2008/03/18号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/03/18号◆癌研究ハイライト

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2008/03/18号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年3月18日号(Volume 5 / Number 6)
小児癌特別号

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

非ポリープ型大腸腫瘍は癌の発見を遅らせる

多くの結腸直腸癌は、大腸や直腸の粘膜から隆起した腫瘍である腺腫性ポリープから生じると考えられている。Journal of the American Medical Association誌3月5日号に掲載されたカリフォルニア州パロアルトの退役軍人(VA)医療システムでの研究は、平坦もしくは周囲の膜より窪んでいる異常な非ポリープ型結腸直腸新生物(NP-CRNs)にも前癌状態あるいは癌細胞が含まれているという研究が進んでいることを加えた。これまでの研究で日本でNP-CRNsの存在は確定していた。しかし日本以外では、その患者数や重要性は未だ明らかになってはいない。

VA研究では、日本のがんセンターとの特別な交換プログラムで訓練を受けた消化器専門医と病理医が、パロアルト退役軍人病院でスクリーニング、経過観察(結腸直腸癌のハイリスク者)、あるいは結腸直腸新生物の症状があるために大腸内視鏡検査を受けた1,819人を調査した。患者は必要に応じて、生検、ポリープやNP-CRNsの切除、あるいは手術を受けた。

研究者らは、検査をした人の9.35%にあたる170人からNP-CRNsを見つけた。これらの病変は大腸ポリープほど普通に見受けられるものではないが、これらには前癌状態や癌細胞を含んでいる可能性がより高かった。それらの確認された新生物に占める割合は15%程度であったが、表在癌の54%を占めていた。「非ポリープの形態は、上皮内あるいは粘膜下層浸潤癌の発見に強く関係していた」と著者らは述べた。

大腸内視鏡検査の際のNP-CPNsの見逃しは、検査間隔での結腸直腸癌の発現、つまり、どんな前癌状態のポリープも無いと思われる患者で、定期的にスクリーニングとして行われる大腸内視鏡検査の間に発生する癌の説明の助けとなるであろう、とオレゴン健康科学大学のDr. David Lieberman氏は付随論文で説明している。

NP-CRNsの存在は、アメリカにおける結腸直腸癌のスクリーニングに重要な意味を持つであろうとDr. Lieberman氏は続けた。「NP-CRNsが重大な病変である率が高いというこの結果は、効果的なスクリーニングプログラムがこれらの病変を隠し持っている患者を正確に識別する必要があることを示唆している。」

タモキシフェン治療終了後に遅れて開始しても、レトロゾール治療は乳癌再発を減らす

5年前に非盲検化となった第3相臨床試験のデータ解析は、乳癌患者の中には、術後補助療法としてタモキシフェンを5年間服用した後にアロマターゼ阻害剤であるレトロゾール[letrozole](フェマーラ[Femara])を服用することは、たとえタモキシフェン終了後数年が経過してからからであっても生存に恩恵をもたらすことを示している。

カナダ国立癌研究所臨床試験グループによって実施されたMA.17として知られているこの試験は、中間解析で5年間のタモキシフェン服用終了後3ヶ月以内にレトロゾールを開始したところ、プラセボ群と比較して乳癌の再発リスクが低下したことを立証した後、2003年に非盲検化された。MA.17試験のプラセボ群参加者は、その後、レトロゾールによる5年間の補助療法を受ける機会を与えられた。MA.17試験の参加者は、早期乳癌でエストロゲン受容体陽性の閉経後女性であった。

Journal of Clinical Oncology(JCO)誌3月10日オンライン版に掲載されたMA.17試験のこの新しい解析は、プラセボ群で試験が非盲検化となった後にレトロゾールの服用を始めた女性1,579人と服用しない事を選択した804人を比較したものであった。この解析によって、レトロゾールは無病生存率を63%、無遠隔転移生存率を61%改善させたことが判明した。タモキシフェン終了後、レトロゾール開始までの期間は1年から7年で、その中央値は2.8年であった。

この患者集団に対する補助療法として最適なアプローチは何かという問題は長引くであろうと、この研究の主執筆者であるハーバード医科大学のDr. Paul Goss氏らは記した。なぜなら、5年間の術後補助療法であるタモキシフェン治療終了後でさえ、遅い再発や乳癌による死亡リスクがかなりあることが続いているからである。

「この治療はランダムに割り当てられたものではなく、患者自身が選んだためにこの結果の解釈は難しいが」、レトロゾールを服用した患者の疾病特性は、服用をしなかった患者より再発リスクが高いものであり、優れた効果はレトロゾールによるものである可能性を示していた。

レトロゾール服用群は、プラセボ群と比較して骨折(5.2% 対3.1%)や骨粗しょう症(5.2%対1.6%)のリスク増加にも関係していた。JCO誌の関連する付随論文で、ダナファーバー癌研究所のDr. Nancy U. Lin氏とDr. Eric P. Winer氏は、調査結果はこれらの共存する影響を過小に伝えている可能性があると記している。アロマターゼ阻害剤による治療を受け、「人生を変えるほどの関節痛や他の副作用を経験し、再発リスクと生活の質の困難な比較をすることになった」患者集団もいる、と彼らは書き記した。

エベロリムスが進行腎癌の無病生存期間を延長

進行腎癌の患者に薬剤エベロリムス[everolimus]をテストする400人が参加した国際的な第3相臨床試験は、主要評価項目を満たした後に中止されたと、この薬剤のメーカーであるノバルティス社は2月28日に発表した。

この試験の独立データモニタリング委員会は、中間解析でエベロリムス服用群の無病生存期間が有意に改善されたことが示されたため、この試験を中止し、プラセボ群の患者にエベロリムスを提供すべきであると勧告した。

エベロリムスはRAD001としても知られており、腫瘍細胞の分裂と血管新生を制御するタンパク質のmTORを阻害する。

この試験は、ソラフェニブ(ネクサバール)やスニチニブ(スーテント)などの進行腎癌にたいして既に承認されている薬剤による治療後も病状が悪化・進行した患者に行われた。試験の参加者には、ベバシズマブ(アバスチン)やインターフェロンによる前治療を受けていた患者も含んでいる。

RECORD-1と呼ばれているこの試験の完全な中間結果は、5月にシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会の年次総会で発表される予定であると、ノバルティス社は説明した。

乳癌の転移をコントロールするタンパク質

1種類のタンパク質が、大量の遺伝子の働きを変化させ、乳癌細胞が他の部位へ転移する要因である可能性がある。そのタンパク質SATB1は、転移リスクのある女性の特定に利用でき、治療の標的になるかもしれない、とローレンス・バークレー国立研究所のDr. Terumi Kohwi-Shigematsu氏らはNature誌3月13日号で報告している。

彼らはこのタンパク質を「ゲノムオーガナイザー」と表現しており、それは細胞核内でのDNAの詰め込みを変化させることにより、異なる染色体領域の遺伝子活性を調整する。細胞が他の細胞への侵入などの新たな作用を得るには、遺伝子活性全体の変化を誘発する必要があるとみられる。

乳癌細胞内では、SATB1の活性が転移を引き起こすのに必要で、かつ十分な活性があるとみられ、悪性度の高い乳癌細胞株でこのタンパク質を阻害すると、1000以上の遺伝子の活性を変化させ、細胞が腫瘍になったり転移したりするのを阻害した。逆に言えば、悪性度の低い細胞株でこのタンパク質が発現すれば腫瘍の増殖や転移を促すということになる。

乳癌細胞内のSATB1の活性によって、転移リスクのある初期ステージの女性を特定できる可能性があると研究者らは言う。主要な転移の予後指標は、リンパ節転移であるが、その他のマーカーも必要である。

「いったんこのタンパク質が乳癌細胞内に発現していれば、転移の傾向が非常に高くなります。また、リンパ節転移状態とは別に、SATB1の発現に基づいて予後不良を予測できるかもしれません。」とDr. Kohwi-Shigematsu氏は述べた。SATB1の活性は大腸および肺腫瘍でもみられ、研究者らはこのタンパク質の活性化を調べている。

治療に向けての段階で、研究者らはSATB1阻害剤を乳癌細胞に直接送達する方法を研究しており、このことは特定の免疫細胞を造るというこのタンパク質の重要な役割を妨げないために必要である。

メチル化マーカーが肺癌再発を示唆

1期の非小細胞肺癌(NSCLC)患者において、特定の遺伝子1対をスイッチオン・オフする(またはメチル化する)ことによって、術後の再発リスクが増加するようであることが報告された。実際、これらの遺伝子2つを腫瘍および縦隔リンパ節の組織サンプルでメチル化する(スイッチオフ、または不活性化)と、再発リスクが25倍も増加した。

New England Journal of Medicine誌3月13日号で発表された小規模で、単一施設によるネステッドケースコントロール研究で、ジョンズホプキンズ大学シドニーキンメル総合がんセンター准教授Dr. Malcolm Brock氏らは、1期のNSCLCで手術を受けた患者の腫瘍およびリンパ節サンプルの7つの遺伝子のメチル化状態を分析した。これらの遺伝子はNSCLCの再発との相関が以前の研究で示唆されている。

1期のNSCLCで手術を受けた患者の40%もが再発で亡くなり、約80%が40カ月以内に再発を経験する。

40カ月以内に再発した51人の患者(症例群)のサンプルと再発しなかった116人の患者(対照群)のサンプルとを比較した。研究結果は症例群11、対照群9の少ない症例で検証された。

腫瘍とリンパ節サンプルの両方またはいずれか一方において、7遺伝子のうち4つ(p16, CDH13, RASSF1A, APC)のメチル化状態は、さまざまなレベルの高再発リスクと相関した。最も致命的な遺伝子のメチル化の組み合わせはp16とCDH13であった。オリジナルコホートでの5年間無再発率は、いずれの遺伝子にもメチル化がみられなかった患者では63.1%であったのに対し、腫瘍および縦隔リンパ節(胸の中、両肺の間)で、メチル化により両遺伝子が抑制されている患者では14.3%であった。

「私たちの研究が裏付けられれば、再発症例の多くでみられるこうしたDNAのエビデンスにより、そのような癌を初期ではなく進行期として再分類することが賢明であろう」とDr. Brock氏は述べた。

高齢のメディケイド加入患者は大腸癌の化学療法を受けない傾向にある

ミシガン腫瘍登録(Michigan Tumor Registry)およびメディケア・メディケイド・サービスセンターのデータを用いた研究で、同州のメディケイド(低所得者と身障者を対象とする公的医療扶助制度)を受給する高齢患者はメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)に加入している患者に比べ、結腸直腸癌の化学療法を開始または完了しない傾向にあることが示された。この結果はArchives of Internal Medicine誌3月10日号で発表された。メディケイド受給患者の結腸直腸癌生存率はより低いことが以前の研究で示されていたが、彼らが他の保険形態の患者に比べて治療を受けていないかどうかはわかっていなかった。

調査員は1997年1月から2000年12月までに結腸直腸癌と診断されたメディケイド、メディケアまたはその両方の受給者である65歳以上の4,765名の患者のデータを集めた。化学療法の開始と完了に関するデータに加え、患者が癌専門医の診断を受け、その後入院したか、また、合併症を経験したかどうかや年齢、人種、性別、世帯収入などの人口統計学的変数を比較した。また、患者が大都市圏、都市部、農村部のいずれに住んでいるかも調査した。

メディケイド受給患者にはアフリカ系アメリカ人または他の少数民族や女性が多く、低所得者地域に住んでいる傾向にあった。全患者でみても、メディケイドを受給している患者は、化学療法を開始または完了していないことが多く、腫瘍内科医による診断を受けていない傾向にあった。また、術後化学療法のベネフィットが得られると研究で示されていても、高齢の患者は概して化学療法を開始しないことが多かった。

「メディケイドと、化学療法の開始と完了に関連性があるとわかったことが本研究の主要な成果です。これらの大規模な患者群がばらばらな治療を受けている限りは、わが国全体として癌死亡率の低下という目標を到達するのは困難でしょう」と著者らは結論した。

その他のニュース

国立アレルギー・感染症研究所依託の研究者らは、セツキシマブ投与を受けた一部の患者において免疫グロブリンE抗体をもともと有することが重篤有害事象の発症の要因となることを報告した。セツキシマブは主に頭頸部癌において用いられる免疫ベースの治療薬である。New England Journal of Medicine誌3月15日号で発表された。

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Nogawa、吉田加奈子 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)、小宮武文(NCI研究員)監修

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