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NIHから助成を受けた研究者らが中皮腫に遺伝的関連を発見:NCIプレスリリース

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NIHから助成を受けた研究者らが中皮腫に遺伝的関連を発見:NCIプレスリリース

NCIプレスリリース2011年8月26日

BAP1という遺伝子変異を保有する人は、2種類の癌(中皮腫・眼メラノーマ)を発症しやすくなることが、研究者らによって明らかにされた。さらに、この遺伝子保有者が、アスベストやそれに類似した鉱物線維に曝露すると、中皮腫(胸膜や腹膜の高悪性度の癌)を発症するリスクが、顕著に増加すると考えられる。

Nature Genetics誌2011年8月28日電子版に掲載された今回の研究では、BAP1遺伝子変異に関連のある中皮腫とそれ以外の癌の発症率が高い米国の2家族について報告している。本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立癌研究所(NCI)から研究助成を受けて実施され、ハワイ大学がんセンター(ホノルル)と、フォックス・チェイス(Fox Chase)がんセンター(フィラデルフィア)の研究者らが主導した。

中皮腫は、一般にアスベストやエリオナイトへの曝露に関連がある。アスベストに類似した天然鉱物繊維エリオナイトは、造岩や火山灰の中に見られ、鉱床は12以上の州に存在する。

エリオナイトまたはアスベストに曝露した人のごく一部が、実際に中皮腫を発症する。中皮腫は死亡率の最も高いタイプの癌の1つで、毎年米国で約3,000人が死亡し、診断された人の半数が1年以内に死亡している。また、ヨーロッパと中国を含む世界各地における中皮腫の新規症例の発現率はここ10 年で着実に増加している。

ハワイ大学がんセンター責任者で研究共著者のミシェル・カルボーネ(Michele Carbone)医師は、「この発見は、BAP1遺伝子の役割のほか、高リスク患者の変異をスクリーニングする際の潜在的有用性について理解する第一段階である」と述べた。「中皮腫を発症するリスクが最も高い人、特に世界各地で危険な量のアスベストやエリオナイトに曝露した人を今回の発見によって識別しやすくなった」。

主任研究者の1人でフォックス・チェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)ヒト遺伝学部長(Carol&Kenneth E.Weg chair)のジョーゼフ・テスタ(Joseph R.Testa)博士は、「個人の遺伝子構造が中皮腫への感受性に大きく影響を及ぼすことを証明する初めての研究である。危険な量のアスベストまたはエリオナイトに曝露した人や、強い中皮腫素因の家族歴を有する人、もしくはブドウ膜黒色腫という稀な眼の腫瘍と診断されたことのある人には、今回の新たな発見が有効となる可能性がある」と補足した。

BAP1遺伝子変異を保有する人は、乳癌、卵巣癌、膵癌、腎臓癌も発症することが本研究で明らかにされた。このことは遺伝子変異が、複数種類の癌に関与している可能性のあることを示唆している。乳癌または卵巣癌の遺伝的リスクのある女性で、これらの癌に関連のあることで知られるBRCA1またはBRCA2遺伝子変異を保有する人は約10%にすぎない。したがって、乳癌と卵巣癌の一部の遺伝的リスクが、BAP1遺伝子変異に由来するものであると考えられる。テスタ氏は「またBAP1に加え、中皮腫のリスク上昇との関連性のある他の遺伝子も見つかりそうである」と述べた。

同研究者らは、BAP1遺伝子が位置するDNAの他の伸張鎖内やその近傍に遺伝子変化のあることに気づき、強い中皮腫素因の家族歴を有する人ではBAP1遺伝子変異が中皮腫の発症原因になるのではないかという疑いをまず抱いた。中皮腫の著しく高い発症率を有する2家族について詳細に検討したところ、検体を提供し、かつ中皮腫または眼メラノーマを発症していた全員がBAP1遺伝子変異も保有していたことが確認された。さらなる研究で、中皮腫を発症したが家族歴のない26人における遺伝子の配列決定を行った。この患者グループの約25%の腫瘍は、BAP1遺伝子変異を保有しており、うち2例の変異は遺伝性であった。遺伝性変異を有する2人の患者は、眼メラノーマを過去に発症していた。

NCIのドナルド・ブレーア博士は「特にブドウ膜黒色腫と中皮腫を特徴とする新たな癌症候群にBAP1が関与しているという発見は、ヒト腫瘍の詳細な遺伝子解析が決定的に重要であること示す新たな一例となる」と語った。「こうした解析が自然発現する同一腫瘍に関与する遺伝子の発見につながる。これらの腫瘍の根底にある生物学的メカニズムの理解を深めるうえで、これは重要な進歩である」。

NIH(国立衛生研究所)の一部門である国立環境衛生科学研究所は、いくつかの重要な研究分野の公衆衛生問題に取り組み続けており、その中には一般の人、特に小児がどのようにアスベストに曝露するのかを理解することが含まれている。身体特性および個人の感受性の観点から、何が繊維を有害にするのかについての知識を深めるための試みも行われている。

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遠藤 香利 訳

林 正樹(血液・腫瘍科)監修
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原文

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