2008/03/04号◆特別レポート「微小結節、大いなるジレンマ」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/03/04号◆特別レポート「微小結節、大いなるジレンマ」

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2008/03/04号◆特別レポート「微小結節、大いなるジレンマ」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年3月04日号(Volume 5 / Number 5)

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特別レポート

微小結節、大いなるジレンマ

図は原文参照

以下の記事は甲状腺癌に関する2部構成シリーズの第2部である。[siteurl=modules/nci_bulletin/index.php?page=article&storyid=136]第1部[/siteurl]では甲状腺癌の発症率が急激に増加していることを取り上げた。第2部では小さい甲状腺腫瘍の治療を取り扱う。

甲状腺癌で最も多い甲状腺乳頭癌(PTC)で、腫瘍サイズが小さい患者への初期治療に関する文献には「賛否の分かれる問題」あるいは「大論争中の問題」といった表現がよく用いられている。特に注目されるのは1cm以下の腫瘍に対する最適な治療法である。

主な論点は、腫瘍が存在する甲状腺の片側すなわち葉のみを取り除くべきか(葉切除)、甲状腺をすべてあるいはほとんどすべて(甲状腺全摘あるいは亜全摘)取り除くべきかという点にある。議論はそこに留まらない。さらに専門家の間では、より積極的な治療を行う患者に対して放射性ヨード内用療法による甲状腺機能廃絶(アブレーション)が必要であるか、意見が分かれている。

甲状腺癌の発症率が依然として上昇を続け、この悪性の小さい甲状腺結節がまさに上昇を後押ししていることから、この問題は重要である。ある推定によれば、米国で治療する全PTCの90%が小腫瘍で占められる日も近いと予想されている。これら小腫瘍の多くは1cm未満である。

死亡率は変わらず

実際の診療が何らかの方向性を示すとすれば、議論は甲状腺全摘あるいは亜全摘術支持が有意を占める結果となろう。実際、最近の1試験では比較して、全PTC患者の90%(20年前は約70%)がその手術を受けていることが明らかになった。

通常、治療により生存が著明に改善したり副作用が低下したりした場合に、癌治療パターンは変化する。しかし過去40年間においてPTCの死亡率は変化がなく、非常に低いままである。

治療に関する議論において、非常に明白なことがある。すなわち、前立腺癌でいうところの「要経過観察[watchful waiting]」と呼ばれる微小腫瘍の経過観察は、ほとんどの患者の感覚からすれば受け入れがたい選択肢なのである。

「癌があれば、患者は取り除くことを望む」とMiami Miller医科大学の内分泌外科部長Dr. Carmen Solorzano氏は語る。

そして、それこそが意見の食い違いの始まりなのである。

「微小腫瘍が片葉に限局する患者に対し全甲状腺を摘除する根拠はない」と素ローンケタリング記念がんセンターのDr. Ashok R. Shaha氏は語る。「患者の一生を、多かれ少なかれ損なっているのである」。

甲状腺全摘術を施行した患者は、残りの人生において甲状腺ホルモン補充療法が必要となり、さらに投与量が適切かどうか定期的に医者にかからなければならない。それが患者の人生を損なうことになるとDr. Shaha氏は語る。

しかし一部の内分泌専門医は少なくとも一定期間は、葉切除と甲状腺ホルモン治療を患者に行う。

甲状腺全摘除は、十分なカルシウムやリンの産生不能におちいる副甲状腺機能低下症や永続的な喉頭神経障害といった他の副作用も伴うとDr. Shaha氏は語る。

よい内分泌外科医の手によればこれらのリスクは最小限に留まると、ニューヨーク大学医療センターのDr. Keith Heller氏は反論する。

葉切除後に多発癌や血管侵襲、甲状腺外への病変進展が、最終病理診断によって明らかになることもあるとDr. Heller氏は語る。甲状腺全摘術ではなく葉切除を行った場合には2度目の手術を勧めたほうがよいかもしれないと彼は語る。低リスクの患者では甲状腺全摘術による生存アドバンテージがないことをDr. Heller氏は知っているが、この状況下では1cm以下の腫瘍に対してより積極的な治療を行うことが望ましいと考えていると彼は語る。このように考えているのは彼一人ではない。

「これら非常に小さい癌は、その多くが良好な転帰を示すが、すべてがそうである訳ではないことが問題なのである」と、より積極的な治療を長年提唱しているオハイオ州大学医学講座担当のDr. Ernest Mazzaferri氏は語る。

単一の小さい悪性結節の場合のように、いつも簡単である訳ではないと彼は続ける。腫瘍は甲状腺の被膜外に進展する可能性がある。ひょっとすると甲状腺癌の家族歴や放射線曝露があるかもしれない。すべて限られた可能性ではあるものの、腫瘍が進行性となる可能性が示唆される。

「この患者たちが常によくなるとは限らない」とDr. Mazzaferri氏は語る。「肺や脳転移によって亡くなることもある。わずかではあるが、1パーセントは死亡する。これを見過ごしたい医療者はいない」。

放射性ヨード内用治療を行うべきか行わないべきか

小腫瘍に対して甲状腺全摘術や亜全摘術を行った患者の多くは放射性ヨード(RAI)内用治療も受けている。長年用いられているこの治療は標的治療の先駆けであり、甲状腺全摘術後通常1~2ヵ月後に行われる。甲状腺細胞にはヨウ素が集中するため、放射性ヨウ素は外科医のメスを逃れた甲状腺癌細胞に集中し、破壊する。

しかし小腫瘍を有する患者に対するRAI使用は、批判を免れない。

メイヨー・クリニックの内分泌専門医を代表するDr. Ian Hay氏らが行った複数の後ろ向き研究ではRAI施行と非施行の低リスク患者の再発率や癌死亡率には有意差がないことが明らかにされた。

「低リスク患者に対するRAIは不必要な追加治療にほかならない」とDr. Shaha氏は考える。

しかしDr. Mazzaferri氏は、一部の内分泌専門医が低リスクと考える患者に対してもRAIを支持すると語ることをはばからない。

「11の異なる病期分類システムがあり、それ自体問題の一端である。われわれは再発疾患を有する患者や、リスクが低いためこれ以上は治療を行わないとしたために困難な状況にある患者の多くを見過ごしているのである」と彼は語る。

ほとんどの場合RAIは現在では一回の治療ですみ、治療法の改善によって使用する放射線量はより少なくなっている。

甲状腺癌患者の多くは診断後数十年生存するため、治療レジメンを比較する前向き臨床試験が実施される可能性は低い。極めて費用がかかるであろうし、比較するには数千人の患者に対し数十年を要する。

しかし分子マーカーによって、より積極的な治療を受けるべきである小腫瘍患者を同定しうるという楽観的な期待もある。

内分泌を専門とするものの多くは、ある特定マーカー、BRAF遺伝子変異に希望をつないでいる。この変異と治療不成功や再発といった転帰との間に関連があることが複数の試験によって示されている。

この変異に関する研究はいまだ発展途上にあるが、この道をたどれば問題に決着をつけうる発見があるだろう」とDr. Mazzaferri氏は語る。

— Carmen Phillips

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Okura 訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修
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