、監視レベルに戻るよう誘導する際に一酸化窒素を利用する。

性的不全治療薬は、このプロセスを、逆に、MDSCsによって一酸化窒素の産生を阻止し、それによって、他の免疫細胞が癌を‘見つけ’て攻撃できるようにするものであると、ゴレロの研究室の研究員で、論文の筆頭著者であるパウロ・セラフィニ博士は語る。

一酸化窒素は都市に住む人々にとっては悪名高い大気汚染スモッグの成分であるが、監視と防御を担うT細胞が攻撃に働くのをそらす細胞シグナル作用とその能力において、その医学的研究は重要性を増している。

ホプキンズのチームはまた、骨髄由来抑制細胞の遺伝子発現を分析した結果、シルデナフィルが、MDSCsを介して免疫抑制を誘発する鍵となる酵素-アルギナーゼと一酸化窒素合成酵素を統制する2つの遺伝子をブロックすることも発見した。ボレロのグループは、Lアルギニンと呼ばれる栄養補助食品を代謝し、一酸化窒素と同様にMDSCsを介して免疫システムを抑えるのに寄与するアルギナーゼ酵素とおよびその産物が、シルデナフィルによって効力を失うことを発見した。

「性的不全治療薬が癌を治すわけではありません。しかし、標準化学療法や免疫療法のような治療と併用して用いることができるかもしれません。」と、ボレロ氏は言う。

来年には臨床での試験が開始予定である。

この研究はItalian Association for Cancer Researchから資金提供を受けたものである。

共著者:Kristin Meckel, Michael Kelso, Kimberly Noonan, Joseph Califano, and Wayne Koch from Johns Hopkins; and Luigi Dolcetti and Vincenzo Bronte from the Istituto Oncologico Veneto in Padua, Italy

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(野中希 訳・瀬戸山修(薬学) 監修)

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