2008/03/04号◆特集記事「HER2乳癌に対する最善の治療を確立するALTTO試験」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/03/04号◆特集記事「HER2乳癌に対する最善の治療を確立するALTTO試験」

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2008/03/04号◆特集記事「HER2乳癌に対する最善の治療を確立するALTTO試験」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年3月04日号(Volume 5 / Number 5)

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特集記事

HER2乳癌に対する最善の治療を確立するALTTO試験

HER2タンパク陽性の早期乳癌に対して最善の治療法を確定する重要な臨床試験の登録が現在北米で行われていることが、先週ニューヨーク市の米国国立癌研究所(NCI)の サイエンスライターセミナーにおいてメイヨークリニックおよびNCIの研究者らから発表された。ALTTO (Adjuvant Lapatinib and/or Trastuzumab Treatment Optimisation)試験として知られている国際的な本臨床試験によって、6大陸50ヵ国でHER2陽性乳癌患者8,000例が登録され、この進行性の乳癌患者に対する標準治療が決定されるとみられる。

乳癌の約20~25%では、ヒト上皮増殖因子受容体2型としても知られているHER2タンパクが過剰に発現している。HER2は、増殖シグナルを外部の増殖因子から細胞核へ伝達することに関与している。いくつかのタイプの癌においては、この増殖シグナル経路が、腫瘍細胞増殖の促進、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の抑制、運動性の向上、および腫瘍血管新生の促進をもたらす。HER2陽性乳癌は、HER2陰性の乳癌よりも、進行が早く、標準的な治療法に対する反応が少なく、再発する可能性が高くなる傾向にある。

HER2陽性乳癌患者では、このタンパク質を標的とする治療が有効である可能性があり、2つの標的薬、トラスツズマブ(ハーセプチン)および ラパチニブ〔lapatinib〕(タイカーブ〔Tykerb〕)、がHER2陽性腫瘍患者の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。これらの両薬剤はHER2を標的としているが、その方法は異なっている。転移性乳癌に対する一次治療、もしくは早期乳癌に対する術後補助化学療法として承認されているトラスツズマブは、HER2陽性癌細胞に付着するモノクローナル抗体であり、そのタンパク質が増殖シグナルを受け取るのを阻害する。また患者の免疫システムがこの腫瘍に対する反応を開始する上で役立つこともある。ラパチニブは、小分子阻害剤と呼ばれるクラスの薬剤に属しており、分子が小さいので癌細胞を透過し内部からHER2シグナル経路を遮断することができる。現在、ラパチニブは転移性HER2陽性乳癌の治療に対してのみ承認されている。今回の試験は、早期乳癌に対する術後補助化学療法としてラパチニブを用いる初めての主要な臨床試験となる。

早期のHER2陽性乳癌の治療として2006年にトラスツズマブが承認されたことでこの疾患患者の治療成績は大きく改善されており、研究者らは今回のALTTO試験がHER2を標的とする補助療法の有用性をさらに高めることを期待している。今回の臨床試験では、腫瘍摘出手術を受けた患者が、無作為に、ラパチニブもしくはトラスツズマブの単独投与、トラスツズマブ投与後のラパチニブ投与、あるいは両剤の併用投与に割り付けられる。

「今回の臨床試験で明らかにしたい主な項目は、無病生存率に関してラパチニブはトラスツズマブより有効であるか、もしくは両剤は同等であるか、あるいは両剤の併用投与は各々の単剤投与より有効となり得るか、ということです」と、フロリダ州ジャクソンビルのメイヨークリニックの医師で、今回の臨床試験の北米地区コーディネーターであるDr. Edith Perez氏は言う。「トラスツズマブが素晴らしい薬剤であることは分かっていますが、まだこのタイプの癌を患っている患者がすべて治癒しているわけではないのです。今回の臨床試験は、より多くの乳癌患者を治癒に導く重要な一歩なのです。」

試験の対象となっている標的療法に加えて、すべての患者は、無作為化の前に、アントラサイクリンをベースとする化学療法を少なくとも4サイクル完了していなければならない;タキサンによる化学療法が適応される患者には、割り付けられた標的療法と共にパクリタキセル(タキソール)による治療が施されることになる。

「アジュバント化学療法は、HER2陽性乳癌の治療にとって非常に重要であり、今回の試験では必須となる部分です」と、Dr. Perez氏は語る。

今回のALTTO試験は初めて実施された国際規模の試験であり、世界各地を網羅する乳癌に関する2つの大規模学術研究ネットワーク―米国のTBCI(The Breast Cancer Intergroup of North America)臨床試験協力団体およびベルギーのブリュッセルのBIG(Breast International Group)臨床試験協力団体―によって、患者が治療を受ける場所にかかわらず、すべての治療およびデータ収集が標準化されるように試験が共同で作成されている。

「このような国際共同研究モデルを将来構築することができるようになることを願っています」と、NCI癌治療評価プログラムの臨床試験研究支部の主任責任医師であるDr. Jo Anne Zujewski氏は言う。

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豊 訳
島村義樹(薬学)監修

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